シネマ掘り出し市

Vol.66『パッション・プレイ』 字幕翻訳:稲垣彩さん

M・ロークが翼の生えたエンジェルと愛の逃避行!ハードボイルドな荒野に必殺猫パンチ炸裂……か?

【ストーリー】マフィアに追われ、命からがら荒野をさまようならず者のネイトは、偶然訪れたサーカス小屋で背中に羽の生えた美女、リリーに出会う。ネイトはリリーを連れ出し、やがて二人は惹かれあうようになるが、ネイトに恨みを持つマフィアのボス、ハッピーや、リリーを取り戻そうとするサーカス団長サムの追撃の手がせまる。

■監督:ミッチ・グレイザー
■出演:ミッキー・ローク、ミーガン・フォックス、ビル・マーレイ ほか
2012年4月20日リリース開始(東宝)

大型連休、みなさんいかがお過ごしでしたか? 今月も大ざっぱなO型連載、シネマ掘り出し市を読んで連休ボケのアタマに拍車をかけましょう!

さて、来たる5月22日にオープンする東京の新名所といえば? えっ、「ス」なんて付きませんよ? そう、シネ掘りが極秘裏に開発を進めていた地下施設「東京フカイツリー」に決まってるじゃないですか! というわけで今回はこのフカイツリーの全貌を読者の皆さんだけにいち早く紹介しちゃいます。

シカクいアタマをユルくする? シネ掘り模擬試験

どうですか、行きたくてたまらなくなってきたでしょ? ……えっ、どうせ釣りだろって? 当たり前じゃん、ツリーだけに!!

と、ひととおり倒錯プレイを楽しんだところで、今回紹介する映画『パッション・プレイ』は、なにげに豪華なキャスティングですよ。なんてったって主演はあのミッキー・ローク。かつてナインハーフ食べ物ごっこや猫パンチで一世を風靡し、その後第一線を退くも『レスラー』で華麗に(?)復活を遂げた彼が、ハードボイルドな男の美学を見せてくれます!

鳥にトランスフォームした絶世の美女 荒野を舞台に大トリ物の幕が上がる!

とある荒野で窮地に立たされている一人の男、ネイト(ミッキー・ローク)。かつてレコードを出すほどの名トランぺッターで鳴らし(二重の意味で)、ブイブイ言わせて(二重の意味で)いた彼ですが、マフィアのボスの女房に手を出したため、手下によって今まさに銃殺されようとしていました。しかし運よく九死に一生を得た彼は、荒野をあてどなくさまよい歩き、やがて「不思議の世界」というテント小屋にたどり着きます(スーパーひとしくんとは関係ありません)

そこは火を呑む人や剣を呑む人などが「どーんどーんどーん、ベタベッタ!」みたいな芸を披露する、いわゆる見世物小屋でしたが、中でもネイトの目を釘づけにしたのは鳥女のリリー(ミーガン・フォックス)。鳥女といっても、鳥居みゆきでもなければ鳥ンドル玲奈でもなく、正真正銘の大きな羽がぶゎさーっと背中に生えているのです。いくら『トランスフォーマー』に出たからってこんな姿にトランスフォームしてしまうとは! これには紅白の小林幸子の豪華衣装もかないません。

幼いころから小屋の団長サムに育てられ鬱屈していたリリーは、サムに脅されていたネイトを救い出すと車で逃走、モーテルに身を隠します。まだ一度も海を見たことがないという、さかなクンが聞いたらギョギョッと驚きそうな境遇のリリーに同情するネイト。次の日、リリーは普通の人間になろうとモーテルを抜け出し、病院で羽を取ってもらおうとしますが、ネイトに「君は特別なんだ」と説得され、思いとどまります(たぶんレアケースなので、たとえ高須クリニックでも切除は無理だったでしょう)。しかしネイトには何やら思惑があるようで…?


引き裂かれた二人、切なさで胸が…ん〜っ、ん〜っ!大切なのは愛・ア・愛、エビバディパッション!

その後ネイトは自分を狙うマフィアのボス、ハッピー(ビル・マーレイ)と交渉するために落ち合います。ハッピーとはなんともマフィアらしくない名前ですが、彼の本名はマイケルで、無表情だった少年時代に明るくなってもらおうと父親が「ハッピー」と呼んだのが由来です(勢い余って「ハッピハッピー。」に改名しなくて正解でした)。ネイトは自分の命を守ろうと、「鳥女でビジネスをやるからその分け前をあげる」とハッピーに提案します(鬼畜!)。鳥女の存在をにわかには信じられないハッピーでしたが、荒野のただなかにあるオペラハウス(こんな所に建てて集客できるのか?)に呼ばれてリリーの姿を見ると、がぜん興味を示します。

その後、猫パンチと鳥女の種別を超えて愛し合うようになるネイトとリリー。ここでロークの必殺技、「ナインハーフ氷塗り」が出るかと思いきや、背中の羽が邪魔で仰向けにできなかったからか、あえなく断念したようです。ところが翌朝モーテルで目覚めるとそこにはハッピーとその手下が! そう、ハッピーは鳥女の魅力にトリ憑かれ、彼女を自分だけのものにしようと奪いに来たのです。さすがはビル・マーレイ。仲間と3人でゴースト退治をしていた昔と変わらず、異形のクリーチャーの追っかけには余念がありません。しかもリリーの前でハッピーに自分の鳥女ビジネス計画をバラされてしまうネイト。これでリリーも愛想を尽かしてしまいました。

あわれ独りになったネイトは何をやってもうまくいかず、愛用のトランペットを売り、昔の仲間から一晩100ドルの仕事を紹介されるもそれを断って20ドル貸してくれとのたまうダメっぷりを発揮し、あげくにはバーで会ったドラゴンタトゥーならぬ鳥タトゥーの女にそそのかされてクスリに手を出す始末。もはやまっ白に燃え尽きたか……と思われたそのとき、ハッピーが会員制クラブで鳥女を披露すると聞きつけたネイトは彼女を取り戻しに向かうのでした。はたしてミッキー・ロークの労苦は報われるのか? そしてリリーは悲しみのない自由な空へ翼はためかせることができるのか?


ちょっと情けないけどロマンを求めることは忘れない、そんなどこか憎めない男を演じるミッキー・ロークに加え、脇を固める俳優陣もいい味出している本作。そこに撮影監督クリストファー・ドイルによる映像美が加わり、ハードボイルドとファンタジックな世界が同居した不思議な魅力のドラマになっています。

みなさんもハードボイルドなシネ掘りをお手本に、ロマンを求めてまっしぐらに生きましょう! ……えっ、シネ掘りは人のネタをパクってばかりのチキンだろって? ふっふっふ、そう言われると思って、今回の大トリはとっておきのをご用意しました。さあ、しねまるよ、シネ掘り級DVDの売り子になって、ハードにボイルされたチキンの生きざまを見せておやりなさい!


しねまるの「今日の格言」毒ネタ 昭和ネタ 交互に見て

字幕翻訳を手がけた稲垣彩さんに聞きました
── 本作を翻訳した感想をお聞かせください。

クリストファー・ドイル撮影の映像が美しい、哀愁のハードボイルド・ファンタジーです。
ファンタジックでノスタルジックな世界観に合う、雰囲気のある翻訳を心がけました。
『レスラー』に続きミッキー・ロークがダメ中年を演じていますが、本作のテーマは純愛。若い美女に愛されてもウソっぽくならないよう(笑)、不器用ながら愛情深いネイトのどこか母性本能をくすぐる魅力が、字幕にも滲み出るよう苦心しました。
見所はビッグネーム3名が、ミュージシャン、ギャングのボス、鳥女という特徴的な役を好演していること。それぞれに寂しさを抱えた、味のある登場人物たちです。
ラストはある意味衝撃的ですが、じんわりと心にしみる、男性も女性も楽しめる作品だと思います!

◆PROFILE:総合翻訳科カレッジコースを修了後、映像日本語版制作会社などの勤務を経てフリーランスに。映画『ROCKER 40歳のロック☆デビュー』『奇術師フーディーニ〜妖しき幻想〜』『ザ・ターゲット』(字幕)『デルゴ』『私がクマにキレた理由』(吹替)、TVアニメ『アベンジャーズ 地球最強のヒーロー』(吹替)などの翻訳を手がける。




というわけで今月も色トリドリのネタをトリ入れて怪鳥、もとい、快調に飛ばしてるつもりが鳴かず飛ばずのシネ掘り。しかーし! 次回もあわよくば超有名俳優が主役をつとめる作品を掘り出せるかもしれませんよ。まずはトリ急ぎ予告まで!

PAGE TOP