代案をその場で考え、即戦力を身につける

この授業ではシットコム作品を使って毎回4〜5人が当番となり、当日全員に訳文が配布される。そして当番以外の受講生が声優となって配布された訳文を読みあげる。自分以外の人に読んでもらうことで自分の訳文を客観的に見ることができ、「このセリフは流れが悪い」「笑わせどころなのに面白くない…」などといった点に改めて気づかされる。そして当番の受講生はその場で代案を考えなくてはならない。

実際の現場でも、訳文の変更を求められた時に即座に代案を出さなければいけない場面は多々ある。そんな時にスムーズに対応できる即戦力を身につけられるように配慮された授業となっている。受講生が疑問点を出し切った後は、講師が一つひとつの訳に対して丁寧に指導を行う。キャラクターに合わない訳や、笑いのポイントを押さえていない訳などを指摘し、受講生と意見を出し合う。講師が一方的に指導するスタイルではなく、受講生参加型の授業が大きな特徴と言える。 また、プロの声優を招いたアフレコ演習をカリキュラムに取り入れており、総仕上げとして現場で通用する台本づくりを体得できる。

翻訳者に求められるのは柔軟な対応

吹替では耳で聞いて一度で理解できるか、というのが最重要ポイントである。そのため、日本語としていかに自然な表現に仕上げられるかがカギとなっている。今回の授業の中で、父と息子がやり取りするシーンがあった。原語は”Coffee, dad?” “Why not?” となっており、ある受講生は「コーヒー飲む?」「頼むよ」と翻訳。しかし講師は「飲む?」という質問に対して自然な会話の中では「頼む」とは答えないと指摘。

この場合は「もらうよ」などが適した訳となる。視聴者に違和感を抱かせ、一瞬でも疑問を持たせるような訳はNG。そして何よりも大切なのは、視聴者がその作品を楽しめるかどうかである。原文を忠実に翻訳した結果、日本語として不自然な表現になってしまえば、たとえ誤訳でなくても作品が台無しになってしまう。原文理解力だけでなく、作品の持つ空気を壊さないよう柔軟に対応する姿勢もプロに求められているのだと感じた。

【講師コメント】徹底的に視聴者を意識して翻訳を

コメディ作品を翻訳する場合、原作の笑いのポイントをしっかりと押さえる必要があるので、他ジャンルの作品に比べて求められるスキルは高くなります。そのため、コメディ作品に慣れておけば怖いものなし!と言っても過言ではありません。英語のジョークや歌の翻訳では、日本の視聴者に受け入れてもらえるかがとても重要です。

原文にとらわれすぎた、いかにも直訳で不自然な翻訳ではなく、流れやリズムを保つために意訳が必要な場合もあります。この授業では、私が今まで積み上げてきた経験やノウハウ、情報などを惜しみなく提供し、受講生のみなさんがプロデビューした後に現場で慌てることがないよう、サポートしていきます!

ルポ感想
取材・文
篠原 このみさん


受講生の意識が高く、積極的に意見を出し合っているところが印象的でした。台本の書き方に関する疑問点など、プロになってからでは聞けないような基本的なことも講師が丁寧に指導してくれます。どんなことも遠慮せずに質問できる場があるというのは、本当に貴重だと思います。

私もフェロー修了生です!
2011年度カレッジコース修了。映像翻訳会社でチェッカーの経験を積みました。現在は勉強を続けながらフリーランスとして翻訳の仕事を少しずつ行っています。
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