この講座の特徴は、各回ごとに吹替と字幕それぞれの領域で活躍する2名の講師が入れ替わり、両方の手法がしっかりと学べるところ。今回取材したのは、「字幕」の最終回。題材には、ラブ・コメディ映画のワンシーンが使われた。受講生が前日に提出した訳文をスクリーンに投影し、映像と一緒に流しながら字幕を修正していく形で、授業はテンポよく進んでいった。

講師はすでに全員分の訳を細かくチェックしており、気になる個所では映像を一時停止し、問題点を指摘した。また字幕翻訳の特徴である、漢字と平仮名のバランスによる字面の美しさ、引用符や三点リーダーの入れ方なども徹底的に、そして丁寧に指導していたのが印象的だった。講師の指摘により、受講生の訳文がみるみるプロの訳文に近づいていくのは驚きだった。
普段の授業では、事前に配布されるスポッティングリストを参考に文字数を割り出し、字幕制作をする。しかし最終回は、字幕制作ソフト「SST」の演習にあてられる。「現在の字幕翻訳業界では、SSTのスポッティング技術の習得が必須要素なんです。最近では、SSTを使いこなせないと、トライアルも受けられないこともあります」と講師は語る。このSST演習の授業は、プロになるための第一歩といえるだろう。

受講生はパソコンルームで気軽にSSTが利用できるので、字幕翻訳の学習者にとっては魅力的だ。
【注釈】
- ※1
- スポッティング…一枚の字幕ごとに区切った(ハコ切り)後、その区切られた台詞の長さを計る作業。この長さに合わせて文字数が決められる。
- ※2
- SST…パソコン上で映像を見ながら字幕制作ができる支援ソフト。
【字幕担当:田中先生コメント】
最近の生徒さんは留学経験者などが多く、英語力がある方が増えてきていますが、それだけで翻訳がうまくなるわけではありません。映画や海外ドラマが好きなことは重要ですが、字幕の場合は文語的な要素が強いので、本をたくさん読んでいることも大切になります。

映像翻訳に興味のある方は、まずは吹替と字幕の両方をやっておいたほうがいいでしょう。最近では、両手法のできる翻訳者が重宝がられる傾向もあります。
授業では、講師の訳の粗探しをするくらいの気持ちで(笑)、積極的にどんどん質問してほしいですね。
【吹替担当:宮川先生コメント】
映像翻訳と言っても字幕と吹替ではルールや制約が違います。端的に言えば目で見るか耳で聞くか。字幕はパッと見て読みやすいこと、吹替はサラッと聞いてリズミカルで理解しやすいことが重要です。日頃から日本語のドラマを沢山耳で聞いて、会話のやりとりやリズムを体で覚えるようにすると台詞作りに役立ちます。
授業では原稿の書き方や訳し方の違いなど、仕事を前提により実践的に学習していきます。面白がることが上達の秘訣かも。
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取材・文
濱野 大道さん
田中先生の穏和な人柄が伝わってくる「あったかい」授業でした。カバーしきれなかった範囲の提出課題は、添削したものをあとで送付し、質問があれば直接メールで受けつける、とおっしゃった先生。とても丁寧な指導ぶりでした。字幕か吹替か迷っている人、字幕と吹替の両方の基本を同時に学びたい人にはぴったりのクラスです!
- ●プロフィール
- 現在、「田口特別ゼミ」を受講中。師事して5年目となる田口先生を通して編集者を紹介され、10月に初の訳書が刊行予定。

- 映像か文芸かで迷っていたので、すべてが同時に学べる「フリーランスコース」のあるフェロー・アカデミーを選びました。その後、映像の授業も受けましたが、最後は文芸に落ち着きました。今回ルポさせていただき、また映像への想いがふくらんでしまいました。文芸でも映像でも実務でも、バラエティに富んだクラス設定と講師の充実度がフェローの魅力だと思います。

