この日の課題は、某おもちゃメーカーが開発したICシステムの仕様書の英訳。この講座では、佐藤先生が実際に仕事で翻訳をしたものをベースとした教材が使われる。教材の難易度の高さは先生自身も認めるところだが、実際に仕事で難しい課題を扱うことを想定してのこと。現場でしか味わうことのできない高度な翻訳を学ぶことができる。

また、英訳する際に日本語の原文を読み込むことは、和訳する際にも訳語の選択にとても役立つ。逆もまた然り。そのため授業では和訳と英訳の課題が交互に与えられる。
「原文をどのように解釈するかが訳に直結する」と佐藤先生。量を多くこなすというより、一語一語を丁寧に分析し適切な訳語を考えるスタイルで授業は進行していく。例えば、「有機的な機能」を“organic”を使って表現するのはこの文脈では完全な和製英語。原文の真意が読み取れなければ、作者の意図を正確に伝える訳語が選択できない。そのため、原文を正しく解釈することはとても重要。

授業では、「有機的」が何を意味するか、それをどう解釈すべきかが徹底的に議論された。
時には「書いた本人にしか分からないようなものもあります」とのこと。そんな原文の翻訳は精緻な読解力なしには始まらない。
授業では原文の真意を読み取り、プロのスキルが要求されるポイントを見抜く目を鍛える訓練を一貫して行います。必要なのは経験。やればやっただけ伸びるので、経験を積む機会を大事にしてほしい。もちろん読み書きが好きであることも重要な要素です。

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取材・文
鈴木 章浩さん
使う教材が実際の仕事の文書に近いということもあって、やり応えは十分。教えられることはどれも翻訳に大事なことばかりで、これまで多くの翻訳者が佐藤先生のもとから巣立ったことに深く納得しました。
- ●プロフィール
- 翻訳者。某翻訳会社の社内翻訳者として主に機械や化学分野の論文や特許、取扱説明書を扱う。

- 2008年度より通学講座において実務総合演習および特許を受講。


