全員の訳文を比較検討。

本講座では、読者ターゲットの異なる複数の児童文芸作品を題材に、対象年齢による訳し分け、児童文芸特有のルール、シノプシス作成などをまんべんなく学ぶ。
この日の講義で取り上げた教材は、妖精が主人公の低学年向け短編。まず、受講生ひとりひとりが自身の訳文を読み上げ、それに対し、講師が受講生の疑問点を解消し、コメントしていく。その後全員の訳を比較検討し、さらに訳文を練り上げていくという形で進行する。

発言する機会の多い講座。

いわゆる一方的な「講義」ではなく、講師と受講生とのコミュニケーションが活発な講座だ。講師が1つの答えを提示するのではなく、てきぱきと質疑応答を繰り返しながら、いい表現を一緒に考えていくスタイル。その随所で、「である調」と「ですます調」の選択、セリフの統一感、世界観を考えた訳などの要点が、時には「ハリー・ポッター」や「ホビットの冒険」などおなじみの作品を例にとりつつ、的確に指摘されていく。「編集者と意見が食い違う場合は…」など、講師の経験談も交え、仕事を意識した実践的な講座内容である。

【講師コメント】子供の文化を知って、キャラクターや表現に幅を。

児童文芸の翻訳に求められるのは、コンパクトでわかりやすい表現です。子供は、その作品がおもしろいかおもしろくないかだけで判断しますから。「言葉の引き出し」を増やすためにも、とにかく本をたくさん読んでください。また、漫画やゲームなど子供が興味を持つものに触れることも大切です。さらに、授業では実践的なスキルを身につけるために、「持ち込み用」か「リーディング用」かを選んでいただき、シノプシスを作成してもらいます。

【注釈】

※1
シノプシス…原書のあらすじや評価・所感をまとめた概要・レジュメ
※2
リーディング…出版社から依頼されて、シノプシスを作成する作業
※3
持ち込み…翻訳出版の企画を出版社に持ち込むこと

ルポ感想
取材・文
新井 華澄さん

受講生のいきいきとした意見が印象的でした。これは先生の常に話しかけるスタイルによるものだと思います。課題を訳して終わりではなく、授業中も自分の訳をさらに掘り下げることができるので、参加する意義を味わえる講座なのではないでしょうか。

プロフィール
2年間のメディカル専門翻訳会社勤務を経て、現在はフリーランスのメディカル翻訳者に。主に医薬品副作用(CIOMS含む)、治験関連文書、学会資料、医学論文などを手がける。
私もフェロー修了生です!
もともとジャンルを問わず本が好きで、英語も好きという単純な動機です。その中で、瀬田貞二さんや石井桃子さんなど翻訳自体に魅せられた経験のある児童文学を選択しました。(現在は実務翻訳を仕事にしていますが・・・)