この講座は全18回のうち13回が西村先生、5 回を小森先生という、メディカル翻訳の分野で活躍する2 人の講師が担当している。
西村先生の授業では、毎回、単語の小テストから始まる。内容は体の各部位の名称を和名・英名で解答するというもの。解剖学の知識に触れることができるので、今まで全く医学分野に触れていなかった人にとって知識を得るきっかけになると感じた。

小テストでウォーミングアップした後は、事前課題の解説が始まる。今回の授業で使われていた医学論文には、統計学で使われる用語が沢山載っていた。統計学の知識がない人には一見厳しい分野に見えるが、講師が作成した資料をもとに、用語や必要な知識を解説してくれるので、理解がしやすい。
授業の後半では課題の訳文発表となり、2〜3 人のグループに分かれ、受講生同士がお互いの訳文について話し合い、割り当てられた部分をホワイトボードに書いた後、西村先生が丁寧に解説してくれる。ディスカッションを取り入れているので、受講生同士とても仲が良いのが印象的である。
また、最終回では西村先生と1対1で話せる面談があり、今までの受講生の訳文から傾向や注意点などを教えてくれるので、多数の受講生に紛れることなく行き届いた指導をしてくれると感じた。
小森先生の今回の授業では、医学論文の約5行分の英訳課題を先生が解説した。
内容は、人体のある部位の形状について説明した文章である。想像以上に課題が少なくて驚いたが、小森先生の細かい指導にはさらに驚いた。今回のような形状を説明する文章はよくあるというが、その実際の部位がどういうものであるかイメージできないと上手く翻訳できない。

よって、まずは人体の各部位について興味を持ち、大まかなイメージを付けておく必要がある。
英訳をする時に、同じ意味を持ついくつかの単語の中からどれを選ぶかで悩むことがよくある。例えば今回の授業では、"範囲"を表す単語はextent、range など他にも沢山あるが、何が適切なのかを小森先生が具体例を挙げながら解説していく。extent は形状のはっきりしたものがどこまで広がるか、range は一直線上に並んでいるものの一部分を切り取るようなイメージであるなど、同じ意味でもニュアンスの違いがどこにあるかを先生が非常に細かく説明する。違いが分からないと単語の選択が上手くできず、また文章が指す形状が理解できていないとその単語の選択もできないので、医学的知識も必要となる。しかし先生の具体例は非常に分かりやすいので、興味を持って臨めばとても楽しめる授業であると感じた。受講生の年齢層は学生から年配の方まで様々であり、先生への質問がクラス全体のディスカッションのようになる場面もしばしばあるほど、受講生たちは本気で取り組んでいる。
【西村 多寿子先生】
この講座では、バックグラウンドも様々で年齢も20〜70 代という人たちが学習しています。授業は全員参加が基本であり、ディスカッションによってお互いに訳文をチェックし合い、どうしてそういう訳文になったのか、また講師の訳例以外にもどのようなものがあるのかを知ることが大切です。

そして自分の訳文を客観的に見られるようになり、自分で直す力をつけてもらいます。
課題は症例報告や論文抄録などを使用しますが、最初はロイターの研究リポートのような医療関連の知識があまり必要ない記事を選びますので、メディカル翻訳が未経験の方でも大丈夫です。逆にメディカルの知識がある方々は、元々持っている医学の知識のせいでミスをしやすい場合もあるので、しっかりと内容を把握することが大切です。
課題が多く、勉強量が多いので一見大変そうですが、受講生の皆さんは楽しく勉強しています。また、復習する人は伸びています。バックグラウンドがなくても丁寧に指導しますので、興味のある方は是非チャレンジしてください。
【小森 厚一先生】
ディスカッションが多く、自分と他の方の訳文を比較できる環境です。またディスカッションが盛んであることから受講生同士コミュニケーションが取りやすいのも特徴です。授業で扱う内容は実際に使われている文章の英訳で、皆さんが引っかかりやすいところをクローズアップします。

特定部位の形状を訳す場合、具体的イメージがないと原文に引きずられて上手く翻訳できません。
そのため授業では、単純に原文を訳しただけでは意味がわかりにくい文章を題材にしています。医学の知識は必要ですが、日常でも使うような"言葉"に対して敏感であり、ありとあらゆる可能性を考えられる人であれば取り組んでいけます。医学に興味がある人には是非挑戦してもらいたいです。
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取材・文
中嶋 安曇さん
西村先生と小森先生の授業には異なる特徴がありますが、どちらの先生もわかりやすく説明してくれる点は共通しています。西村先生の配布する資料は非常に丁寧で理解しやすいです。小森先生の授業では、単語の概念を深く掘り下げていく説明に感動し、単語選びの際は概念をしっかり理解し、色々な可能性を考える大切さに改めて気づきました。ある程度医学の知識を蓄えておく必要がありますが、質問をするとどちらの先生も長い時間をかけて説明してくれるため、医学の知識がなくても興味がある人なら誰でも楽しく授業が受けられると思います。
- ●プロフィール
- 理系大学卒業後、公務員として就職。その後医療分野の勉強を経て、昔から好きだった英語に携わりたいと思い、科学と医療の知識が生かせる実務翻訳家を目指して学習中。

- 2011年、総合翻訳科「フリーランスコース」を修了。このコースで翻訳家を目指す仲間達と知り合い、先生以外の訳例に触れて色々な発見がありました。その後単科 実務翻訳コース「実務総合演習<工業・医薬>」を受講しながらトライアルに挑戦中です。


