受講生は「まっ赤」な訳文を読み上げ、授業はすすむ

本講座では、受講生はあらかじめ訳文を提出し、講師がそれを添削する。添削された受講生の訳文は、とにかく「赤い」。自分の訳文をそこまでじっくり見てもらえるのは嬉しくもあり、怖くもある。だが、中途半端なものは出せないとなれば、訳すことに対する真剣度は高まりそうだ。
 
授業は添削された訳文を受講生が各々、数行ずつ読み上げ、講師がコメントをつけながら進められる。

「文のニュアンスがきちんと読みとれているか」「登場人物の性格が反映されたセリフになっているか」「物語の流れを考えたうえで訳されているか」「同じ段落内で視点のちがう文がある場合、どう訳せばいいか」など、数行のなかでも注意すべきポイントをたくさん挙げ、解説してもらえる。受講生の訳がかならずしもベストでなくても、「なぜ、そう訳したのか」を汲んでもらえるので、非常に励みになる。そのうえで、どうすればよりよい文章になるかの指導が続く。

「言葉」に対して、つねに敏感でいる

今回の授業で印象的だったのは、「日本のドラマを見るように」というアドバイス。「日本のドラマのセリフは、(乱暴なシーンでも)意外と丁寧。さじ加減がロマンス小説にはちょうどいい」という。翻訳の勉強のためなら海外ドラマを見た方がいいのではと思っていたが、目からうろこが落ちた。
このアドバイスがあったのは、ちょっとした雑談のなかでのこと。先生と気さくに「雑談」ができる距離の近さも、この講座の魅力だ。

 
また、いわゆる「いまどきの言葉」をどこまで使っていいかも話題になった。作品として残るものだから、「この言葉は10年後も使われているか」までを考えなくてはならないのだ。翻訳とは、非常に奥が深い。

【講師コメント】つねにインプットを忘れずに

ジャンルを問わず国内外の本をたくさん読み、映画やドラマをたくさん見ておくように。翻訳をする時に、どれも無駄になることはありません。ロマンス講座の受講生は女性が多いですが、アクションシーンを訳すのは苦手という方も見受けられます。そういう時は、アクションものの小説を読んでみる。読書を楽しんでさらに勉強になるなら、一石二鳥です。

また、ロマンス小説のおもしろさは、会話の妙や登場人物の感情の動きのこまやかさにあります。これらをきちんと読み取って訳すことは非常に勉強になり、どんなジャンルの作品を訳す時にもかならず役に立つはずです。

ルポ感想
取材・文
吉野山 早苗さん

雑誌などで柿沼先生のにこやかなお顔を拝見することは多かったのですが、実際にお会いした先生は写真で拝見する以上ににこやかで、とてもすてきな方でした。そんな先生のお人柄を反映してか、授業の雰囲気も楽しく和やかです。その中で、翻訳するうえでの重要なポイントを惜しみなく教えていただけました。
 
ロマンス小説は「読まず嫌い」な人も多いと思いますが、とっかかりとして『古書店アゼリアの死体』(若竹七海/光文社文庫)と『ロマンス小説の七日間』(三浦しをん/角川文庫)の2冊をおすすめいただきました。前者ではロマンス小説を愛好する人のイメージがつかめ、後者では主人公とともにロマンス小説のおもしろさにはまっていくという経験ができます。ひと味ちがった方向からアプローチすることで、ロマンス小説の魅力を発見できるかもしれません。

プロフィール
田口俊樹先生のゼミに4年通い、今年から特別ゼミに移りました。この数年でリーディングや下訳のお仕事をいただけるようになり、最近はスポーツ選手の光と影に迫ったノンフィクションを共訳しました。
私もフェロー修了生です!
最初はフェローの通信講座で学んでいましたが、せっかく通える環境にあるのだし、ということで通学講座に切りかえました。1対1でじっくり見ていただける通信講座ももちろん魅力的ですが、やはりその場で先生に疑問をぶつけられる通学講座は、かならずためになると思います。受講生同士のつながりも、大きな財産になります。