田口俊樹先生が指導する「田口ゼミ」では、先生が翻訳中の作品を課題として取り上げる。毎回、指名された4人の受講生に原書約2ページ分を割りふり、1人が1ページ分を「下訳」として翻訳し、3人が残る1ページ分の同じ範囲をそれぞれ訳して、事前に提出する。

授業時間は1時間40分。前半では下訳を、後半では3人の翻訳を個別に吟味・検討する。前半・後半ともに進め方は共通しており、まず受講生が「ここは自信がない」「こういう理由でこう訳した」など感想を述べ、それに対して田口先生が考えやアドバイスを伝える。その後、ほかの受講生から質問や意見を募り、さらなるディスカッションへ。日本語表現、原文解釈、表記など、さまざまな角度から問題点や疑問をクリアにしていく。
最後に、受講生全員の挙手により、後半で検討した3つの訳文のなかの「ベスト」を選出。その結果を踏まえ、総評を行って、先生自身の訳例を配って授業終了だ。

正しく読解し、原文を離れ、より自然な日本語へ

訳文を検討する際、担当した受講生は「翻訳しての感想」を述べる。それが議論へ発展し、見逃していた問題点に気づいたり、翻訳の基本姿勢の確認につながったりすることも。教室に集まり、講師やクラスメートとともに学ぶ意味は、こんなところにもある。そんな議論とはどういうものか、例を見てみよう。







実践を通してプロの考え方・方法論を学ぶ

受講生から「こんな訳し方は大丈夫か」「こういう場合はどう訳すべきか」といった質問が飛ぶ。それに対し、田口先生は長年の経験と蓄積からアドバイス。プロの世界で「良し」とされる訳し方の範囲が少しずつ見えてくる。






【講師コメント】「好きに訳す」の難しさを知る真の翻訳学習はそこから始まります

出版翻訳は基本的に「なんでもあり」であって、自分の好きに訳せるところが一番の楽しさだと思います。その意味では、一から教えてもらうことを期待している人より、自分から「こうしてみよう、ああしてみよう」と思える人のほうが向いていますね。
でも、実際に好きなように訳してみると、これが意外に難しい。そのやり方がいいのか悪いのか、判断がつかないからです。そのときに、現役翻訳者である私なら、ある程度「良い・悪い」を言ってあげられる。授業を「自分の訳し方をチェックする場」だと考えてもらえると、意味のある勉強ができるんじゃないかと思います。
じつは「自分の好きなように訳す」というのがいちばん難しい。それに気づき、どう訳していいかわからなくなったら、とりあえず私の翻訳を手本にしてください。現役でやっている人間の翻訳ですから、道を誤ることはありません(笑)。そんなふうに「まねる」ことも経験し、最終的に“自分の訳し方”を見つけるのが、古くさい徒弟制度めくけど、案外近道で、少なくとも効率的な勉強法のような気がします。

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(text 金田修宏)