リーディング講座 原書を読み、シノプシスを作成するというリーディングの仕事を実践的に体験。出版翻訳に必須のリーディングのポイントを学びます。
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出版翻訳家を目指すなら必ず身に付けたい「リーディング」スキル
リーディングとは、原書を読んで、そのあらすじや感想・批評などをシノプシスとしてまとめる仕事。
この「シノプシス」は、出版社が海外の著作物を日本で出版するか否かを判断する重要な資料となりますので、内容を正確にまとめることはもちろん、マーケットを意識した視点も求められます。原書を読み、人に読ませる文章を書くという面では翻訳と同等の力が必要なため、リーディングをきっかけに翻訳者としてデビューするというケースも少なくありません。また、デビュー後もリーディングを依頼される機会は多く、出版翻訳家にとって避けて通れない道です。
翻訳出版の仕組みと仕事の流れ
出版社には国内外の著作権エージェントから、海外で人気のある本、脚光を浴びそうな新人作家の作品、有名作家の新作情報などが定期的に報告されてきます。
リーディングは、その莫大な量の中から出版するか否かを左右する重要な仕事です。
翻訳出版の仕組みと仕事の流れ
出版翻訳家デビューのきっかけはリーディングでした

中村 有希さん

出版翻訳家。『ローマ帽子の謎』『サイズ14でもでぶじゃない』『エアーズ家の没落』『メリー殺しマス 』『災厄の紳士』『夜愁』『荊[いばら]の城』『半身』(創元推理文庫) など訳書多数。『荊[いばら]の城』は、第2位「週刊文春」2004年ミステリーベスト10/海外部門、第8位『ミステリが読みたい!2011年版』ゼロ年代ミステリベスト・ランキング海外篇などの数々の賞を受賞している。

リーディング&持ち込みで自分をアピール
出版翻訳者としてデビューしてから、27冊の作品を翻訳してきましたが、デビューのきっかけとなったのは出版者が募集していたリーディングのトライアルに合格したことです。週に1、2冊ペースでのリーディングを数年続け、ある日、自分で買って読んだ本を半分ほど訳して、シノプシスと一緒に持っていってみました。すると訳文のサンプルを見た担当編集者が、この程度訳せるのなら、仕事をしてみませんかと言ってくださったのです。
デビュー後は、わたしがリーディングで高評価をつけた作品が担当編集者の手元に何冊もたまっていたので、それらを次々にまかせてもらうことができました。そのストックもいつかはつきる、とわかっていたので、その時のために、企画持ち込み用として、自分で本を買ってリーディングの要領でシノプシスをまとめ、担当さんに渡したりしていました。そうやって持ち込んだ企画が実際に通ったこともあります。
リーディングで仕事のきっかけをつかんだら、次は「自分にはこの程度の翻訳ができる」とアピールすることで、仕事のチャンスが広がったのだと思います。   
これからリーディングを学ぶ皆さんへ
リーディングの訓練で必要なのは、とにかく本をたくさん読んで、自分の好みや基準を確立させておくこと、特に日本語の小説を数多く読んで、自分の評価に自信を持てるようにすることです。以前、何度かほかのかたのシノプシスを読む機会がありましたが、「自分にはおもしろさがわからなかったけれど、Amazonでは星が4つついているから、おもしろいのかも」などと書かれているシノプシスが多かったことに驚きました。それではシノプシスを書く意味がありません。
Amazonの評価を引き合いに出すならむしろ、「Amazonでは星4つついているけれども、〜という欠点がある。〜というジャンルが好きで、〜が苦手な自分には、あまりおもしろいと思えなかった。ただし、〜のようなジャンルが好きな人にとってはおもしろいと思う」と書いたほうがよいでしょう。
このようなシノプシスを編集者に提出し続けることによって、「この人はこういう本が好きらしい」と訳者としての好みや得意分野を知ってもらえることにもなります。
わたしがいまも、自分がもっとも得意で大好きな本格ミステリ寄りの仕事をいただけるのも、そのおかげです。
編集者に聞く

翻訳者ネットワーク「アメリア」の協力会社でもある角川書店の編集者に「リーディング」という仕事についてうかがいました。

当社は複数の著作権エージェントと取引をしていて、海外で人気のある本や脚光を浴びそうな新作情報を定期的に送ってもらっています。送られてくる作品数は時期によってまちまちですが、リーディングを依頼するのはそのうちの3割くらいでしょうか。わたしたち編集者は、納められたシノプシスを読み、月2、3回開かれる検討会で、どの本を翻訳・出版するか話し合います。とにもかくにも一番大事なのは、その作品の意図をきちんと読みとって、まっすぐに伝えてくれることですね。
最近は、海外でも若い作家の活躍が目立ってきています。そういう作家の作品は同世代の訳者さんに翻訳してもらいたいと思っていますので、若い新人翻訳家が出てくるのを期待しています。普段からいろいろなジャンルの本を読んで評価する力、感性を養ってください。リーディングはそういった意味でも翻訳の力をつけるのに役立つはずです。

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