実務とれたて直送便
ええ訳、しまっせ! 英訳でニッポン文化を海外へ
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政権交代で新たな政策への期待が高まる日本……ですが、この「実とれ」も分かりやすい情報の提供、すべるネタ25%削減、危険なネタ廃絶などをマニフェストに掲げ、読者のみなさんとの「友愛」を深めたいと思います。
 
というわけで今回のテーマは「友愛」、じゃなくて「UI」に関する翻訳(さっそくすべるネタが削減できていません)。コンピュータをユーザーが快適に操作して、両者の意思疎通がスムーズにはかれるよう、翻訳者は「UI」の翻訳で貢献しているのです。
 
それでは「UI」の翻訳ってどんなものか、詳しく見ていきましょう。あっ、そこのあなたがいまブラウザで選択しようとしている「ファイル」メニューの「閉じる」も「UI」の一種なんですよ……っていうか、ここからが本題なんだからまだ閉じないで〜!!
UI――それはパソコンユーザーなら誰もが目にする身近な存在

UI翻訳の詳細を紹介する前に、そもそも翻訳の対象となる「UI」とは何を指すか、みなさんご存じですよね? えっ、分かるように説明してくれって? しょうがないなぁキミたち、ここはおとな店長はっしゅに任せなさい。ちゃんと私が、その道のプロに聞いてきてあげるから!(あれ、なんか不特定多数の冷ややかな視線を感じる……)
 
てなわけで、UIに関するあまたの翻訳実績を持つフリーランス翻訳者、内山陽子さんにお話をうかがってみました。そんじゃ、あとはよろしくです!
 

はじめまして。ソフトウェア開発会社から翻訳の道へ分け入って気が付けば早7年、UI翻訳の経験回数はこれまで、ええと、何回だったか……、とにかく数えるのに時間がかかりそうな程度は経験済みであります、内山がお答えいたします。

おおっ、それは心強い! ぜひともご解説お願いします。
 
UIとは ユーザーインタフェース(User Interface)の略で、interfaceには「2つのものの間に立って相互にやり取りする領域・手段」といった意味があります。ですから、ユーザーインタフェース(UI)というと、「ユーザーとコンピュータのOSやソフトウェアとの間で情報をやり取りするための表示面」、そしてそこに「表示される文字等」を指し示すことになります。
 
インタフェースを使った言葉には、他にもハードウェアインタフェースやソフトウェアインタフェースなどがあります。それぞれ「ハードウェア(機器)間の接続部分の形状等」や「ソフトウェア間で通信を行うためのデータの渡し方等」を表しています。いろいろありますがインタフェースと名のつくものの中で、パソコン初心者でもピンと来やすいのがユーザーインタフェースということになるでしょう。
 
というのも、パソコンを少しでも扱ったことさえあれば、誰でも必ず目にするのがユーザーインタフェースだからです。Windowsパソコンを起動するとまず出てくる「ようこそ」メッセージ、何かするときにクリックする「OK」や「いいえ」ボタン、「ファイル」や「編集」、「表示」メニュー、間違えて変な動作をすると表示されるエラーメッセージ、どれも堂々たるUIの一種です。パソコン上でこの記事を読んでいる方ならきっと誰でも目にしているはずですね。ですから、UIはIT翻訳のさまざまな対象の中で、ある意味もっとも身近な存在といえるかもしれません。

なるほど。パソコン上でユーザーが意思を示したり、コンピュータがメッセージを発したりするための媒体となる言葉は、すべてUIに含まれるわけですか! となると、かなり多くの言葉がUI翻訳の対象になりそうですね〜。
 

UIの「簡潔な表現」は翻訳者のチャレンジポイントだ!

さきほどの内山さんの解説で、UIの実例がイメージでき、にわかに身近な存在に感じられるようになりました。UIって短くて簡単なものが多いし、普段あれほど日常的に見ているし、そんなんだったら私でもチャチャッと翻訳できちゃいますよね、内山さん?
 

このように身近な存在のUIではありますが、実際に翻訳するのも身近だから簡単かというとそういうわけにも行きません。UI翻訳では、実際にOSやソフトウェアを使うユーザーの方々にとって分かりやすく、かつ簡潔な表現というものが要求されるからです。そのUIをクリックなり、ポイントなりしたときに起こる動作について、正しくユーザーに伝えられることが翻訳者の使命となります。この辺りがUI翻訳の作業において、面白くも悩ましいチャレンジポイントといえるでしょう。
 
ソフトウェアは簡単に使えるのがいちばんですから、できるだけ分かりやすい表現が求められるわけですが、たとえば私が今書いているこの記事のように、心やさしい編集の方が「字数には特に規定ありません」などと許してくれるような状況は、UI翻訳にはまずありません。ローカライズ対象となるソフトウェアの画面の領域には限りがあるので、字数の制約を常に頭に入れながら翻訳する必要があるのです。
 
たとえば、原文のUIメッセージが半角で10文字分なら、その日本語訳は(できればですが)だいたい全角5文字分程度までに抑えることが求められます。元々の原文版のソフトウェアの該当部分には、半角10文字の原文UIが収まるだけのスペースしか取られていないことが多いからです。そのスペースにちょうど置き換わる格好で、日本語UIが上手くはまるように工夫しながら訳出していきます。スペース的におおよそ同量で、かつ誤解なく意味を伝えられる表現を見つけるべく頭をひねることになります。

そうか〜、やっぱり自由な字数で書かせてくれる人って心やさしいですよねぇ……って、おいおい、そこに感心してどないすんねん!(←セルフUI、またの名を一人ボケツッコミ)
 
UIに字数の制約、なんて思いもよりませんでしたが、たしかに原文の表示スペース自体は訳語によってそうそう都合よく変えられるものじゃないですよね。もう一つ、翻訳者にとって悩みどころとなる点があるそうですが?
しかも、やっかいなことにUI翻訳の作業というのは、往々にしてUIだけを抜き出したファイル上で行われます。分かりやすいところで言えば、Wordの.docファイルなどですが、そうしたファイルに上から順にUIの文字列が並んで書かれているものを一挙に訳出していくわけです。ですから、そのUIがどのような場面でどのような動作のために出てくるものなのか、作業ファイル内のUI文字列からだけでは判別しにくいこともあります。そこがUI翻訳の少々頭を使うところです。
 
ここで、元の原文版のソフトウェア(実機)が翻訳者に渡されて手元のパソコンにインストールされていれば、実際の動作を確認した上で適切な訳語を捻出することができます。問題は、そうした資料が依頼元から渡されていない場合です。もちろん依頼元にお願いすれば資料を提供してもらえることになって、確実に作業できるようになるかもしれないので、それも1つの手です。しかし、納期によっては、いちいち実機にあたって使用状況を調べるだけの時間がないこともあります。そうしたときには、とにかく関連資料にあたって、Web上で関連分野の知識、常識、関連ソフトウェア等を調べて裏付けを取るしかありません。

う〜ん、UI文字列が表示されるシチュエーションを把握するための地道な努力が必要なんですね。なんだか奥が深そう! はっしゅも甘い考えをあらため、顔を洗って実務翻訳の基礎学習から出直します!
 
次号の<後編>では、UI翻訳に独特の表記など、さらに踏み込んだ解説をお送りします。フムフムと読んでいるうちに、いつの間にか翻訳上の注意点に詳しくなれちゃうことうけあい。どうぞお楽しみに!
 
そして、いまやフリーランスで活躍中の内山さんにも実務翻訳の基礎学習に励んだ時代がありました。気になるパーソナルヒストリーを知りたい方は次のページへどうぞ。
 


■LINK:今回のテーマに関連するバックナンバーはこちら
 
file.05 いい汗かこうぜ! オンサイト業務のススメ
(オンサイトと在宅の両方で活躍するIT翻訳者、市川さんの経験談)

 
file.06 こりゃええぞ! 映像チュートリアルは便利アル!
(ソフトウェアの使い方をより分かりやすくするマルチメディア翻訳とは?)
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