さきほどの内山さんの解説で、UIの実例がイメージでき、にわかに身近な存在に感じられるようになりました。UIって短くて簡単なものが多いし、普段あれほど日常的に見ているし、そんなんだったら私でもチャチャッと翻訳できちゃいますよね、内山さん?
このように身近な存在のUIではありますが、実際に翻訳するのも身近だから簡単かというとそういうわけにも行きません。UI翻訳では、実際にOSやソフトウェアを使うユーザーの方々にとって分かりやすく、かつ簡潔な表現というものが要求されるからです。そのUIをクリックなり、ポイントなりしたときに起こる動作について、正しくユーザーに伝えられることが翻訳者の使命となります。この辺りがUI翻訳の作業において、面白くも悩ましいチャレンジポイントといえるでしょう。
ソフトウェアは簡単に使えるのがいちばんですから、できるだけ分かりやすい表現が求められるわけですが、たとえば私が今書いているこの記事のように、心やさしい編集の方が「字数には特に規定ありません」などと許してくれるような状況は、UI翻訳にはまずありません。ローカライズ対象となるソフトウェアの画面の領域には限りがあるので、字数の制約を常に頭に入れながら翻訳する必要があるのです。
たとえば、原文のUIメッセージが半角で10文字分なら、その日本語訳は(できればですが)だいたい全角5文字分程度までに抑えることが求められます。元々の原文版のソフトウェアの該当部分には、半角10文字の原文UIが収まるだけのスペースしか取られていないことが多いからです。そのスペースにちょうど置き換わる格好で、日本語UIが上手くはまるように工夫しながら訳出していきます。スペース的におおよそ同量で、かつ誤解なく意味を伝えられる表現を見つけるべく頭をひねることになります。 |
そうか〜、やっぱり自由な字数で書かせてくれる人って心やさしいですよねぇ……って、おいおい、そこに感心してどないすんねん!(←セルフUI、またの名を一人ボケツッコミ)
UIに字数の制約、なんて思いもよりませんでしたが、たしかに原文の表示スペース自体は訳語によってそうそう都合よく変えられるものじゃないですよね。もう一つ、翻訳者にとって悩みどころとなる点があるそうですが?
しかも、やっかいなことにUI翻訳の作業というのは、往々にしてUIだけを抜き出したファイル上で行われます。分かりやすいところで言えば、Wordの.docファイルなどですが、そうしたファイルに上から順にUIの文字列が並んで書かれているものを一挙に訳出していくわけです。ですから、そのUIがどのような場面でどのような動作のために出てくるものなのか、作業ファイル内のUI文字列からだけでは判別しにくいこともあります。そこがUI翻訳の少々頭を使うところです。
ここで、元の原文版のソフトウェア(実機)が翻訳者に渡されて手元のパソコンにインストールされていれば、実際の動作を確認した上で適切な訳語を捻出することができます。問題は、そうした資料が依頼元から渡されていない場合です。もちろん依頼元にお願いすれば資料を提供してもらえることになって、確実に作業できるようになるかもしれないので、それも1つの手です。しかし、納期によっては、いちいち実機にあたって使用状況を調べるだけの時間がないこともあります。そうしたときには、とにかく関連資料にあたって、Web上で関連分野の知識、常識、関連ソフトウェア等を調べて裏付けを取るしかありません。 |
う〜ん、UI文字列が表示されるシチュエーションを把握するための地道な努力が必要なんですね。なんだか奥が深そう! はっしゅも甘い考えをあらため、顔を洗って 実務翻訳の基礎学習から出直します!
次号の <後編>では、 UI翻訳に独特の表記など、さらに踏み込んだ解説をお送りします。フムフムと読んでいるうちに、いつの間にか翻訳上の注意点に詳しくなれちゃうことうけあい。どうぞお楽しみに!
そして、いまやフリーランスで活躍中の内山さんにも 実務翻訳の基礎学習に励んだ時代がありました。気になるパーソナルヒストリーを知りたい方は次のページへどうぞ。 |