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意外と間口の広いマーケットレポート
「実とれ」では以前に金融のレポート全般をとりあげましたが、今回はマーケットレポートに焦点を絞ってお届けします。企業や個人投資家にとって重要な判断材料となるマーケットレポート。その翻訳には何が求められているのでしょうか?

一つの業界に的を絞ったものからさらに細かいものまで――
業界に詳しい読み手を意識して、正確に事実を伝えることが大事

今回はフリーランスとしてマーケットレポートの翻訳を継続的に手がけている修了生、小野万理子さんにお話をうかがいました。一口にマーケットレポートといっても、調査の対象となる市場にはありとあらゆるものがあるそうです。

 

■マーケットレポートの翻訳に携わる小野万理子さんのお話:

私が翻訳しているマーケットレポートのクライアントはいわゆる経済系シンクタンク(総合研究所)で、世界中のあらゆるマーケットの動向を調査し、アナリストの予測などと合わせ、レポートとして提供する情報サービス企業です。顧客はこのレポートを通してターゲットとする業界や分野の将来動向を予測でき、事業戦略や製品開発、投資などの意思決定に役立てます。同社では市場に関係する国際情勢、安全保障や防衛問題など政治的な調査も行っており、サービスの提供のしかたも、Webやメール、小冊子など幅広い媒体にわたります。
お仕事をいただいてわかったのですが、マーケットレポートは本当に幅広く、マクロ経済やエネルギー市場、小売など一つの業界に的を絞ったものや「中国の携帯電話ディスプレイ市場レポート」のようにとても細かいものもあります。マーケットレポートから派生して、一つの国の政治情勢のレポートも発生したりします。そのため、自分の詳しくない分野については念入りにリサーチしています。少量のレポートが多いとはいえ、納期が短いのでリサーチの時間は限られていますが、自分の知らない最新の情報を知ることができるのは翻訳の醍醐味だと思っています。
マーケットレポートを訳すときは、ピンポイントにその情報を求めている投資家や、特定の業界の関係者の方を読み手に想定しています。当然私よりもずっと詳しい方々ですので、とにかく正確に事実を伝えるように心がけています。直近の情報はもちろんですが、過去からの流れをつかんだ方が変化を伝えやすいため、なるべく半年前、1年前と古い情報も確認するようにしています。また、マーケットレポート独特の表現などを使い、読ませるレポートに仕上げるように尽力しています。

ちなみに、同じ会社をクライアントとして、レポート以外にも会社案内のパンフレットや、個人顧客向けに行っている投資セミナーの案内などの翻訳も受注しています。特に新しいサービスを紹介する文章では、読む方に興味を持ってもらえるよう、読みやすさを重視してすっきりとわかりやすくリズム感のある訳を目指しています。
なるほど、過去の情報まで確認する徹底的なリサーチがともなうと、より正確でいきいきした訳文になるでしょうね。このジャンルを目指すなら、なじみの有無にかかわらずどんな市場のレポートがきても太刀打ちできるリサーチ力が不可欠といえそうです。

証券会社勤務後、長いブランクを経て金融関連の翻訳者に
通信・通学講座修了生、小野万理子さんのパーソナルヒストリー

ここからは、前半でマーケットレポートを中心とした話を聞かせてくださった小野さんが翻訳者になるまでのキャリアパスをクローズアップします。証券会社に勤めていたものの翻訳者を目指すまでに何年ものブランクがあった小野さんが、自身の知識をアップデートできた原動力とは? そしていまや金融以外の翻訳も手がけるまでになったのはなぜでしょうか?

■小野万理子さんのプロフィール:
大学の経済学科を卒業。証券会社勤務後に翻訳の仕事を目指し、フェローの通信講座「実務翻訳<ベータ>」、通学講座の単科「経済・金融」「ビジネス・経済ゼミ」を受講。現在は翻訳会社にチェッカーとして勤務しながら、在宅で金融、マーケティング分野などの翻訳を手がける。

経済・金融はバックグラウンドがなくても入りやすい分野。
大切なのは「好きかどうか」という単純なことなのかもしれません。

大学では経済学科にもかかわらず社会学系の授業ばかりを受けていて、証券会社に入社してから、基本的な経済の流れ、日経新聞の読み方、ひと通りの金融商品の仕組みなどを叩き込まれました。覚えることの多さに毎日音を上げながら、それでも絶え間なく変化する金融市場を面白いと感じるようになりました。会社員時代までは英語と無縁の生活でしたが、夫の転勤に帯同してオーストラリアに居住してからは、現地で語学学校に通ったり、ローカルイベントに参加したりするうちに、英語を学習する楽しさを覚えました。出産して日本に帰国し、仕事をしたいと考えたものの、子供が小さいうちは病気も多く、外に出て働くことに限界を感じ……。悩んだ結果、憧れでしかなかった翻訳という仕事を本気で目指して勉強しようと決めたのです。退職したあとも経済や金融の記事を読むのは好きだったので、長いブランクはあっても金融をメインにする方向性に迷いはありませんでした。
時間的な制約からまずは通信講座で学ぶことにし、英語そのものの再勉強も兼ねて初級の「実務翻訳<ベータ>」を選びました。私には無理なんじゃないかと何度も思いましたが、受講を始めると、辞書で英単語の訳を丸暗記するばかりと思っていた英語学習がもっと自然で柔軟なものだと知り、本当に楽しくなりました。添削トレーナーの方がくださった長いコメントに救われたこともあります。
中級からは、ほかの受講生の方に囲まれながら刺激を受け、情報収集もしたいと思ったので通学講座の単科を選ぶことに。週に一度、夫が早く帰ってきて子供の面倒をみてくれ、また夫の都合がつかないときはフェローの託児サービスを利用できたので、中級から上級まで1年通い続けることができました。毎回授業の前半には講師の吉本秀人先生から課題のテーマについて解説があるのですが、今起こっている最新の経済動向などをわかりやすく教えてくださるのが興味深く、いつも授業が終わると「もっと知りたい!」と感じました。金融分野はリサーチにも時間がかかりますが、「一度調べたらどこかにまとめて、似たテーマが次に出てきたらそれを見返す」という先生の教えをもとに、特に金融独特の表現などはExcelにまとめ、どんどん追加して簡単に確認できるようにしました。今でも訳出に詰まると、それを眺めてヒントを探すことがあります。
▲小野さんの資料ファイル。通学講座の授業で毎回とったメモを見やすくまとめなおしたり、後日雑誌などで見つけた関連記事を綴ったりと、あとあとまで活かせる工夫を施しているのだとか。
上級のゼミに移る頃、フェローの事務局の方にどうしたら仕事につなげられるか相談したところ、チェッカーのトライアルを受けてみては、と言われました。その後、アメリアの求人情報から応募した会社にオンサイトのチェッカーとして採用いただき、そこで一から翻訳業務の仕組みを学び、すぐそばでコーディネーターさんたちの仕事を見ながら、ベテランの訳者さんの訳をチェックさせてもらっています。勤務先でいろいろな翻訳支援ツールの使い方にも慣れた頃、自宅のPCにもTradosを導入し、本格的に翻訳者のトライアルも受け始めました。その後数社から合格をいただき、今に至ります。
翻訳会社にいると、当たり前のことですが、翻訳成果物が読み手に届くまでにはたくさんの過程があり、携わる人全員が全力で仕上げるものだと感じます。自分が翻訳者として納品するときも、もちろん読み手やクライアントの満足は最優先として、チェッカーやコーディネーターの方が仕事しやすいよう、申送りをつける、不安な箇所にはしっかりコメントをつける、別案を用意するなどの心がけをしています。
在宅で、マーケットレポートと同じクライアントから年次レポート、広報資料、プレゼン資料などさまざまな依頼をいただくうちに、半分が金融、残り半分がマーケティングや広告、というバランスになりました。最近は社内研修ビデオなど映像翻訳にも少し携わるようになり、想像もしなかったお仕事をいただけて嬉しいですね。
経済・金融はバックグラウンドがなくても入りやすい分野だと思います。動きの速い業界なので、私のように長いブランクがあるとほぼ未経験と同じですが、大切なのは「好きかどうか」という単純なことなのかもしれません。日常生活の中でニュースを意識したり、新聞・経済誌で生の情報に触れたりすることはもちろん重要ですが、それも好きであれば継続できるものだと思います。私はTwitterでロイターやブルームバーグをフォローして見出しだけでも必ず毎日チェックしています。また現在翻訳者として活躍中の方や学習中の方ともSNSでつながることができ、たまに集まりの場にお邪魔すると仕事の情報が得られてとても参考になります。同業者と知り合うのが少し難しい職業ですので、自分からつながりを見つけ、わからないことは聞いてみるようにしています。
▲自宅の仕事環境。ワードファイル2つを並べてひらけるサイズのディスプレイを備えているほか、PC作業で目が疲れたら訳文のプリントをクリップボードにはさみ、ソファで読み直しているそうです。
今後も金融分野をメインに据えていろいろなお仕事をしてみたいですが、今は財務関係の翻訳にもっと強くなれるよう学習を続けたいです。また体調、スケジュールなど自己管理が非常に重要なので、メリハリをつけてしっかり態勢を整えたいと思います。まだまだ駆け出しのため、なんでもやらせてください、という姿勢でお仕事をいただいていますが、いつかどこかで誰かが私の訳した文章を読んで「参考になったな」と思ってくれたら……と想像するだけでも涙が出そうなほど幸せです。
小野さん、ありがとうございました。たとえバックグラウンドがなくても、知りたいという好奇心があれば最新の知識をいくらでも増やしていける――。多少の専門性の差こそあれ、それはどの分野にも共通していえることかもしれませんね。これからも金融を軸にますます守備範囲を広げ、翻訳を必要とする読み手に有意義な情報を届けてください!
小野さんが受講した講座はこちら
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