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工業製品の技術に関する、日英翻訳の仕事
(2017年3月24日更新)
今回は、工場で生産される工業製品や、その技術に関する文書の翻訳について、フリーランス翻訳者の増田考保さんにお話をうかがいました。経済産業省によると現在の日本の工業製品全体のうち、43.7%を機械工業が占めているそうです。機械工業というと、自動車や電化製品、電子部品などがありますが、こういった製品やその技術を生み出し、国内だけでなく海外にも送り出していることを考えると、翻訳の需要にも注目です。

開発中のものから実用化を目指しているものまで、幅広い技術に触れることができるのが魅力

■増田考保さんのお話:

工業製品に関する文書で、私がこれまでに翻訳を受注したことがあるのは、メーカーの設計者が、海外に住む同社の設計者やサービス・保守担当者に向けて作成した技術仕様書、企業の担当者がユーザー向けに作成した取扱説明書、医療機器のサービスマニュアル・仕様書、電子機器の仕様書、会社案内、安全データシートなどがあります。また、この分野の研究者やNGOで活動する人に向けた、環境やリサイクルに関するプレゼン資料、環境に関する法律や政策などが書かれた研修資料、自治体やNGOの取り組みに関する文書などもあります。最近では、クレーンやプレス用のコイルなどの取り扱いについてといったような、社内での作業手順書も受注が増えています。私は日英を専門にしていますので、すべて日本語から英語への翻訳です。
また、私の場合は自動車業界紙のニュース記事も翻訳しています。主には、自動車メーカーや自動車部品メーカーがプレスリリースで発表する内容や、各企業の動向、新車販売の数(前年比)というような内容の記事です。具体的には、自動車部品メーカー(サプライヤー)が、海外に樹脂材料の販売子会社を設立した(する)ニュース、自動車部品の生産能力増強のための工場新設についての記事、電気自動車など車の電動化に関する記事や自動運転の開発に関する記事など。なかには、リチウムイオン電池の材料、軽量化に関すること(炭素強化プラスチック、エンジニアリング・プラスチック、その他樹脂)、先進運転支援システム(ミリ波レーダー、ステレオカメラなど)に関する記事もあります。自動車業界の経済動向といった情報だけでなく、技術についても開発中のものから実用化を目指しているものまで、非常に幅広く触れることができます。
技術に関する翻訳では、原文の内容や技術内容を正確に理解すること、そして正確かつ簡潔に翻訳先の言語で表現することが重要です。また、未知な情報も出てくるので、それをリサーチする力が必要です。最新の技術の多くは、既存の技術をベースにしていますので、これら既存の技術をインターネットなどで調べます。既存の技術の内容や用語を理解して、最新の技術の用語(訳語)を決めたり、内容を理解したりするようにしています。
また、翻訳者になるために勉強していたころ、フリーランスになるということにやはり不安があり、専門的な分野ができるようになりたいと思ったので、特許翻訳の学習も始めました。特許翻訳を学習している際、例えば原因・結果の動詞や、可能・不可能の動詞が使われている文章を訳す際に、特許翻訳で必要な知識は技術翻訳で必要な知識と共通していることが多いと感じました。現在の仕事でも、技術翻訳の経験、特許翻訳の経験、双方向で役立っています。
日本語は、技術内容を記述したり、他人に説明したりする言語としては、英語と比べて不向きな言語だと思います。主語や目的語が頻繁に省略され、時制が厳密ではなく、単数・複数の概念がないからです。
また、要素と要素の関係を示す「てにをは」も感覚的で明確に分かりにくい場合があります。こういう言語を持つ日本だからこそ、独特の文化や文学が存在し、それが技術面での独特な発想につながっているとは思います。ただ、技術内容を日本語から英語に翻訳するとなると、そういった日本語の特徴をよく知ったうえで内容を正確に理解する必要があります。難しいこともありますが、その分やりがいを感じています。
「ものづくり大国」と呼ばれた時代もあった日本。負けず劣らずの国が出てきても、まだまだ技術については日本の得意分野です。そこに、増田さんのような日英翻訳者の存在は重要ですね。とくに、日本語ネイティブとしての強みが活かせる分野である、ということにも可能性を感じます。もちろん海外企業とのビジネスになれば、英日翻訳も欠かせません。

需要と供給のバランスで優位に立てるように、実力を向上していきたい

今回お話をうかがった増田考保さん。フリーランスの日英翻訳者として活躍するまでに、どのような経緯があったのでしょうか。なぜ日英翻訳なのか、技術を専門としたのか、お聞きしました。

■増田考保さんのプロフィール:
翻訳会社などでの勤務を経て、日英翻訳者に。2010年から、フェロー・アカデミーの通信講座「実務翻訳<ベータ>」、「ベータ応用講座「IT・通信」」、同講座「ビジネス文書」、マスターコース「IT・テクニカル」「実務英訳」を受講。

最初に基本をしっかりと習得することが大事

私が翻訳者になろうと思ったのは、40歳になる前に、「もし勤めている会社を辞めたらどうなるか」と考えたのがきっかけです。日本の雇用環境では、40歳を過ぎると再就職がとても難しいし、何かスキルを身に付けておきたいと考えました。将来何か役に立つかもしれないと思い、スペイン語や中国語を学習していた時期もあったのですが、お金を稼げるレベルまでになるのは並大抵ではないので、日英翻訳者を目指して勉強を始めることにしました。フェロー・アカデミーでは、通信講座の「実務翻訳<ベータ>」を最初に受講し、今まで学校で習ってきたこととは違う実務翻訳の基礎を学ぶことができました。テキストは今でも時折、参照しています。
翻訳者になることを決意したときに、日英をメインにすることにした理由は「英日翻訳者を目指す人が多いから」です。英日の翻訳者として翻訳会社などに登録している方はたくさんいるだろうけど、実際に仕事を依頼されている人はほんの一握りだろうな、またターゲット言語が日本語なので、上手・下手がすぐわかるし、相当実力をつけないと競争で勝ちあがれないのでは、と消去法で考えました。以前、翻訳会社にコーディネーターとして勤務していた際、海外の翻訳者とのメールを英語でやり取りしていた経験があったというのも判断材料の一つです。専門分野については、日英を主に翻訳することを決めたときに、やわらかめの文章や一般的な内容の文章だとネイティブの日英翻訳者のほうが表現の幅が広いし、上手だろうと思って、それ以外にしようと考えていました。技術関係の英語はある程度スタイルや型があるので、自然な英語表現という点でネイティブとさほど差が出ないと考えました。
今後は、需要と供給のバランスで優位に立てるように、頑張って実力を向上させていきたいと思っています。求められる翻訳のレベルが高くなればなるほど、供給できる人が少なくなりますが、需要は相対的に大きくなるので、需給バランスで優位に立てるよう、レベルを上げていくことが目標です。

これから実務翻訳者を目指す方は、最初に基本をしっかりと習得することが大事だと思います。私の場合は、「実務翻訳<ベータ>」で基本を学びました。最初に基本的なことをしっかり習得すると、結果的に早く大きく伸びると思います。
 
増田さん、ありがとうございました。
ただ翻訳者を目指すのではなく、目的・計画・戦略をもって学習することの重要性を感じました。今まさに分野や目指す方向性に迷っている、という方は、ぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。
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