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実務とれたて直送便
一年の総計はアニュアルレポートにあり!<後編>
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寒い季節、みなさん風邪などひいていませんか? 「実とれ」愛読者のみなさんは普段からさんざんお粗末なギャグを聞かされ、サムさへの免疫力がイヤというほどついているのできっと乗り越えられるでしょう。筆者のはっしゅも「○○は風邪ひかない」という言葉があるので大丈夫なはず!
 
さて、今回の実とれは何やる? そう、前号に続いてアニュアルレポートをやります! 企業の経営状態や事業内容が毎年アニューアル、じゃなくてリニューアルされる文書ということは前号で詳しくわかりましたね。ではここで実とれのネタの経営状態が現在と昨年の同月でどのように推移しているのか、連結決算概要を見てみましょう。
 

 
この不景気のさなかにあって横ばいとは、まずまずの経営状態ですね。みなさん、これからも安心して投資を続けてください。
 
ではここからはマジメに、前回ご登場の翻訳者・藤原康史さんから引き続きアニュアルレポートの翻訳について教えを請いましょう!
アニュアルレポート翻訳の真髄は業界研究と専門知識にあり!

前回の解説で、アニュアルレポートは企業が一年度の業績や財務内容を報告するための書類で、その内容は大きく分けて事業概要と財務諸表から成る、ということがわかりました。今回はこうしたレポートの翻訳に興味が沸いた方のために、翻訳者にどんなことが必要なのかを掘り下げていきましょう。経験者の藤原さんは、実際に翻訳の際どんなことを心がけてきたのでしょうか?
 

まず、当然のことながら事業概要の部分については、その企業全体についてある程度知っていなくてはなりません。私がお仕事でアニュアルレポートの翻訳を依頼されたときも、まずはその企業のホームページを開いて、その企業の概要について一通り頭にいれてから作業にかかるようにしています。
 
さらに、自分にとってなじみのない業界であれば、その業界が近年どのような状況にあるかも調べておく必要があります。事業概況について説明する際には、業界全体の動きを引き合いに出しながら解説されることが多いからです。例えば金融機関の場合であれば、この数年は米国に端を発した金融危機の影響を多かれ少なかれ受けています。アニュアルレポートの説明においても、「金融危機により保有資産の評価額が目減りしたため、自己資本比率が低下した。」といように記述されるわけですので、これらの概要について把握した上で英語に置き換えていく必要があります。日頃からインターネットのニュースサイトなどに目を配り、最近の動きを把握しておく必要があるでしょう。

ある企業の事業概要を訳すうえで、その企業や業界に関する知識は重要な背景知識になるんですね。また日頃の業界の動向を常に追いかけて知識をアップデートする習慣づけも欠かせないようです。それでは、一方の財務諸表はというと?
 

財務諸表についてはあまり外注されることはないかもしれませんが、もしその翻訳が必要になった場合にはかなりの専門知識が要求されることもあります。こうしたお仕事を請ける可能性があるのであれば、最低限、財務諸表がどういうものであるか一通り把握しておく必要があるでしょう。私の場合は金融機関に勤めておりましたし証券アナリストの資格も持っていたので、基本的な会計の知識については持ち合わせていました。ただ、会計に関する法令は毎年のように変わっています。こうした変更点については、企業会計基準委員会のサイトで確認したり、他の金融機関でどのような対応をしているかを確認しながら作業を進めていました。また、財務諸表については最終的には監査法人の法定監査を受けなくてはなりません。財務諸表の英訳にあたっては、公認会計士の意見を聞きながら作成しました。

財務諸表の主なものとしては「貸借対照表(BS)」「損益計算書(PL)」「キャッシュフロー計算書(CF)」の3つがあり、投資家などはこれらの表から企業がどんな経営状態にあるかを読みとっているのです。まず基本的な読み方を押さえるなら、会計士などが分かりやすい解説を書いた本が出ているので、書店でどれか一冊手に取ってみては?
 

翻訳者は企業と投資家・債権者を結ぶコミュニケーションの仲介役

藤原さんによると、ほかにもアニュアルレポートの翻訳のうえで心がけるべき点があるようです。
 

どちらの部分を翻訳する際にも言えるのが、とにかく限られた時間の中で自分で徹底的に調べ、後は見切りをつけてクライアントの企業や専門家に相談することが重要だということでしょう。アニュアルレポートの内容は専門用語のオンパレードであることに加えて、各業界、企業によってこの用語にはこの訳を当てる、ということが決まっているケースもあります。辞書の訳語を鵜呑みにすることなく、疑問がある点についてはしっかり確認する姿勢が必要になってきます。
 
また、先にも述べましたように、アニュアルレポートは投資家や債権者に自社の業績や財務内容について適切に把握してもらうことが大きな目的となっています。翻訳者としてはこのことを念頭において、専門的な言葉を用いつつも読みやすい表現に置き換えていく必要があります。そのためには、英語・日本語を問わず色々な企業のレポートに目を通しておくと役立つのではないでしょうか。
 
アニュアルレポートは単なるPRの冊子のように見えますが、それは企業と投資家等を結ぶ重要なコミュニケーションツールでもあります。私たち翻訳者はその仲介役として、企業の思いを言葉に乗せて、読み手がその企業についてより良くわかるためのお手伝いをしていかなくてはならないと思います。

専門的な記述を大事にしながら、読み手となる人たちがどんな情報を求めているか、その情報をなぜ欲しているのかを意識して訳す――。翻訳者は企業が発した「想い」を忠実に伝えることで、陰ながら投資活動や企業経営を円滑に進めるお手伝いをしているんですね。
 


■LINK:今回のテーマに関連するバックナンバーはこちら
 
file.04 CSR:翻訳捜査班!
(アニュアルレポートで報告されることも多い「企業の社会的責任」とは?)

 
file.07 ココロを動かせ! マーケティング翻訳
(企業ではマーケティングに関する多種多様な翻訳も発生!)
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