
まずは今回の写真展の企画に携わった日本経済新聞社の山田康昭さんに、写真展開催への思いと英訳展示を行うことにしたいきさつを伺いました。
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●日本経済新聞社写真デザインセンター長・山田康昭さんのお話
震災発生からわずか10日で報道写真ギャラリー「記憶 忘れてはいけないこと」の開催を決めました。現地に派遣したカメラマンから送られてくる膨大な写真を前にして、新聞報道だけではこの災害を十分に伝えられないと感じたのです。被災地のために何かしたいという気持ちもありました。
その思いを込めた取材メモは当初、和文だけでした。英訳を頼んだのは原発に関心が移りがちな外国人の目をもっと震災全体に向けたかったからです。英訳を加えたところ、国際機関や大使館からの問い合わせが増えました。また、外国人の知人に見せたいといって、英文のチラシを何十部も持って行かれる来場者の方もいました。ギャラリーが一気に国際化した瞬間でした。
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このように震災への国際的な関心を高めることになった英訳文。では翻訳者は一体どのようなプロセスで仕事にあたったのでしょうか。今回の英訳を引き受けた当校講師・内藤ゆかり先生にお話しいただきました。
●当校カレッジコース「日英翻訳」担当講師・内藤ゆかり先生のお話

納期が非常にタイトだったため、原稿を受け取ってすぐに作業を始めました。帰宅途中の電車の車内で、1枚目のラフをあげました。
翻訳でいつも心がけていることは、 原文を書いた人になりきること。(英訳をする際は、ふだんから紙上で展開することが多く、今回もまずはプリントアウトした原稿の上に思いつく英文を書きなぐり、世界観を広げて行きました。)原文の世界観を掴むというプロセスを怠ると自分の中で消化不良を起こし、よい訳文が出てきません。今回の仕事では、写真記者になったつもりで作業を進めました。最初は被災地の様子に涙が止まりませんでしたが、途中から 熱いハートと冷静さを併せ持つ記者の気持ちになりきりました。
納期が厳しかったので、急遽(フェロー修了生の)津田さんにお手伝いをお願いし、推敲を繰り返した後、すぐにネイティブチェッカーにチェックをお願いしました。チェック原稿をまた差し戻し、再度改稿して最終稿をアップしました。丸3日間ハラハラドキドキの連続でした。
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また、かつて内藤先生に英訳を学び、今回の仕事に協力することになった修了生・津田美貴さんは、英訳の感想をこのように語ってくれました。
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●当校修了生・津田美貴さんのお話
外国の方が日本の災害支援のために参照する資料だと伺ったので、できるだけ丁寧に翻訳するように、また原文に込められた筆者の思いを英訳にも込められるように心がけました。普段何気なく使っている表現でも日本人同士ではわかっても外国の方にはわからないような表現が多く、英訳するのに苦労しました。
震災から1ヶ月以上経って津波や地震の被害よりも進行中の原発事故に注目が集まっていた時期で、誤った原発事故情報や震災被害情報が海外に流れていたので、完成した英文を外国の方に読んでいただき少しでも正しい情報を知ってもらい、また被災した東北の人々の逞しさや強さなどを知ってもらえたらいいなと思いました。
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被災地の状況、そしてそこに生きる人々の姿を多くの外国人に伝えたい……。それぞれの強い思いが結実した英訳展示は、写真同様、間違いなく見た人の記憶に残るものとなったことでしょう。なお写真展の内容は、今後も他の会場で展示されるほか、写真集の発売も予定されています。

※取材メモの一つ、「おにぎり、食べれ」の原文(日本文)とその英訳文。日本語を母語としない人々に日本人の文化、生活、感情などをダイレクトに届けることができるのは翻訳者の大きな意義といえる。
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