前回の解説で、アニュアルレポートは企業が一年度の業績や財務内容を報告するための書類で、その内容は大きく分けて事業概要と財務諸表から成る、ということがわかりました。今回はこうしたレポートの翻訳に興味が沸いた方のために、翻訳者にどんなことが必要なのかを掘り下げていきましょう。経験者の藤原さんは、実際に翻訳の際どんなことを心がけてきたのでしょうか?
まず、当然のことながら事業概要の部分については、その企業全体についてある程度知っていなくてはなりません。私がお仕事でアニュアルレポートの翻訳を依頼されたときも、まずはその企業のホームページを開いて、その企業の概要について一通り頭にいれてから作業にかかるようにしています。
さらに、自分にとってなじみのない業界であれば、その業界が近年どのような状況にあるかも調べておく必要があります。事業概況について説明する際には、業界全体の動きを引き合いに出しながら解説されることが多いからです。例えば金融機関の場合であれば、この数年は米国に端を発した金融危機の影響を多かれ少なかれ受けています。アニュアルレポートの説明においても、「金融危機により保有資産の評価額が目減りしたため、自己資本比率が低下した。」といように記述されるわけですので、これらの概要について把握した上で英語に置き換えていく必要があります。日頃からインターネットのニュースサイトなどに目を配り、最近の動きを把握しておく必要があるでしょう。 |
ある企業の事業概要を訳すうえで、その企業や業界に関する知識は重要な背景知識になるんですね。また日頃の業界の動向を常に追いかけて知識をアップデートする習慣づけも欠かせないようです。それでは、一方の財務諸表はというと?
| 財務諸表についてはあまり外注されることはないかもしれませんが、もしその翻訳が必要になった場合にはかなりの専門知識が要求されることもあります。こうしたお仕事を請ける可能性があるのであれば、最低限、財務諸表がどういうものであるか一通り把握しておく必要があるでしょう。私の場合は金融機関に勤めておりましたし証券アナリストの資格も持っていたので、基本的な会計の知識については持ち合わせていました。ただ、会計に関する法令は毎年のように変わっています。こうした変更点については、企業会計基準委員会のサイトで確認したり、他の金融機関でどのような対応をしているかを確認しながら作業を進めていました。また、財務諸表については最終的には監査法人の法定監査を受けなくてはなりません。財務諸表の英訳にあたっては、公認会計士の意見を聞きながら作成しました。 |
財務諸表の主なものとしては 「貸借対照表(BS)」「損益計算書(PL)」「キャッシュフロー計算書(CF)」の3つがあり、投資家などはこれらの表から企業がどんな経営状態にあるかを読みとっているのです。まず基本的な読み方を押さえるなら、会計士などが分かりやすい解説を書いた本が出ているので、書店でどれか一冊手に取ってみては? |