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連載50回を過ぎてますます勢いにのる「ホンヤクこぼれ話」。51回目の今回は超話題映画にちなんだ翻訳作品をお届けします。
あの不朽のアクション・アドベンチャーシリーズの、実に19年ぶりの最新作『インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国』がいよいよこの6月、日本のスクリーンにお目見えします! これにちなんで早川書房から旧3作のノベライズが復刊され、出版界でもにわかに「インディ」ブームが再燃。そして劇場公開を目前にひかえ、最新作のノベライズも新たに翻訳出版されました。
今回はその翻訳を手がけた当校受講生・漆原敦子さんに、訳書のことはもちろん、ご自身の受講についてなど、気になるお話をうかがってみましょう。
1957年のペルーやマヤ遺跡などを舞台に、秘宝クリスタル・スカルをめぐって冒険家インディ・ジョーンズと旧ソ連特殊部隊との攻防戦が繰り広げられるシリーズ最新作。映画の製作年と同じく、時代設定も前作『最後の聖戦』から19年後。より円熟味を増したインディの新たな魅力に注目だ。
『インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国』
ジェイムズ・ローリンズ著/漆原敦子訳
早川書房/800円(税込)
2008年5月23日より発売中
●訳者の漆原敦子さんに聞きました
まず漆原さんが翻訳の学習を始めたきっかけから教えてください。
漆原さん:
もともと本の虫で、特にアガサ・クリスティやジョン・グリシャムなどの推理小説が好きでした。以前メキシコに滞在する機会があって、そのときに持っていた本をすっかり読みつくしてしまいアメリカ人の知り合いから英語の本を借りて読んだのが、翻訳をしてみたいと思ったきっかけです。英語に関わりたいというよりは、本に関わりたいという気持ちが強かったですね。
長らく真崎義博先生のゼミクラスで学習を続けている漆原さんですが、
そもそも漆原さんのクラスを選んだのはなぜですか?
漆原さん:
フェローの講座ガイドを読んでいたら、先生が「日本語のリズム」を重視しているという一文があったので興味を持ちました。最初の授業ではヘッドフォンをつけて教室にやってきた先生のユニークさがとても印象的でしたが(笑)、先生の訳文作りのスタイルから学ぶことは今でもたくさんあります。
先生が日頃おっしゃっていることの一つに「映画監督になれ」という言葉があります。つまり原文を読んだら、情景を頭に浮かべて登場人物を動かしたり喋らせたりする。それを日本語で表現すると自然に訳文ができる、ということです。これは、私が先生から学んだことの中で一番印象に残っていますね。
ゼミの中でどのように仕事のきっかけや必要となるスキルを得ていったのでしょうか?
漆原さん:
何年かゼミに在籍するうちに、先生の依頼でリーディングや下訳を何冊か手がけるようになりました。その作業を通じて、単に誤訳でない文章というだけでなく、いかに読ませる文章を作るかという訓練がずいぶんできました。また先生から出版社の編集の方に紹介していただき、短編の翻訳を経て、長編の仕事へとつながっていきました。
またクラスでは先生と受講生がメーリングリストを作って情報交換をしています。先生が「知の互助会」とおっしゃるとおり、みんなで自分の得意分野をアピールしておき、わからないことがあったら詳しい人に聞けるので、大きな財産になっています。
それではこのあたりで、先日刊行された『インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国』の読みどころをお聞かせください。
漆原さん:
とにかくテンポのよいストーリー運びで、秘宝を狙うロシア人だけでなく自然現象や動物など、いろんな危機が次から次へとインディに迫り来る、そんな「一難去ってまた一難」の面白さを堪能できます。それに加えてインディの人間味や、彼を取り巻く人々との関係も丹念に描かれていて、読みごたえがありますね。
翻訳にあたって苦労した点、気をつけた点はありますか?
漆原さん:
インディはそもそも考古学者なので、ところどころで言語学や歴史、地理に関する話が出てきます。言語も英語以外にスペイン語、ロシア語、現在使われていないマヤ語までが登場し、またストーリーのベースとなっている史実も多いので、調べ物が欠かせませんでした。それにしてもネットの便利さは身にしみて感じましたね。例えば自分が行ったことのない土地も、Google Earthなどで画像を見ればその雰囲気がひと目でわかるんですから。
訳文については、原文のテンポのよさを活かすため、なるべくモタモタさせないように心がけました。それから苦労といえば、量のわりに翻訳期間が短かったのが大変でしたね。原文を本でなくWordファイルでもらったので分量の見当がつかず、訳したらせいぜい原稿用紙でいうと500枚分くらいだろうと踏んでとりかかったんです。締切は2ヵ月後。それくらいの期間で500枚なら妥当かなと思いましたが、だいぶ量を見誤っていて、結局750枚分くらいになりました(笑)。
短編に比べると長編の翻訳の醍醐味はどういうところにありますか?
漆原さん:
量が多いのは大変ですが(笑)、短編は起承転結がすっきりまとまっているのに対し、長編は伏線となる話や登場人物の微細な心理描写などが加わるので、読みどころが多いですよね。あと長編に向き合っていると主人公への思い入れが強くなります。今作を訳しているときも、勝手ながら自分がインディとお友達になったような気がしました。
漆原敦子さんのプロフィール:
フェロー・アカデミーで真崎義博先生の単科・文芸コース「エンタテインメントゼミ」を受講中。『ベスト・アメリカン・ミステリ』シリーズの短編の翻訳を手がけるほか、単独の訳書に『インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国』『さよならを言うことは』(早川書房)がある。
漆原さん、ありがとうございました。
今回は師匠である真崎先生も交えてインタビューを行ったのですが、漆原さんの原文解釈や文章表現から垣間見える文学的センスには、先生もしきりに太鼓判を押していました。ちなみにゼミでは先生から「おっかさん」の愛称で呼ばれている漆原さん。どうやら翻訳の実力のみならず、人生経験にも称賛が送られているようです(笑)。
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