数々の雑誌や単行本でミステリランキングが発表される年の瀬は、世間のミステリ熱が一年で最も高まる時期といえるでしょう。
そんな時期におすすめしたいのが、今回紹介する『名探偵モンク モンク、消防署に行く』。そう、あの人気テレビドラマ『名探偵モンク』から生まれた探偵小説、しかも小説ならではのオリジナルストーリーが展開します。海外ドラマファンにはおなじみのモンクの活躍が、活字でもそのまま味わえちゃいますよ!
本書が初の単独訳書となる当校受講生の高橋知子さんに、いろんなエピソードをうかがいました。
『名探偵モンク モンク、消防署に行く』
リー・ゴールドバーグ著
高橋知子訳
ソフトバンククリエイティブ/756円(税込)
2007年11月19日より発売中
 訳者の高橋知子さんに聞きました
まず、本書を訳すことになった経緯を教えてください。
高橋さん:以前、田口俊樹先生の紹介で共訳書の仕事をしたのですが、そのときにお世話になった編集者からリーディングを経ていただいた仕事です。
本書の内容と、主人公モンクのキャラクターの特徴や魅力を教えてください。
高橋さん:モンクは元刑事なのですが、強迫観念症、潔癖症、閉所恐怖症など、これでもかというほど患っている神経症が高じて退職を余儀なくされました。ですが、殺人事件を解く才能はずば抜けていて、コンサルタントという立場で警察に貢献しています。神経症と天才的な推理の才のせいで、常人には理解不可能な行動を取ったり、思考をめぐらせたりして周囲の者を振りまわすこともありますが、どこか滑稽だったり愛らしかったり憎めない人物です。

このシリーズはモンクのアシスタント、ナタリー(ドラマでは二代目のアシスタント)の一人称で語られますが、本書ではナタリーの娘ジュリーの依頼で、消防署の犬が殺された事件を手がけます。また、その事件とほぼ時を同じくして起きた老女殺害事件で警察の捜査にも協力します。一見無関係のように思われたこのふたつの事件に意外な接点があり……というのがミステリとしての読みどころです。

ドラマをご覧になったことのある方はおわかりだと思いますが、「名探偵モンク」はシリアスな探偵ものではなく、コミカルな要素がふんだんに盛り込まれています(モンクは大まじめですけれど)。本書にもユーモラスなシーンが多く登場しますので、そのあたりも楽しんでいただけると嬉しいです。
TVドラマのオリジナル小説を訳すにあたって、ドラマ版のことは意識されましたか?
高橋さん:大いにしました。モンクは個性が強烈ですし、脇役陣もそれなりに個性的です。ドラマを見ている人が持つモンクたちのイメージとズレが生じないように訳したいというのがまずありました。ですので、ドラマを見ながらモンクをはじめ、主要登場人物の口調やたがいにどのように呼び合っているかなどをチェックしましたし、訳すときにモンクやナタリーを思い浮かべて、頭の中で映像化したりしていました。
これまでにノンフィクションの共訳や雑誌での短編の翻訳作品をお手がけですが、今回一人で長編を訳すという作業についてはどんな感想をもたれましたか?
高橋さん:単独の訳書を出せるようになりたい、それもできれば好きなミステリでと思っていましたので、仕事が決まったときは嬉しかったです。これまで、田口先生やほかの翻訳家の下訳で長編を訳したことがあるのですが、そのときにいただいた注意やアドヴァイスを念頭に置いて、同じミスをしないようにとも思いました。
その他、本書の翻訳で工夫された点、苦労された点があったら教えてください。
高橋さん:モンクの口調ですね。ドラマでモンクはとても丁寧な話し方をしますが、映像を見ながら台詞を耳で聞くのと活字で読むのとでは印象がちがうのではないか、敬体ばかりだとうっとうしいのではないかと最初ちょっと迷いました。でも結局はドラマに倣いました。それがモンクの特徴ですから。
現在田口先生の特別ゼミを受講中ですが、先生の指導で印象に残っていること、また翻訳の仕事に特に役立っていることなどを教えてください。
高橋さん:田口先生のおっしゃることはすべて貴重なアドヴァイスですし、雑談の中で出た話にはっとさせられることもよくあります。特にと言われてあげるとすれば、「英語の読解力の大切さ」です。ゼミに入れていただいた当初は、自分の原文に対する理解の甘さに気づかず訳文をいじってなんとか形をつけようとすることも多かったのですが、先生の指導を受けるうちに、「翻訳と言えば日本語力」みたいに思っている自分に気づかされました。もちろん日本語力/表現力は大切ですが、まず最初にありきの英語の読解力を飛ばして日本語のほうに意識が向きすぎていたんです。今は、「原文をじっくり読んで、何を言わんとしているのかをよく考えること。状況をしっかり把握すること」と常に自分に言い聞かせています。
原書のほうはすでにシリーズ化されていますが、この先の邦訳の刊行予定は? またほかに出版がひかえている翻訳作品があったら教えてください。
高橋さん:シリーズ3作目にあたる『モンクと警官ストライキ(Mr. Monk and the Blue Flu)』が3月に出版されます。ほかには、刊行時期はまだ具体的に決まっていないのですが、アメリカの新人作家のクライム・ノヴェルと、共訳書でオードリー・ヘップバーンの伝記が出る予定です。
普段はどんな作品を読みますか?
高橋さん:ハードボイルド、クライム・ノヴェル、サスペンスが多いです。作家で言うと、ローレンス・ブロック、ボストン・テラン、ジム・トンプスン、ジェフリー・ディーヴァー、トマス・H・クックがお気に入りです。そのほか、ハイアセンやレナードのようなコミカルなミステリも好きです。
最後に、現在文芸翻訳家を目指して学習中の方にメッセージをお願いします。
高橋さん:和書も洋書もたくさん読んで、こつこつ訳して、好きならあきらめず、おたがいがんばりましょう。
●高橋知子さんのプロフィール:
甲南大学文学部英文学科卒。2001年から当校講師・田口俊樹氏に師事し、現在も特別ゼミを受講中。これまでの訳書に『E=mc2 世界一有名な方程式の「伝記」』(共訳、早川書房)『22世紀から回顧する21世紀全史』(共訳、アーティストハウス)『バイオテロ! 細菌兵器の恐怖が迫る』(共訳、朝日新聞社)がある。また『ミステリマガジン』(早川書房)誌上での短編の翻訳も多数。
コメントありがとうございました。Q3で高橋さんがお答えのとおり、テレビドラマのキャラクターが小説化された場合は、小説にふさわしい表現力はもちろんのこと、元来のイメージを意識した台詞づくりなども大切になってきますね。そんな高橋さんの心配りのおかげで、本書はドラマファンにとってもモンクのつけようがない仕上がりになっています。ぜひご一読ください。
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