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2017年2月24日カテゴリ:インタビュー

講師インタビュー

「出版翻訳」コース 講師
加賀山 卓朗先生

「正確さ」の先にある「読みやすさ」へ
出版翻訳では「リズム」が大事です


私は通学講座の「出版基礎」「フィクション」、通信講座マスターコースの「ミステリー」を担当しています。そして2017年度からは総合翻訳科カレッジコースで「翻訳入門」も担当します。「フィクション」では主にミステリーの短篇や長篇の一部を使い、半年間で4、5種類の原書に触れられるようにしています。「出版基礎」では、ルポルタージュやポピュラーサイエンスなどのノンフィクションも取り上げます。


授業では当番制で訳文を提出していただき、全員で討議します。担当者には自分の訳文を音読してもらいますが、それは日本語のリズムを体感してほしいからです。声に出せば、「ひと息で読みきれないからここに読点を入れよう」などと気づくことができる。リズムというものは、読者を惹きつける上で不可欠なものです。

原文を正しく解釈し、誤訳をなくすことはもちろん大切です。しかしより重要なのは、「誤訳のない日本語」から「読みやすい日本語」へ磨き上げること。その点も、しっかり学び取ってほしいと思っています。


上達の秘訣は師匠をまねること

私はミステリーのほか、別名義(依田卓巳)でノンフィクションも訳しています。ノンフィクションを読む醍醐味は、新たな知識を得られるところ。そのため、フィクションより「さらに意訳」し、場合によっては文章や段落を入れ替え、理解しやすいよう工夫する必要があります。

実務分野とフィクションについて言えば、当然「うまい/下手」の意味あいは違ってきます。実務翻訳は、正確に内容を伝えなければ話になりません。それに対してフィクションは、まず「読み心地」がよくなければならない。つまり、文章に「リズム」が必要です。その人に「リズム感」が備わっているかどうかは、子供の頃の読書量に影響されると思いますが、文章修行でカバーできる部分もたくさんあるはずです。


上達の秘訣はただひとつ、師匠を決めて「まね」をすることです。好きな翻訳家の訳書と原書を用意し、同じ訳文になるまで何度も訳しては見直す。これを3、4冊やれば必ず上達します。

出版翻訳には「人の心を動かせる」という醍醐味があります。自分の文章を読んだ遠くにいる誰かが、笑ったり、怖がったり、喜んだり、悲しんだりするのです。そんな魔法のような仕事を絶やさないためにも、意欲のある方にはぜひ出版翻訳を学んでほしいと思います。


『通訳・翻訳ジャーナル SPRING 2017』(イカロス出版発行)より転載
(Text 金田修宏 Photo 今野光)


◆加賀山卓朗先生のプロフィール◆
出版翻訳家。フェロー・アカデミーで田口俊樹氏に師事し、翻訳家に。『過ぎ去りし世界』『レッド・ドラゴン』『リーマン・ショック・コンフィデンシャル』(以上、早川書房)、『ミッション・ソング』(光文社)、『荒ぶる血』(文春文庫)など訳書多数。


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