5〜6年前、勤務先の百貨店の社員食堂で食事をしていた時だったと思います。急に「死ぬまで働きたい」と思ったんです(笑)。定年退職をして、金銭的にも余裕があり、周りから見れば悠々自適な老後をおくっている方々でさえ、その様子を見ていると必ずしも楽しい日々を過ごしているわけではない、ということがだんだんわかってきた時期でもあったんですね。仕事をしているときは、今まで忙しくてできなかったことをあれもしようこれもしよう、と意気込んでいたにも関わらず、趣味だけでは老後はもたない、と突然実感したんです。
早期退職を選んだのは、60歳になってから辞めたのでは新しい仕事を始めるのは無理だろうと思ったからです。翻訳家ではありませんが、定年後に別な仕事を始めて、そこそこ活躍はしているけどお金を稼ぐところまではいたっていないという方の話も新聞に載っていましたし。やっぱり遊びやボランティアではなく、お金をもらって仕事をしないと、自分にプレッシャーがかかりませんからね。ある程度緊張感のある生活をしていて、そのプレッシャーからふっと解放されたときにクラシック音楽を聴くのが、僕にとって至福の時なんです。
それで、いざ会社を辞めて自分に何ができるかを考えましたが、すぐにできることが何も思いつきませんでした。多少英語には自信がありましたが、実力を証明するものがなかったので、とりあえずTOEICを受けたところ思いのほか高得点が取れて、調子に乗っちゃったんです(笑)。それで英語力を活かせる仕事、そしてある程度歳を取っても続けられる仕事として「翻訳」を思いつき、通信講座を受講することにしました。仕事が終わって家に帰ると眠くなるので、外で軽く食事をして、喫茶店で2時間くらい課題に取り組むという生活を一年半ほど続けました。自分にしては珍しく続けられたので、これなら実力はともかく嫌にはならないかなと。
そこへちょうど早期退職の募集があり、社内報を見た途端にこれは「天の声」だと思い、1秒もかからずに決断しました。