穴水由紀子さん
東京女子大学文理学部社会学科卒。英国バース大学通訳翻訳修士課程修了。2008年4月より2013 年3月までフェロー・アカデミー通学講座「ノンフィクション」を受講。下訳や共訳を経て、2013年7月に単独訳となる『リーダーをめざすあなたへ 成功した女性の8つの戦略』(一灯舎)を上梓。
東京女子大学文理学部社会学科卒。英国バース大学通訳翻訳修士課程修了。2008年4月より2013 年3月までフェロー・アカデミー通学講座「ノンフィクション」を受講。下訳や共訳を経て、2013年7月に単独訳となる『リーダーをめざすあなたへ 成功した女性の8つの戦略』(一灯舎)を上梓。
留学後、現地の企業で通訳翻訳の仕事に携わっていた穴水さんは、帰国後、家庭の事情から在宅翻訳者に転向した。ビジネス文書や資料を訳すことにやりがいを感じてはいたが、一方で「本という形に残るものを翻訳したい」という思いも。そんなとき雑誌でフェロー・アカデミーの学校案内を目にし、自身にとって「夢のまた夢」だった出版翻訳の講座があることを知った。 「憧れはあっても何をすればいいかがわからなかった。ようやく“入り口”を見つけた気分でした」
「小説より事実が好き」と自己分析し、「ポピュラーサイエンス」の講座を受講。 「斉藤先生の訳文と原文を読み比べると、まるで2枚の同じ絵を重ね合わせたかのように言っていることがピタリと一致します。どこにもいい加減なところがなく、いつも圧倒されていました。私の訳文へのご指摘も納得できるものばかりでしたね」
授業では毎回、講師と担当者3名による4つの訳文をもとに深い議論が行われた。理系出身者もいれば科学系以外の出版翻訳を手がける人もいて、受講生のバックグラウンドは多種多様。そんなクラスメートの訳文や考え方も「とても参考になった」そうだ。
長年、同じクラスに通い続けた理由は、「先生や先輩受講生の背中を追いかけていれば、いつか訳書が出せると思えた」から。事実、通い始めて1年も経たないうちに講師から下訳を依頼されるようになった。
「6冊ほど関わらせていただき、最高のOJTになりました。フェローに通っていなければ、絶対に経験できなかったと思います」 受講4年目には、クラスメートに声をかけられて世界銀行が発行する年鑑を共訳。その仕事ぶりが編集者に認められて昨年、初の単独訳となる『リーダーをめざすあなたへ』を上梓した。「授業で習得した〈リサーチをし、著者の言いたいことを丁寧に訳す〉と いう姿勢を貫くことができた」と満足げだ。
現在は環境問題がテーマの3冊目を翻訳中。「新しい視点を得られるところがノンフィクション翻訳の醍醐味」と語るその言葉に、出版翻訳家になれた誇りと喜びがにじんでいる。
『通訳翻訳ジャーナル 2014 SPRING』(イカロス出版発行)より転載
(Text 金田修宏 Photo 小久保陽一)