江上泉さん

出版

1972年生まれ。早稲田大学卒業。8年間の中高英語教員を経て、出産を機に翻訳の道へ。訳書に『デヴィッド・ボウイ――気高きアーティストの軌跡』『作曲家たちの風景』(ヤマハミュージックメディア)、『屋久島』(共訳、青菁社)。現在9歳、7歳、4歳の3人の子どもたちとピアノを取り合う毎日。

受講生インタビュー

子どもがいたから実現できた
努力の継続で出版翻訳家に!

多忙な子育てをこなしつつ、翻訳の勉強を始め、仕事獲得にまで至る人は多くない。ましてや出版翻訳の世界は狭き門。江上泉さんは現在、3人の子どもを育てながら、翻訳会社にチェッカーとしてパート勤務する傍ら、今年2月に『作曲家たちの風景』で単訳デビューした。翻訳家を志したきっかけは、妊娠だ。

仕事でもプライベートでもとにかく英語に接する生活に

「当時は英語教員をしていましたが、深夜帰宅の毎日で、夫も激務。子育ては無理だと思い、在宅でできる仕事として思い浮かんだのが翻訳でした」
目標を出版翻訳家と決めたが、長期戦を覚悟。2007年に教員を退職し、出産。子どもが1歳を迎え保育園に通うようになると、英語漬け生活を始めた。まず、派遣社員として外資系IT関連企業に勤務。「本社がアメリカ、工場がアジアにある会社で、社員間のやり取りはすべて英語。メール、工場監査のマニュアルなどの英文作成を担当していました」
通勤電車ではペーパーバックを読書。チックリットというジャンルが好きで、往復1時間で月2冊は読んだ。駅までの道のりは『聞いて覚える英単語 キクタン』のCDやCNNなどのリスニングを毎日実行。2人目を出産後も復職し、翻訳のコンテストやオーディションにも片っ端から挑戦。そんな矢先、初仕事は意外なところからやって来た。

「趣味でSNS『mixi』にペーパーバックのレビューを英文で投稿していたら、ある女性が目を留めてくださいました。『カメラマンの夫が写真集を出すので、その英訳をお願いしたい』と」
翻訳家を志してから4年後の11年3月、写真集『屋久島』(青菁社)は出版された。しかし、“英訳”で“共訳”でもあったため、江上さんは“英日の単訳”デビューを目指して努力を続ける。

朝型のライフスタイルに切り替えて効率アップ

ところが、3人目の子どもは保育園入園がかなわず、12年に派遣元を退職。独学にも限界を感じていたので、今がチャンスと託児サービスのある翻訳学校フェロー・アカデミーに通い始めた。そこで講師から「子育て中は朝型の学習にすべし」と助言された。
「朝型スタイルは会社勤めしている今でも実践しています。一日仕事をして帰宅し、一息つく間もなく子どもと向き合っていたら、夜はクタクタで頭も働きません。開き直って21時半には子どもと寝てしまい、夜中3時に起床。子どもが熟睡している時間帯なので、翻訳に集中できるゴールデンタイムです」
約2年間スクールで勉強した後、翻訳会社へのパート勤務を開始。ある日、株式会社トランネット主催の翻訳オーディションをのぞくと、課題は、現役ピアニストへのインタビューを盛り込んだ書籍、『作曲家たちの風景』だった。
「ピアノ歴が長かったので、『これは私が訳す本だ!』と運命を感じました」
熱意は訳文にも反映され、見事、訳者に選ばれた。納期は3カ月弱。
「すきま時間を余さず使いました。子どものおもらしなど、想定外のハプニングに備えて前倒しで行動。何も起こらなければ空き時間ができます。刊行されたときは、感無量でしたね。今は、来年1月の刊行に向けて次の音楽関連書籍の翻訳に取り組んでいます」

子育てしながらの翻訳仕事はハンデ?
時間がないのは事実だが生活リズムはバッチリ!

子育てと翻訳の両立で大変なのは、「子どもの生活を最優先にしなければならないこと」です。自分ひとりなら一食くらい抜いてもいいやと思うところを、子どものためにバランスの良いご飯を毎日きちんと作らなければなりません。自分のペースで動けないもどかしさは感じますが、過酷なスケジュールの中でも規則正しいリズムをキープでき、きちんとした食事を取ることで健康管理にもつながります。出版翻訳のように長期間、不規則な生活が続きがちなときほど、子ども優先が結果的に翻訳のワークスタイルにも功を奏しています。

『通訳翻訳ジャーナル AUTUMN 2016』(イカロス出版発行)より転載

江上泉さんが受講した講座(通学)

初級出版基礎(1)

出版翻訳
期間
2019/10/15~2020/3/10(火曜・毎週×18回)
  • 出版翻訳

上級柿沼ゼミ

出版翻訳
期間
2019/10/4~2020/2/21(金曜・毎週×18回)
  • 出版翻訳

江上泉さんが受講した講座(通信)

マスターコース

期間
6カ月