藤原由希さん
大学時代に1年間、中国・四川大学に語学留学。大学卒業後、旅行会社に勤務。副業で中国語の映像翻訳関連の仕事を始め、2008年、中国語と英語のフリーランス翻訳者に。主な作品にドラマ『鹿鼎記(ろくていき)』『雪山飛狐(せつざんひこ)』(中国語・字幕)、映画DVD『少林寺英雄伝』(中国語・字幕)『X-GAMER』(英語・吹替)など。
大学時代に1年間、中国・四川大学に語学留学。大学卒業後、旅行会社に勤務。副業で中国語の映像翻訳関連の仕事を始め、2008年、中国語と英語のフリーランス翻訳者に。主な作品にドラマ『鹿鼎記(ろくていき)』『雪山飛狐(せつざんひこ)』(中国語・字幕)、映画DVD『少林寺英雄伝』(中国語・字幕)『X-GAMER』(英語・吹替)など。
2005年春、フェロー・アカデミーのアンゼゼミに入学。以来、継続して同ゼミを受講している。 「月1回、1年間のゼミで、1本の映画を訳します。前半が字幕、後半が吹替。2008年度はイギリスのヒューマンドラマ作品を訳しています」 自宅で作成した訳を持ち寄り、2~3名の訳を見本に、意見を出し合い、講師が講評したりするスタイル。約10名の少人数制ではあるが、個々のセリフについてのクラスメイトの解釈は多様で、「そんな深い意味が隠されていたのか」と驚かされることも多い。 「思いがけない訳や意見が発表されるので、授業はいつも新鮮です。日本語の表現の幅も広がりますね」
フェローでは入学当初からずっとアンゼたかし先生に師事している。 「アンゼ先生は翻訳に関しては厳しいです。『これぐらいでいいかな』と思って出したような訳は、必ず指摘されます。私は英語力が足りないので、もっと原語のメッセージを深く読み込むように指導されることが多いです」
講師に「ほかにどんな表現がありますか?」などと問われ、その場で別の表現を考えて答えなければならないことも多く、“瞬発力”も培われてきた。 「吹替の場合、制作現場にいくと、訳が流れに合わず、その場で代案を求められることがあるんです。以前はなかなか思いつかず困ったのですが、最近は別の表現がパッと頭に浮かぶようになってきましたね」
藤原さんはもともとは中国語の翻訳が専門。大学で中国語を勉強し、卒業後、働きながら、副業で翻訳の仕事をスタート。お世話になった英語の映像翻訳者から、中国語の下訳の仕事をもらえるようになり、字幕や吹替のスキルを少しずつ教わって、仕事の幅を広げていった。「翻訳の勉強をきちんとしたことがなく、フリーになるなら改めてしっかり勉強しておいたほうがよいと思い、受講を決めました。人脈を作りたい、自分の実力を客観的に評価してもらいたいという気持ちもありましたね」
2008年、フリーランス翻訳者として独立。中国語、英語ともに、連続ドラマや映画DVDの仕事がコンスタントに入っている。いつかは『レッドクリフ』のような中国語の劇場公開用映画を手がけてみたいという夢もあるが、今はどんな仕事も貪欲にこなして、着実にレベルアップを図りたい。 「一人で仕事をしていると刺激がないので、今後も引き続き受講するつもりです。ゼミに出て、いろいろな人の訳を見るだけでも勉強になるし、セリフについてあれこれ意見を出し合うのは楽しいですね」 名台詞、名訳でなくていい、読んでストレスのない字幕を――これもアンゼ先生の教えであるが、そんな字幕を目指して、これからも勉強を続けていきたいと思っている。
講座の課題は英語作品ですが、日本語のアウトプットについて学んだことは中国語翻訳にも生かすことができます。原語メッセージの大事なところをどのようにして抜き取り、字幕や吹替にしていくのか、そのスキルは原語が何であっても同じ。他原語の翻訳者を目指す人にとっても、十分に役に立つと思います。
授業での予習・復習以外に、翻訳のための勉強はしていません。でも、本を読むこと、映画を見ること、すべてが翻訳の役に立っていると思います。もともと本も映画も大好き。中国語の本もたまに読みます。最終的には日本語にする仕事ですから、和書をたくさん読むことも大切なのではないでしょうか。
『通訳者・翻訳者になる本2010』(イカロス出版発行)より転載