笠川梢さん
立命館大学政策科学部卒。輸入建材や製薬会社などで翻訳に従事し、2005年に医薬翻訳者として独立。現在は治験関連の英日・日英を中心に、さまざまな医薬文書を手がける。
関西在住の笠川さんはこれまでに2度、フェロー・アカデミーの通信講座でスキルアップを図ってきた。輸入建材会社でカタログの翻訳などを行っていた2001年、自己流の翻訳に限界を感じて「翻訳入門<ステップ18>」を受講。「翻訳に必要な英文法を学びながら、文化的背景や言語特性を理解して訳すことの大切さを理解した」という。
その後、派遣社員として製薬会社で翻訳や翻訳チェックに従事し、2005年に医薬翻訳者として独立。着実に経験を積んでいた2012年にふたたびフェローを頼った。
「受注するのはCIOMSや症例報告がほとんど。それ以外の医薬文書も受注できるように、臨床研究論文にテーマを絞ったマスターコースを受講することにしました」
西村多寿子先生の「丁寧に調べ、正しく原文を読み取り、それを誤解の余地のない訳文に」という指針に従って翻訳。提出した課題は、誤訳や不適切な訳語などが正され、読解が難しい箇所などを取り上げた解説、講師訳、受講生の優秀訳とともに返ってきた。
「添削指導は弱点の改善につながり、西村先生のコメントや解説によって医薬翻訳に役立つ新たな知識も増えました。ほかの受講生の訳文に刺激を受け、講座の折り返し時に行われたスクーリングに参加し、親交を深めました。コメント欄を通じて西村先生と『近況報告』しあうことで、絶えずモチベーションを維持できたのも良かったです。一番大きかったのは、論文以外にも広く対応できる英文解釈力や翻訳力がついたこと。事実、今は治験関連文書の英訳や和訳を中心に、論文や添付文書などさまざまな案件を受注しています。マスターコースで学んだ甲斐がありました」
向上心を忘れることなく、「自然かつ正確な翻訳を迅速にお客様に提供していきたい」と笠川さん。今も同校が運営する「アメリア」を利用し、情報や知識のアップデートに努めている。
『新版 医学・薬学の翻訳・通訳完全ガイドブック』(イカロス出版発行)より転載
(Text 金田修宏)