映像翻訳特有のルールを理解する
映像翻訳の特徴は、映像があることと、文字数や表現に制限があることです。テキストでは、まず映像翻訳の手法である「吹替」「字幕」の基本的なルールを学習。さらにそれぞれの手法の違いを明確に理解するため、ワークブックの課題では同じシーンを「吹替」「字幕」の両方で訳していただきます。最初はセリフづくりから挑戦し、課題が進むにつれ、吹替台本を作成したり字幕の文字数を算出したりと難易度があがっていきます。プロの映像翻訳者の作業工程を、段階的に理解できる学習構成になっています。
吹替と字幕の違い
「吹替」は耳で聞いて分かりやすいセリフ、「字幕」は目で見て分かりやすい言葉でなければなりません。
その違いを例文で見てみましょう。
【例文】
You do know that cellulite is one of the main ingredients in corn chowder? (3.25秒のセリフ)
*cellulite:皮下脂肪 *ingredients:構成要素
ファッション業界に身を置きながらも自分のファッションやスタイルには無頓着な主人公(女性)がコーンチャウダーを飲んでいるのを見て、先輩社員(男性)が皮肉たっぷりに言い放つセリフです。
【訳例】
吹替:コーンチャウダーの主成分が皮下脂肪だってことは知ってるよな?
字幕:知ってるよな 皮下脂肪の元だ
吹替では、セリフの情報をすべて入れて、日本語の会話として自然なセリフになるように訳します。
それに対して字幕では、「コーンチャウダー」という言葉が入っていません。また、”cellulite is one of the main ingredients”は「皮下脂肪が主な構成要素の一つである」という意味ですが、「皮下脂肪の元だ」という短い表現になっています。
これは、字幕には「1秒の原音に対して4文字の日本語で表現する」というルールがあるからです。このセリフは3.25秒ですので、13文字の日本語で表現しなければならないのです。
このように同じセリフでも字幕と吹替では表現の仕方が異なります。
この講座では、どちらの手法にも対応できるスキルを身につけていきます。
「はじめての映像翻訳」の内容
■テキスト
1.映像翻訳の世界へようこそ
1-1 映像翻訳の主なメディア
1-2 映像翻訳の主なジャンル
1-3 映像翻訳の手法
2.はじめよう映像翻訳
2-1 映像翻訳と他の分野の翻訳との違い
2-2 セリフとストーリー
2-3 はじめよう字幕翻訳
2-4 はじめよう吹替翻訳
2-5 字幕・吹替の共通の注意点
3.プロとして仕事を始める
■ワークブック
Part1. キャラクターや人物関係をセリフで表現
登場人物ごとの性格や性別をふまえ、自然な日本語のしゃべり言葉になるように訳します。
Part2. 意を汲んで訳す
会話や発音、イントネーションから汲み取れる舞台の状況や真意を日本語に移し変えます。
Part3. 冒頭で観る人を引き込む
作品の冒頭で行なわれる問題や話題の提示を意識して、作品世界に引き込む表現に工夫します。
Part4. 吹替と字幕の訳し分け徹底演習
Part1~3の応用編。同じシーンのセリフを吹替、字幕の両方で訳します。
学習の進め方①:テキストを読む
映像翻訳と他の分野の翻訳の違い、吹替、字幕のルールを理解します。
学習の進め方②:課題1を翻訳し、提出
課題1はアニメ作品のワンシーン。
教材映像を観ながらスクリプトを訳し、テキストのルールに沿って吹替や字幕の原稿に仕上げます。
学習の進め方③:添削結果と「解説・訳例」で復習
映像翻訳のルールの理解度を中心に、吹替、字幕それぞれに合った表現が工夫されているかなどを確認します。
学習の進め方④:次の課題に挑戦
トレーナーからのフィードバックを活かして全6課題の提出を目指しましょう。