実務翻訳とれたて直送便

上場企業には欠かせない! 
IR・会計の翻訳

実務翻訳の産地でとれる旬な仕事、注目の仕事をレポート。
後半は翻訳に携わった受講生のインタビューです。
キャリアプランの参考にもどうぞ!

実務翻訳とれたて直送便

IR・会計の翻訳

 もうすぐ2017年度も終わり。企業で働く方のなかには「決算」の文字が頭をよぎる頃ではないでしょうか。今回は、企業の存在には必ず必要となる、IRや会計に関する翻訳文書をテーマにお届けします。お話をうかがったのは、北米に在住しながらフリーランス翻訳者として活躍するリード奈穂美さん。IR・会計で翻訳が必要な文書にはどういったものがあるのか、どんな目的の文書なのかといったことなどを、分かりやすく教えていただきました。

扱うのは「機密情報」
良い意味での緊張感を感じ、誇りに思います

  • IR、会計関連で翻訳される文書とは?

     IRや会計関連で発生する翻訳案件には、おおまかに、企業の株主に送られる株主総会招集通知、投資家やアナリストに向けた決算短信、株主や投資家のための有価証券報告書やアニュアルレポート、そして株主や投資家をはじめ、債権者や取引関係者なども目にするコーポレートガバナンス報告書、CSR報告書、ニュースレターなどがあります。

     株主総会招集通知には、株主総会の日程や議決内容、また議決を行使するにあたって判断材料となる計算書類、役員それぞれの略歴、地位、担当といったプロフィールなどが記載されています。決算短信は株式を証券取引所に上場している企業が、証券取引所の適時開示ルールに則り決算発表時に作成・提出する、共通形式の決算速報のこと。有価証券報告書は、株式を上場している企業などが、金融商品取引法に基づいて事業年度ごとに作成し提出する文書で、企業の概況、事業の概況、営業の状況、設備の状況、経理の状況などを開示する資料です。アニュアルレポートも有価証券報告書と同様、経営内容についての総合的な情報を掲載した文書ですが、有価証券報告書や決算短信が法定開示資料であるのに対し、アニュアルレポートは法定開示資料ではありません。

    IRや会計関連で発生する翻訳案件
  •  そしてコーポレートガバナンス報告書。コーポレートガバナンスは「企業統治」と訳され、企業の不正行為を防止し、適正な事業活動を維持・確保していくための仕組みのことです。この報告書はWebなどで公開している企業も多いです。CSR報告書のCSRは「企業の社会的責任」と訳されます。つまり企業が社会にどう貢献しているかを掲載する報告書で、こちらもWebで公開している会社が多いです。本来の事業活動だけでなく、地域コミュニティーでのボランティアや寄付活動、環境保全活動などを通じた社会貢献を記載します。ニュースレターは、企業の買収や併合など、組織にかかわるニュースや、役員の変更、新事業の立ち上げ、撤退のニュース、新商品の発売など、Webで公表される各種のニュースです。

     特に決算短信は株主や投資家が投資する際の判断材料になる文書であり、これらの文書が公開されることによって、記事になったり株価が変動したりすることもあります。公表までは機密情報ですし、間違いなどは絶対に許されません。そんな文書を翻訳しているかと思うと、良い意味での緊張感を感じ、誇りに思います。同時に、刻々と変化する社会経済情勢や頻繁に行われる会計基準の新設や変更にも常にアンテナを張っていないと理解できない内容もあり、そういった意味では勉強に終わりはないので、プレッシャーを感じますね。

    IRや会計関連で発生する翻訳案件
  • 必要な知識とは?

     また、会計関連の文書では多くの場合、計算書類などが含まれるのですが、会計用語・会計基準などは知識がないと日本語でも理解しづらい分野であると思います。私は以前、公認会計士として勤務した経験があり、その頃に得た知識・経験が現在非常に役立っています。このジャンルの翻訳者を目指す方は、会計関連の勉強はしておいた方が良いと思います。簿記などの各種検定試験を受けるのも役に立つと思います。また日ごろから経済情勢に敏感になっておくことも必要ですね。

企業で経理業務の経験がある方は、その知識を存分に活かせるジャンルと言えそうですね。企業活動がある限り、IR・会計関連の翻訳需要も常にあります。少しでも知識がある方は、このジャンルの学習から翻訳を始めてみてはいかがでしょうか。
今回お話をうかがったリード奈穂美さんは、現在は北米にお住まいです。日本の企業と仕事するうえで、時差は影響するのでしょうか? なぜ翻訳者を目指したのか、ということから、もう少しお話しいただきました。

翻訳育て人に聞く!
海外で子どもを育てながら働くには、翻訳がベスト

リード奈穂美さんのプロフィール
  • 公認会計士として監査法人での勤務を経て、2014年からフリーランス翻訳者として活躍。フェロー・アカデミーの通信講座「実務翻訳<ベータ>」と「ベータ応用講座」を受講。

  • リード奈穂美さん

自分ではわかっていると思っても、調べる癖を!

  • 通信講座で始めた翻訳学習

     私が翻訳者になろうと思ったのは、海外で子どもを育てながら働くには、家でできる仕事がベストであると判断したからです。子どもの学校は休みが多いということもありますが、学校や習い事には送り迎えが必要なため、周りに頼れる親戚もいない私には外で働くのは難しいと思えたのです。在宅でできる仕事にもいろいろありますが、インターネットで調べた結果、得意な英語が活かせる翻訳者になれたらいいなと漠然と考えるようになり、とりあえず通信講座で勉強してみることにしました。本当に翻訳者になりたいかどうか、自分に向いているかどうか、などは勉強しながら考えていけばいいや、と気軽な気持ちで始めました。

     フェロー・アカデミーでは、通信講座の「実務翻訳<ベータ>」と「ベータ応用講座」を受講し、基礎英語の復習ができました。日頃から英語を話す生活でしたが、文法的にきちんとした英語を書くというのは難しいと思いましたね。どれもこれも中学や高校で習った事ばかりなのですが、年月の経過ともに忘れていることも多く、はじめは課題をこなすのに非常に時間がかかりました。添削されて返ってきた初回の訳文には、「違います、きちんと調べて下さい、調べればすぐにわかることです」と書かれ、少なからずあった自信はものの見事に崩れ去り、ああ、きちんと勉強し直そうと思いました。2回目以降からは、自分ではわかっていると思っても調べる癖をつけました。そうしているうちに添削トレーナーからのコメントにも、「よく調べて丁寧に翻訳しているのが分かります」と書かれ、非常に嬉しかったのを覚えています。また、課題提出時に質問などを記入しておくと必ず回答を返してくださったので、とてもありがたかったですね。

    調べもの
  • 今の仕事について

     現在、私は仕事で英訳を担当することが多いのですが、英訳で苦労することと言えば、原文である日本語文の主語が省略されている場合です。英語の文章には基本的に主語が必要ですので、無生物主語の使用を含めて、主語をどうするかいつも悩みます。また、英語でどう表現するのがふさわしいか、わからない時やピンとくる英単語が浮かんでこない時もあります。その場合は辞書を引いたあとに、その単語・表現を英語で検索し、一般的にその単語・表現はどういう文脈で、どういう意味で使われることが多いのかを探るのですが、時々、辞書には載っているけれども、検索してもヒットしない時があります。そういう時は一般的には使用されない英語表現であると判断し、辞書を引いて英語でその表現を検索する、ということを納得がいくまで続けます。

     私は北米在住ですので、当然ながら日本との間には時差があるのですが、翻訳の仕事をするうえでは時差がメリットになる場合があります。急ぎの案件などでは、日本が夜中である時間帯に仕事ができる私に発注が来ることもあるからです。例えば、日本のエージェントから、「日本時間の明日の朝までに仕上げてください」といったメールが、日本時間の夕方から夜にかけて来ます。ちょうどその時間帯は北米が朝で、通常であれば納品まで7~8時間あるので対応が可能です。ですが逆に、日本のビジネスの時間、特に午後には北米は夜間ですので、連絡が取れず不便であることも事実です。エージェントによっては、トライアルの条件に「日本の営業時間に連絡が取りやすい方」を掲げているところもあり、そういった場合は応募もできないので、デメリットだなと感じます。リアルタイムでのコミュニケーションが取りにくいのは難点ですが、「アメリア」も活用しながら仕事を確保できています。また、これまで日本でもアメリカでもずっと会計に関わる仕事をしてきた私にとって、翻訳という仕事はライフスタイルが変わっても経験と知識を活かせる仕事であることが魅力です。どこに住むことになっても、家族が増えても、あきらめなくて良い仕事なのです。

    海外で子どもを育てながら働く

リードさん、ありがとうございました。
英語圏で生活していてもなお、丁寧に調べることの重要性が伝わってきました。そしてフリーランス翻訳者という働き方がいかに柔軟で、人生におけるあらゆる選択肢と両立しやすいかということも実感できますね。「だいたい8時から11時まで、13時から16時、20時から23時」を仕事にあてているというリードさん。この時間の区切られ方から、「ママ」としてのリードさんが見えるような気がします。

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