実務翻訳とれたて直送便

ゲーマーにはたまらない!
ゲーム翻訳の世界

実務翻訳の産地でとれる旬な仕事、注目の仕事をレポート。
後半は翻訳に携わった受講生のインタビューです。
キャリアプランの参考にもどうぞ!

実務翻訳とれたて直送便

キーワーズ・インターナショナルさんの社内の様子
キーワーズ・インターナショナルさんの社内の様子

 映画や音楽などと並んで、世界中の人々を楽しませているエンタテインメントのひとつに、ゲームがあります。カードやボードを使う普遍的なものもありますが、今回は、次々と新しい作品が生まれているゲームに関わる翻訳について、お届けします。
 お話をうかがった株式会社キーワーズ・インターナショナルは、20ヵ国に50以上のスタジオをもってゲームの開発支援を行っている、Keywords Studiosの日本法人。ゲームの開発におけるアート制作、音声制作、ローカライズ、翻訳、カスタマーサポートなど、幅広いサービスを提供している同社の大脇さんに、ゲーム関連の翻訳にはどのような仕事があるのか、また気になるゲーム翻訳者への道についてもうかがいました。

※ローカライズとは:ある特定の国を対象に作られた製品を、他の国で使用できる状態に変更すること。言語だけでなく、現地の慣習や法令にあわせて仕様を変更する場合もあります。

株式会社キーワーズ・インターナショナルのWebサイトはこちらから

  • ローカライズはサービスの一つ

     当社はもともと、ソフトウェアに関する翻訳をメインとする事業を展開していましたが、2005年以降はゲームのローカライズに特化しています。ゲームのローカライズには、技術や機能を翻訳するためのスキルに加え、作品の世界観を表現するためのスキルなど、それまでの翻訳業とは異なる専門性が必要になると見込んだからです。創業者がかなりのゲーマーであることも、理由の一つかもしれませんが(笑)。 ゲームを製品化するうえで発生する翻訳には、基礎開発で必要となる企画書や仕様書からはじまり、実際にゲームで表示されるストーリーテキスト、キャラクターのセリフ、UI、マニュアル、不具合報告まで様々です。最近では作品タイトルのwebサイトやSNS上の告知でも翻訳が必要となります。
     また、ゲーム開発に直接関連することでなくても、リリース後のユーザーレビュー、マーケティング資料、社内文書など、ゲームをグローバルに展開する過程で翻訳は必要となります。
     つまり、ゲームプレイ中に目にすること以外の様々なシーンでも翻訳が必要となり、その目的も様々です。

     翻訳はゲーム開発におけるサービスの一つということになりますが、言語の垣根を越えてゲームをプレイできるようにすることは、ゲームユーザーの全体数を増やすことにつながり、それがゲーム業界全体の発展に貢献できていると考えています。また、様々なゲームに触れることで制作サイドも刺激されますので、ゲームコンテンツの多様化にも寄与できているならば嬉しいですね。

    矢口さん(左)と大脇さん(右)
    矢口さん(左)と大脇さん(右)
  • ゲーム翻訳者に求められるスキル

     翻訳者には、ゲームが好きで知識があるという資質が必要です。たとえば「EXP」と言えば「経験値」のこと、といった言い回しを知っていたり、ゲーム特有のUIにも慣れ親しんでいたりすることは大きなアドバンテージになります。
     翻訳スキルでは高い語学力は当然として、ゲームの世界観に沿って翻訳できる文芸面での表現力も必要です。

     また、当社ではゲーム開発を基本的にチームで行っていて、翻訳者はそのチームメンバーですので、やはりコミュニケーションをしっかり取れることも大事ですね。翻訳→チェックというサイクルのなかで、翻訳者と他のメンバーとで訳を巡って意見が異なることもあります。そういった際にも円滑に仕事を進めていかなければなりません。

  • 未経験でもゲーム翻訳者になりたい方は

     ゲーム翻訳に関わる仕事がしたいという熱意がある方であれば、誰でもなれるチャンスはあります。
     当社では過去に、翻訳者としてはスキル不足だけれどもゲームへの熱意を感じたという理由で、言語品質管理部門で採用したことがあります。まずは翻訳品質のチェックを行う業務で経験を積み、後に翻訳者のポジションに異動したケースもあります。

     他にも、ゲームの不具合を見つけるデバッグ業務を経て、翻訳者に転向したスタッフなどもおります。一見、翻訳と関係ないと思われる仕事からスタートしたとしても、ゲームへの熱意次第ではそれを肥しとし、翻訳者として活躍しているスタッフが多数おります。

ゲーム開発業務をグローバルに展開している企業だからこそ、企画から開発、製品化までにあらゆる翻訳が発生すること、また翻訳に関わるチャンスがある、ということがわかりました。

続いて、実際に同社で翻訳者として働いている矢口雄太さんに、お話を聞いてみました。

翻訳育て人に聞く!

矢口雄太さんのプロフィール
  • フェロー・アカデミーのカレッジコースを修了後、ゲームローカライズ会社に就職。現在は(株)キーワーズ・インターナショナルにて翻訳業務に携わる。

  • ビデオゲームの未来を担いたい

     ものごころついたころにファミリーコンピューターが発売されたので、私はゲームと共に成長することができた世代でした。それゆえゲームへの思い入れは強く、プレイすることも大好きです。しかし、ゲームのローカライズはまだまだ黎明期で、質、量ともに映画やドラマ、文芸には肩を並べていないと感じています。
     日本のユーザーが様々な海外のゲームを、そのゲームが持つ本来の面白さのままにプレイできるようにしたい。ビデオゲーム世代のひとりとして、そのような未来をつくることに責任を感じています。

     もともと翻訳については勉強をしていましたが、やはり体系的に学びなおしたいと考え、ゲーム翻訳に必要な要素(実務、映像、文芸)をすべて網羅しているフェロー・アカデミーのカレッジコースに入学することにしました。
     カリキュラムを通じて、長時間にわたって翻訳し続けることを体で覚えることができたと思います。カレッジコースでは、課題を含めれば毎日のように英文を翻訳することになりますが、そのような習慣を仕事を始める前に作ることができたのは非常に大きいと感じています。

    矢口さん(奥)
    矢口さん(奥)
  • 社内翻訳者として働くということ

     カレッジコース修了後、ゲームのローカライズ会社で働きはじめ、現在は(株)キーワーズ・インターナショナルで社内翻訳者として勤務しています。一般的に、フリーランスの場合は自分で得意なジャンルを突き詰めていくことでキャリアを作っていくと思いますが、社内翻訳者はジャンルを問わず、社内の状況に応じて様々なジャンルの翻訳を担当することになります。

     ゲーム翻訳においては開発の規模、コンシューマーやモバイルアプリといったプラットフォーム、そのモチーフなど、それぞれが違えば求められるアウトプットも変わってきます。横断的に仕事をすることで、多角的な視点を持って翻訳業務に取り組めるようになったと思います。

     企業の中で仕事をするうえで意識しているのはチームワークです。
     当社では一つの案件に対し、翻訳者だけでも少なくとも3~4人で編成されたチームで対応しています。他にも進捗や予算を管理するプロジェクトマネージャー、品質管理部門、吹替作品であれば音声収録部門など、いろんな立場の人と関わりながら仕事を進めなければいけないので、チームワークは大切だと思っています。

     翻訳者は程度の違いはあれ、自分の語学力にある程度自信を持っていなければ務まりませんし、当たり前ですけど手掛けた翻訳物にも誇りを持っています。
     そのため、チームメンバーと意見がぶつかることもあり、客観性を軸に折り合いをつけることは苦労します(笑)。それでも、関わった作品のクレジットに自分の名前が載ることは、とても嬉しいものです。

  • ゲーム翻訳 おすすめ勉強法

     ゲームのローカライズや翻訳に関わりたいという方は、様々なゲームを日本語と英語、両方でプレイすると良いと思います。その際にユーザービリティを意識するのは非常に重要です。私は「どういったテキストを表示させれば、ユーザーが混乱することなく、ゲームに没頭できるか」を、開発側になったつもりでメモしながらプレイしていました。

     また、普段使っている日本語を見直してみることも大事です。これは母国語ではよくあることですが、なんとなく使っていた単語も改めて辞書を引いてみると自分の認識とニュアンスが微妙に違っていたりすることがあります。いまはブログやSNSがある時代ですので、文章のアウトプット量を増やして、伝わりやすさと表現力の両面を磨くのが良いかと思います。

  • 「ゲーム翻訳者志望」を増やしたい!

     私は翻訳という仕事を通じて、もっとゲームの存在をアピールしていきたいと思っています。翻訳者を目指す人が最初からゲーム翻訳者になりたいと思うようにゲームローカライズを盛り上げていきたいですね。

     ゲーム翻訳の歴史は新しく、まだまだ手探りなところがあります。そのぶん、自分なりのやり方を模索しやすいと感じていて、自分のやっていることが何かの基準になればいいなと思いながら仕事をしています。自分なりの翻訳スタイルを身に着けて、それを若手に伝えていきたいです。

大脇さん、矢口さん、ありがとうございました。
お二人からはゲームという文化をもっともっと発展させたいという情熱が感じられました。
まずはゲームが大好きであること、そして商品化するまでのチームワークを大事にするという面では、他のジャンルの翻訳と同様ですね。「好きである」を最大の武器に、少しでも多くの方が理想の翻訳への道に進んでいかれることを願っています!

矢口さんが受講したコースはこちら

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