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トラマガ

Vol.334 <前編>観光翻訳者 藪内達也さん

海外で日本の文化を伝える経験を積んで見えたこと。
日本を訪れる観光客をもてなす仕事がしたい。

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(2014年12月10日更新)
 今月は、学生時代のご自身の海外体験をもとに、日本を訪れる外国人の方を語学力を生かしたサービスでおもてなししたいと夢を抱く若き翻訳者、藪内達也さんにスポットをあてました。「翻訳者としてはまだまだ駆け出し」とおっしゃる藪内さんですが、言葉に対するこだわり、地元を愛する心、自分で仕事を創出したいという情熱にあふれています。藪内さんがどのような経験をし、どのように言葉に触れ、翻訳の仕事をするようになったのか。そして、今後の夢についてお話を伺いました。

ラジオで英語を聞き始め、外国語や異文化に興味が湧きました。

――藪内さんが最初に英語に出合ったのはいくつのときですか?

 小学5年生のときでした。当時の私は、あまり勉強をしていなかったようで……。見かねた親が、自発的に勉強をするきっかけになればと思ったのでしょう、「ラジオ英語を聞いてみたら」と勧めてくれたんです。半ば強制的にテキストを買わされました(笑)。それで聞き始めたのですが、最初はまったくわかりませんでした。でも、しばらく聞いていると、ちょっとずつわかることが出てくるんですよね。単語が聞き取れたり、文法の解説が理解できたり。できることが少しずつ増えていく、それが楽しくて、次第に興味がわいてきて止めることなく聞き続けられました。

――学校で文法から学ぶというのではなく、耳で英語に慣れるところから入ったのが良かったのかもしれませんね。その後もずっと、英語は好きな科目だったのでしょうか?

 そうですね。語学としての英語が好きというよりは、英語を好きになったことをきっかけにして、外国語、さらには海外に対して興味を持つようになったという感じです。そんな思いから、大学は神戸大学国際文化学部に進みました。国際文化学部には4つのコースがあり、そのうちの1つに広くコミュニケーションを学べるコースがあったのです。専攻は比較言語学で、日本語と英語のしくみの違い、その違いが考え方にどのような影響を与えるのか、脳にどのような影響を与えるのか、といったことを学びました。また言葉だけではなく、社会学、国際政治、文化人類学など、興味のある講義をひと通り受講しました。在学中には、第二外国語のロシア語だけでなく、ポーランド語、フランス語を、卒業後には中国語も少しですが勉強しました。

――ポーランド語とは珍しいですね。なぜポーランド語を学ぼうと思ったのですか?

 ポーランドに行く機会に恵まれたのがきっかけです。ある学生向けの海外インターンシッププログラムに参加したのですが、その渡航先がポーランドで、2カ月ほど滞在しました。現地では、中学生や高校生に日本語を教えたり、英語で日本の伝統や文化を紹介したり、折り紙を折って見せたりしました。その活動を通して感じたのが、漫画やアニメをはじめとして、日本に興味を持っている人が想像していた以上に多いんだな、ということでした。
 国際系の大学で、まわりの友人も海外留学や海外で働くことを目指している人が多かったので、私もなんとなく「海外に出て働きたいな」と思っていたのですが、このときの経験を通して「海外に出なくても、日本に来る外国人に関わる仕事をするという選択肢もあるんだな」と考えるようになりました。

――学生時代、他にもいろいろと将来につながるような経験をされたそうですね。

 はい。大学3年の秋頃から、あるベンチャー企業のインターンとして働き、“日本の工芸品を海外で販売する”という仕事の立ち上げに関わりました。実質的に関わった期間は1年ほどですが、国内の工芸品パートナーの開拓や、販売に関する文書の翻訳などを行いました。

――ベンチャー企業のインターンというのは、どこかで募集があったのですか?

 先に参加したポーランドのプログラムの報告会で、ベンチャー企業の社長と名刺交換をしました。日本の良いものを世界に紹介する事業を始めたいという社長の講演を聴き、私も興味があったので、講演の後に声をかけてお話をうかがったんです。その数ヶ月後、事業がどうなったのか気になったので連絡してみたところ、「関わってみませんか」と言っていただいて。私は神戸に住んでいて、会社は東京だったので、在宅勤務という形でしたが、会議にはSkypeで参加したり、メールで企画書を提出したり、実際に工芸品メーカーに出向いてパートナーシップ提携の画策をしたりと、積極的に仕事に参加しました。

――大学3年の秋というと、就職活動を始める時期ではないですか?

 そうですね。まわりの友人たちは就職に向けて動いていましたが、私は「とにかくどこかに就職を」という感覚はなく、今できること、このときはベンチャー企業のインターンとして勉強するということですが、それを優先させて、将来のことはちょっと後回しでもいいかなと思っていました。

――なるほど。インドにも行って、独自の活動をされたそうですね。

 大学4年になる前の春休みに2週間、友人と2人でインドに行きました。日本のことを紹介するフリーペーパーを、日本語教育機関や大学の日本語学科などに配るのが目的でした。日本のことというと、東京や京都、それからアニメなどのサブカルチャーはよく知られていると思いましたので、そういうものは避けて、インドの方が知らないであろう内容の記事を中心に、独自に編集しました。たとえば、観光地としては沖縄の離島を取り上げて紹介しました。また、私が以前関わったことのある工芸品を取材して記事にしましたし、日本に住むインド人にインタビューして日本での暮らしをレポートする記事をまとめました。基本的には英語で、一部日本語をまじえながら書きました。

――自作のフリーペーパーをインドで配布して、反響はいかがでしたか?

 想像以上でしたね。「こんなことをやったら面白いかな」という思いつきで実行したのですが、「1回きりじゃなくて、ぜひ続けてほしい」と言われて、手応えを感じました。残念ながら、資金の問題もあり、まだ第2号は発行できていませんが、いつか何らかの形でできたらいいなと思っています。

大学時代の経験を通して、見えてきた目指すべき方向

――大学時代から、ご自身で動いて色々な経験をなさったわけですが、大学を卒業してからは、どうしましたか?

 大学卒業後、いったん一般企業の営業職に就いたんです。いずれは起業したいと思っていましたが、まずは実地で勉強したいと思いまして。でも仕事が激務で、半年で体を壊して退職せざるを得なくなりました。そこでいったん挫折を味わい、途方に暮れていました。
 しかし、昔の知り合いに声をかけられて再びポーランドを訪れる機会に恵まれました。そこでいったん自分をリセットし、考えたのは、地元の奈良に戻って働こうということでした。地元の勤め口というと、農協や銀行くらいで、私のまわりの友人も、東京や大阪、京都などの大学に進んで、大半は奈良には戻らずどこか大手企業に就職する人が多かったんです。でも、地元にやりたい仕事があれば、戻ってくる人も増えると思うんです。時間がかかるかもしれませんが、私自身が自分で仕事を作って、地元に根付いて生活する、そんなロールモデルになりたいと思いました。
 それに故郷って、一度離れて外から見てみると、その良さがわかるというのがありますよね。私の場合もまさにそれで、しかも学生時代の経験から日本を訪れる外国人に関わる仕事がしたいと思っていたので、まずは奈良を訪れる外国人を増やすことを考えよう、1人でも多くの人に来てもらって、奈良っていいところだなと思ってもらいたいという気持ちが芽生えていたんです。

――その“自分の仕事”というのが観光翻訳だったわけですね。

 「観光翻訳」というジャンルが確立しているのかどうかは、私自身よくわかりませんが、とにかくやりたいことがあるなら看板を上げなければ、ということでホームページ『Japan Produce』を立ち上げました。これまでいくつか翻訳の仕事をしてきて、観光に関するものの場合は、英語だけでなく中国語、韓国語にも訳してほしいというニーズが多いので、英中韓の翻訳を一括で請けられるようにしています。といっても、私にできるのは英訳だけなので、中国語、韓国語は友人にお願いしていて、さらにホームページ制作やDTPなども知り合いのネットワークで対応して、私がとりまとめをするようにしています。


学生時代のさまざまな経験を通して、少しずつ見えてきた自分の進む道。後編では、藪内さんが「自分の仕事」と心に決めた、観光翻訳についてさらにお話を伺います。

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藪内達也

2008年に神戸大学国際文化学部に入学。在学中に海外インターンシッププログラムに参加してポーランドを訪れる。また独自に開拓したルートから、ベンチャー企業のインターンとして日本の工芸品を海外に紹介するビジネスの立ち上げに関わったり、友人と2人でインドに赴き、日本を紹介するフリーペーパーの配布プロジェクトを行ったりもした。現在はフリーランス翻訳者として翻訳の仕事を請け負いつつ、自身の経験を生かして日本を訪れる外国人観光客をもてなす仕事を創出したいと奮闘する日々。

<関連リンク>

■藪内さん 「日本のインバウンド観光を面白くする!」をテーマにしたプロジェクト
“Japan Produce”

■ブログ「One step farther: That makes a big difference」

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