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トラマガ

Vol.338 <前編>大学講師 日向清人さん

持ち前の単語力、文法力に、「英語らしさ」というスパイスを加えれば、
あなたの書く英文は見違える!

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(2015年2月10日更新)
 法律・金融系の翻訳者を経て、現在はビジネス英語の講師・書籍執筆を行う日向清人さんのご登場です。日本の英語教育とは一線を画す、英語圏で教えられている英文ライティング術、英文法の考え方などをわかりやすく解説した書籍が人気で、日向さんによると、「日本人でも英文ライティングのコツさえつかめば、英語ネイティブが読んで違和感のない自然な英文が書けるようになる」のだそうです。そのためには何を学べばいいのか、どういう点を強化すべきなのか、日向さんに伺いました。大勢の受講生にビジネス英語を教えてきた経験からたどり着いた、英文ライティングのスキルアップ術をたっぷりご紹介します。

専門を持つことで得意分野を深く追究できる

――翻訳者・通訳者としてお仕事をされることになった経緯を教えていただけますか。

 はい。子どもの頃、幼稚園から小学校を卒業するまでは海外で暮らしていました。3歳のときにロンドンの幼稚園に入り、いきなり英語だけの環境になったのですが、子どもって気にしないですよね。3歳だから日本語もまだ上手じゃないし、いつの間にか英語がしゃべれるようになっていた、という感じです。中学で日本に帰ってきて、英語を忘れないようにと親に英語勉強会に行かされましたが、自分としては日本語の書き取りを勉強するほうが必死でした。
 大学では法律を専攻しました。将来どうしたいという目標が見つからないまま大学院に進んだのですが、その頃から知人に頼まれて翻訳や通訳をするようになりました。当時は今ほど英語のできる人が多くなかったので報酬の水準も高くて、この仕事なら自分のスキルを生かせると思ったんです。大学卒業後は就職せずに、そのままフリーランスの翻訳・通訳者になりました。

――英語は得意だったと思いますが、翻訳・通訳を仕事にするということで特別に何か勉強をしましたか?

 海外から友人が来ると普通に英語で話していましたし、自分では英語ができると思っていたのですが、大学院生の頃に親に勧められて何気なく受けたケンブリッジ英検に落ちてしまって……。それから1年間、英語を勉強し直しました。
 ケンブリッジ英検の成績表を見ると、ライティングが悪かったんです。試験の設問でひとつ覚えているのが、「宇宙人に“傘”を説明しなさい」というものです。私は確か「取っ手があって、支える支柱があって、円形の覆いがあって……」と書いていったのですが、それでは英文ライティングとしてダメだったんですよね。当時は英文ライティングを解説した本はまだ少なかったのですが、いろいろかき集めて読みあさりました。その結果わかったのが、先の設問なら「地球では雨というものが降る。雨に濡れるのを防ぐ道具が傘である。円形のドーム状のもので雨を防ぎ、それを支える支柱があり、手で持つための取っ手がある」のように、概要から入って詳細に詰めていくべきだったんです。このとき、英文ライティングにはしきたりがあるということを初めて知りました。
 ケンブリッジ英検は、翌年もう一度受けて無事合格しましたが、その1年間で英語を改めて勉強し、多くのことに気づきました。

――学び直したことが、翻訳や通訳の仕事の基盤になったのですね。フリーランスとして、どのような仕事をしましたか?

 最初の仕事は、国際機関にいた知人に頼まれた広報資料の和訳でした。その後、外務省の外郭団体が海外から招聘したオピニオンリーダーの国内旅行に随行する通訳を募集していたのに応募し、3年ほど従事しました。この時代は特に専門もなく、受けた仕事を何でもこなしていましたね。5年ほどフリーランスで仕事を続けましたが、30歳になる頃に、このまま何でもやっているのではなく、お客さんが向こうから来てくれるようになるためには専門を持つべきではないか、何かに特化したほうがいいのではないかと思うようになりました。大学の専攻が法学部だったので、法律事務所での翻訳者の求人に応募し、社内翻訳者として勤めることにしました。

――分野を絞ったことは、結果的によかったですか?

 はい、キャリアパスとして正しかったと思います。というのも、それから5年くらい過ぎた頃に、外資系証券会社からヘッドハンティングの話があったんです。法律関係の翻訳は契約書などパターン化されたものも多く、専門分野としてほぼ身についた気がしていましたし、金融・証券という分野も専門性が高く魅力的だったので、この話を受け入れて転職しました。
 社内翻訳者として5〜6年勤め、金融・証券の知識が身についた頃、独立してフリーランスに移行しました。元の会社からの仕事を受けつつ他の会社からの翻訳依頼も受けるようになり、スムーズにキャリアアップをしていくことができました。

教えることは面白い、書籍はより多くの人に喜んでもらえる

――現在は講師の仕事と書籍の執筆の仕事がメインとのことですが、いつ頃から始められたのですか?

 講師の仕事はサラリーマン時代に、「学期の途中で講師が辞めてしまって、ビジネス英語を教えられる人を探しているのだが」と知人に言われて、夜間の社会人向けビジネス英語講座の講師を務めたのが最初です。
 会社を辞めてフリーランスになったと言うと、今度は「昼間の授業も持ってくれ」と頼まれ、それから講師業が本格的になっていき、一時はフルタイムの講師と同じくらいの週6コマを受け持っていました。
 人に教えるのは面白いし、受講生が喜んでくれるのはやりがいがあると感じていたので、次に「書籍にすればもっと多くの人に喜んでもらえる」と思い、教える合間に執筆をするようになったんです。そんなふうに講義と執筆が忙しくなっていって、翻訳の仕事は控えるようになりました。翻訳って集中力がいりますからね。並行してやるのが難しくなって、教える仕事のほうを選んだというわけです。

――ご自身が最初に受けたケンブリッジ英検で合格できずに、1年間英語を学び直していろいろな気づきがあったということですが、それが教えることに繋がったのでしょうか?

 そうですね。例えば『即戦力がつく英文ライティング』(2013年、DHC刊)は、あのときいろいろなライティングの本を読んだことがきっかけになって、最終的に生まれた本といえます。この本の中身は、英語圏でライティングを学んだ人なら誰でも知っている、非常に素朴な、常識的なことばかりなんですが、それがなぜか日本には伝わっていないなと感じていたんです。どうやらそう思っていた方は大勢いらっしゃったようで、多くの方から反響をいただきました。

――ライティングやスピーキングもそうですが、日本人は単語も受験の時にたくさん覚えるし、文法も一生懸命勉強するのに、書けない、話せないとよく言われますよね。

 そうですね。海外のレストランで、ウェイターに英語で話しかけられた日本人が、本当に簡単な英語なのに、焦ってしまって聞き取れずにあたふたしている、というシーンに出くわしたことがあります。ウェイターが言うセリフなんて限られているのに、どういうことを言うのか考えたことがないから、焦りが先に出て、あわてふためいてしまうわけです。本当にもったいないです。単語力もあるし文法もわかっているのだから、手順さえつかめば簡単にコミュニケーションが取れるようになります。

――その手順をつかむのが難しいと感じるのですが……。

 難しくはありませんよ。これまでに多くの受講生の方に教えてきましたが、皆さん、短時間の演習ですばらしい進化を見せてくれます。例えば、社会人向けのビジネス英会話の授業では、まず授業の前半45分間で15のキーフレーズをディクテーションを通じて暗記してもらいます。グループで代わる代わる英文を読み上げて書き取りをし、答え合わせをする。そんなふうに暗記してもらって、後半45分で3人ずつくらいのグループに分かれて、15のキーフレーズをできるだけ盛り込んで会話文を作ってもらうんです。すると、皆さん、けっこう臨場感のある会話文を作ってくれます。
 日本の英語教育では特に、単語や文法を詰め込まれます。詰め込まれてばかりで、アウトプットの手順をきちんと教えてもらったことがない。でも、手順を教えると、たった90分の授業でも、かなりできるようになるんです。日本人の英語水準は基本的に高い。それなのに、手順を知らないからできないだけなんだと気づきました。
 特に翻訳の道を志す方なら基礎的な英語学習という土台はできているでしょうから、あとは手順がどういうものかを学ぶだけです。日本語がどういうもので、英語とどう違うかを改めて勉強し、日本語感覚で英語を処理することのないように心がければ、日英翻訳のスキルアップになると思いますよ。


 単語力、文法力を土台にして、あとは英文ライティングの手順を学べば、英語でのコミュニケーション力は劇的にアップするとおっしゃる日向さん。後編では「英語らしい」文章を書くにはどうすればいいか、より具体的に教えていただきます。どうぞお楽しみに。

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日向清人

父親の仕事の関係で、3歳から12歳まで、ロンドン、シンガポール、エクアドルで過ごす。慶應義塾大学では法律を学ぶ。同大学院修了後、フリーランスの英語翻訳・通訳者を経て、法律事務所の社内翻訳者として法律文書の翻訳に携わる。その後、英系投資銀行、米系証券会社で翻訳業務に従事したのち独立。約10年間、外資系金融機関を顧客として翻訳業務に携わる。そのかたわら慶應義塾大学で非常勤講師としてビジネス英語を教えはじめる。現在は大学講師、英語語学書の執筆を手がける。

<関連リンク>

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<著書>


「即戦力がつく英文法」(DHC)


「即戦力がつくビジネス英会話 改訂増補版」(DHC)


「即戦力がつく英文ライティング」(DHC)


「ビギナーのための経済英語」(慶應義塾大学出版会)


「ビギナーのための法律英語【第2版】」(慶應義塾大学出版会)

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