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映像の日本語版制作会社フォアクロスの取締役 新井氏と総合翻訳科「カレッジコース」の修了生推薦制度により同社に入社された高岡氏のインタビューをお届けします。

<新井 有美>(あらい・ゆみ)

株式会社フォアクロス取締役。
代表作品「ハムレット」「風雲!格闘王」「ジーパーズ・クリーパーズ」「西遊記」「アタック・ナンバーハーフ」ほか翻訳制作作品200タイトル以上。

<高岡 佑己子>(たかおか・ゆきこ)

株式会社フォアクロス制作担当として勤務。
フェロー・アカデミー全日制総合翻訳科「カレッジコース」修了生。

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――日本語版制作の現場
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新井:私どものような制作会社は、海外で作られた映像コンテンツの素材を受領するところから日本語版の完成パッケージ制作まで、一貫して制作する体制をとっています。そこが、字幕翻訳や吹替翻訳のみを担当する翻訳会社との違いです。
 私がこの業界に入った8年前は、映像翻訳者の数は非常に少なかったですね。ちょうどCS放送のスカイパーフェクTV!やディレクTVなどが登場した頃でした。それから8年たちまして、マルチメディアやブロードバンドなど、放送や映画、ビデオに限らない新しい媒体がいろいろ出てきて、みなさんもご存知のように、映像翻訳者の数も急激に増えています。
 
  このような状況で、以前は語学ができて、字幕や吹替翻訳のスキルがあれば仕事が受注できたのですが、今は翻訳だけではなく、字幕のスポッティング作業のような周辺作業までできる翻訳者が注目されています。あるいは、日本語版制作の流れのなかに社内チェックという工程があり、翻訳者から上がってきた翻訳の誤字脱字や誤訳、用語の裏づけをとる作業なのですが、このチェックや演出までお任せできる翻訳者も貴重な存在となっています。
 制作会社での業務については、フェロー・アカデミーの全日制総合翻訳科「カレッジコース」で1年間翻訳を学び、制作アシスタントとして当社に入社したスタッフがおりますので、彼女が現在どういった仕事をしているのか、ご紹介したいと思います。

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――制作会社の仕事
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高岡:では、フォアクロスでの私の仕事について説明をさせていただきます。
 入社当時は、日本語版制作の流れを体で覚えるために、制作業務全般に関わって動いていました。
 それから、スポッティング※、吹替翻訳、字幕翻訳、ナレーションのリライト、編集などを任されるようになりました。最近では新しい字幕制作システムが浸透してきており、字幕翻訳者が自分でスポッティングを取ることも多くなっています。製作会社も、スポッティングができるかできないかで、翻訳を依頼するかどうか判断することがあります。
 現在は、主に字幕の社内チェックを担当していますが、スポッティングを取る場合もあります。そのほか、スケジュール管理、翻訳の手配、素材(テープ)の管理、編集やアフレコ※の立ちあい、納品と、制作業務全般を任せてもらっています。制作会社は受注から完成、納品まで一挙に行いますので、責任の重い仕事だと自覚しています。
 
※)スポッティング…ハコ書きで区切ったセリフに番号をふり、その番号のセリフが何秒あるかを書き出すこと。算出した秒数から、1セリフあたりの文字数を計算する。
※)アフレコ…演出家による指導のもと、俳優が映像に合わせて演技し、その音声を録音する。
 
新井:高岡のように、制作会社に入って現場でいろいろな方の翻訳を見たり、いろいろな作品に日々触れることは、間違いなく力がつくと思います。
 やはり今活躍されている翻訳家で、制作会社出身でフリーになられている方は強いですね。日本語版制作の流れ全部を把握していて、映像翻訳がその流れの中の一部であることを知っている。だから、どういう風にしたらあとの作業がスムーズかというのをよくご存知で、こちらが指示する前から先手を打ってくださることも多いです。制作会社出身の方の気配りというのは、そうでない方の比ではありませんので、こちらもすごくおつきあいしやすいです。

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――フェローで学んだこと
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高岡: 私は「カレッジコース」で1年間、映像翻訳だけでなく、出版翻訳、実務翻訳も学習しました。
 どこでも同じだと思いますが、制作会社に入っても、すぐに映像翻訳をやらせてもらえるわけではありません。私の場合は、映像の周辺の翻訳から始めました。例えば、番組に付随するマニュアルとか、ビジネス文書の翻訳とかです。あとは吹替でも字幕でもない素訳、いわゆるベタ訳ですね。英語を聞いて、そのまま日本語に起こしていく作業です。
 
  そうした新人の業務の中で、マニュアルやビジネス文書の翻訳には、「カレッジコース」で学んだ実務の知識が役に立ちました。また、文芸の授業では、日本語力を磨いたり、行間を読み取る力を養うことができました。「カレッジコース」で翻訳の基礎的なことをまんべんなく教えていただいたのがよかったですね。字幕のコツなどは、実際に仕事をするようになって、わかってきた部分もあります。

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――SST時代の到来
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新井:映像翻訳者にとって大事なことは、語学力は言うまでもないですが、まず日本語力と、映像翻訳は日本語版制作の流れの一部であるという意識を常に持つことだと思います。
 映像翻訳の世界では、コンスタントにプロとしてお仕事をしている方と、そうでない方の差が非常に激しいですね。一部の方に仕事が集中している現状があります。
 また、先ほど申し上げたように、翻訳以外にスポッティングもできますとか、プラスアルファの能力が求められています。
 
 SSTという字幕翻訳ソフトが活用されるようになってきました。SSTとはPCのソフト上で映像を見て、そこに直接翻訳を打ち込んで、打った瞬間に字幕が見られるというものです。SSTを使えば、今までよりも手軽にスポッティングを覚えることができます。
 今、このSSTが個人の翻訳者の間でも、急速に普及しています。制作会社にとっても、すべてPC上で作業をしていただいて、データを納品していただければ、かなりの工数カットにつながります。ですから、SSTの環境が整っていて、なおかつ翻訳技術がある方がいらっしゃれば、やはりその方に仕事が集中してしまいます。私どもでもそうですが、大手の制作会社でもSSTを持っていることがトライアル受験の条件になっている場合もあります。

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――プラスアルファの力をつける
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新井:スポッティング以外のプラスアルファの要素として、以前はスクリプトがない場合、まず聞き取りでスクリプトを起こし、それを元にハコ書きをして翻訳するという2つの工程を踏んでいました。
ところが、今は英語を聞きながら直接字幕に翻訳できる方もめずらしくありません。コスト面も抑えられ、時間的にも早く仕上がるので、スクリプトのない作品はそういう方に仕事が流れていく傾向があります。
 そういった意味で、翻訳力があるのはマストで、スポッティングとか、ヒアリングができるとか、特定の専門分野の知識に強いとか、なにかプラスアルファの部分がないと、今後映像翻訳のスキルだけを武器にするのは難しいといえるでしょう。
 あとは、映画でもDVDでも、世の中の情勢にあわせて、急いで作らなければならないことが多く、映像翻訳者には作業スピードも求められます。作業が早いことも、ひとつの武器になると思います。

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――多言語翻訳の可能性
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新井:私たちはヴイ・ビジョンスタジオの時代から、英語に限らず、香港映画や、タイ語、韓国語、など多言語にもかなり早い段階から力を入れています
 多言語の日本語版制作の工程としては、英語のスクリプトから翻訳するケースもあるのですが、誤訳が非常に多かったり、英語の段階で原語と違っているものは検証のしようがないので、クオリティの管理という意味を含めて、可能な限り原語から翻訳をしています。原語から起こした素訳を、英語の映像翻訳者が日本語の字幕や吹替に調整し、また原語の翻訳者がチェックするという工程を取っています。
 英語以外の言語の映像翻訳者をめざす方にとって、映像の特殊なスキルを学ぶ場が少ないという悩みがあると思います。そこで、私どもでは言語に限らず、トライアルに合格して登録していただいた翻訳者には、1本ごとにきめ細かいフィードバックをお返しするようにしています。当社に登録してくださった方には、どんどん伸びていっていただいて、末永くお付き合いしていただければ、と思っています。

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――フォアクロスのめざす映像翻訳
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新井:どの翻訳でもそうだと思いますが、映像翻訳では、やはり日本語力がすごく大切だと思います。とくに新人の方の場合、必要以上に誤訳を恐れて、原文に忠実すぎて、字幕として流したときによくわからないものになってしまうことがあります。
 一つ一つの単語や文章を英語に照らし合わせると正しいのですが、日本語としてはよくわからない。それは、字幕とはいわないですね。字幕はあくまでも、日本語しかわからない方に伝えるのが大前提です。
 翻訳会社や制作会社によって考え方もいろいろだと思いますが、私どもの考え方を言わせていただければ、原語にとらわれすぎず、独りよがりにならず、まっすぐに原文のニュアンスが伝えられるものが、いい翻訳ではないのかな、と思っています。
 日本語力を磨くために、英語の映画だけでなくて、日本語のドラマをたくさん見たり、DVDの吹替えを聞きながら字幕を見る。それもいいトレーニングだと思います。

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――翻訳者養成講座
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新井:翻訳というのは、みなさんもよくわかっていらっしゃると思いますが、正解というものはないと思います。正解がないのであれば、感性とかセンスの部分が似ている方、共感できる方とお仕事したいですね。
 それぞれの制作会社にカラーがあるように、私どもにもカラーがあります。当社からお仕事をお願いする翻訳者には、当社のカラーに合わせた形で仕事をしていただきたいと思っています。
 
  フォアクロスでは8年前から、トライアルに合格した方で、そのなかには経験だけでなく、感性の部分で判断して採用した方もいらっしゃいますが、スポッティングを教えて欲しい、アフレコに立ち合わせて欲しいといったリクエストがあれば、必ずお答えするようにしてきました。制作会社が持っている経験値、プラスアルファの部分をなんとか凝縮してショートカットでお伝えすることができればいいなと思い、今年2月に「映像マルチリンガル」「スポッティング技術」の講座を開講することになりました。今後、パートナーとしてやっていけるような映像翻訳者を、本格的に育成していきたいと思っています。

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