トラマガ
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 【前編】 【後編】
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通学 単科「出版基礎」の講師を務める、文芸翻訳家 鈴木恵氏のインタビューをお届けします。登場人物が勝手にしゃべり出す!?良い翻訳者になるための秘訣とは?

鈴木 恵>(すずき・めぐみ)

★「このミステリーがすごい! 2003年版」で3位になった『わが名はレッド』のシェイマス・スミスの作品は、『Mr.クイン』以外の『わが名はレッド』と『名無しのヒル』は日本でしか出版されていない。「僕が保証するけど、どちらもおすすめです。日本の読者は幸せです」。
★基本的にオフはなし。
★趣味は競馬。仕事をやりながらPATで投票している。競馬好きで知られる田口俊樹先生と府中に行くことも多い。
★山登りも好き。翻訳仲間の加賀山卓朗さんと、このところ毎年山に登っている。
★ミステリー作家ならエルモア・レナードが好き。オフビートなキャラクターが出てきて、物語の展開も常にオフビートなクライム・ノヴェルを書く作家。
★最近の悩みは読書の時間がとれないこと。

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――イメージがわく
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 大学を出てからずっとフリーで舞台の裏方をやっていました。不安定な身分ですが、それなりに生活できたので、そのまま36、7歳まで裏方稼業を続けていました。
 仲間がたくさんいて、毎晩仕事が終わったら酒飲んで、日本中旅して、それ自体はとても楽しかったんですけど、どこかで「このままじゃいけないな」という気持ちもありました。なにしろ生活が安定しないし。仕事にもあまり向上心が持てなかったし。本番中の舞台の物陰とか、休憩中にトイレや人が呼びにこないところで、隠れて本ばかり読んでましたから。
 
 そのうちバブルがはじけて、僕みたいに不真面目なやる気のない人間には、だんだん仕事がこなくなるんですよ。そこで初めて将来のことを真面目に考えました。それが33歳くらいのとき。今さら就職なんてできないので、「自分に何ができるのか」と考えていたら、たまたま雑誌の広告で「翻訳学校」というのがあることを知りました。それを見たときに、具体的なイメージがわいたんですよ。これだったら、できるんじゃないかなって。

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――通信教育からスタート
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 翻訳学校の広告を見てイメージがわいて、まず通信教育を受けてみようと思いました。舞台の仕事は不規則だし、たいてい夜ですから、定期的に学校に通うのは無理だったんです。それに、いくら自分に向いていると思ったとしても、やっぱり半信半疑でしたから。
 受講期間は1年でしたが、修了するのに2年かかりました。普通はひと月に1編ずつ課題を訳して提出するんですが、ふた月まで猶予をくれるんです。だから時間いっぱいまで何度も訳文を推敲しました。
 
 翻訳の学習は、とにかくおもしろかった。夢中になって取り組みました。思った以上にデキもよくて、「通学部に編入してもいい」という通知をもらって、そこからですね、本気になったのは。それで、だいぶ無理をして仕事をやりくりし、通学するようになりました。1年半か2年学校に通って、そのあと師匠の伏見威蕃先生の私的な勉強会に2年くらい通いました。

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――39歳でデビュー
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 勉強会に通っているとき、伏見先生にエージェントのリーディングの仕事を紹介していただいたのが初仕事でした。そのあとエージェントから出版社に紹介していただき、出版社からリーディングをやらせてもらって、そこから最初の一冊、という流れです。舞台の仕事は、一冊自分が訳すことになったとき辞めました。最初の訳書が出たのは1998年で、39歳のときでした。
 あとから考えると、すぐに仕事を辞めたのは失敗でした。やっぱり経済的に苦しかったですね。もうちょっと翻訳で稼げるようになるまでは無謀だったかな、と思います。あのころは訳書さえ出せれば生活は安定すると思っていましたけど(笑)、現実はそんなに甘くないです。翻訳ミステリーに関しては、初版の発行部数がどんどん減っているので、年間3、4冊訳しても生活できない人はできないと思いますよ。
 今も不安はいっぱいです(笑)。そういう意味では、舞台の仕事をしていたころと大差ないのが情けないですね。でも、本を一冊仕上げる満足感は、あのころには味わえなかったものです。

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――ミステリーは「視点」が勝負
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 ミステリーの「視点」というのは、その章や文章は、誰の目で見て、誰が語っているのかということです。無駄のない文章を書くことにつながるポイントはいろいろありますが、これはそのひとつだと思います。
 例えば、視点がはっきりしていれば、原文に「彼」とか「彼女」と書いてあっても、日本語ではそれを削って、整理することができる。そうしていらないものを削っていくと、すっきりとした読みやすい文章になる。反対に、視点がずれたり揺れている文章は読みづらい。僕の授業では、具体的な例をみながら「視点」を中心にミステリーの翻訳について、話ができたらいいなと思っています。

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