ミステリー小説を訳すうえで大切なこととは?
通信講座マスターコース講師の鈴木恵先生に聞いてみました。

  • 先生が翻訳者を目指そうと思ったきっかけを教えてください。

    鈴木先生

     もともと翻訳ミステリーを読むのが好きで、一読者だったころから、翻訳者という職業には関心がありました。気楽そうな商売だなとか、こういうものの翻訳なら自分にもできそうだなとか、それはそれは不遜な考えを抱いていたからです。でもその頃は、翻訳者になる方法がわかりませんでした。

  • 翻訳の学習経験について教えてください。

    鈴木先生

     細かいことはもう忘れてしまいましたが、通信講座→通学→師匠の勉強会→出版社を紹介してもらう、という流れでした。学校で学ぶということは、わたしにとって、入口がわからなかった翻訳者という職業へつづく、いちばんわかりやすい、いちばん確実な扉でした。

  • 近年、北欧ミステリーが注目され、鈴木先生もジョー・ネスボやユッシ・エーズラ・オールスンといった人気作家の翻訳を手がけられていますが、先生が感じる北欧ミステリーの魅力を教えてください。

    鈴木先生

     ジョー・ネスボはむだな描写がなく、伏線の張りかたと回収のしかた、意表を突く展開がとてもうまい作家です。『その雪と血を』(早川書房)と姉妹編の『真夜中の太陽』(早川書房)は、シリーズ作品ではないので、初めてのかたにも取っつきやすいと思います。どちらも短い作品ですが、みごとな手並みを堪能できます。

  • ミステリー小説を翻訳するうえで先生が心がけていること、こだわっていることがありましたら教えてください。

    鈴木先生

     いろいろありますが、ひとつだけあげるとすれば、著者の演出意図に即した表現を心がける、ということでしょうか。登場人物の台詞や場面展開など、著者の意図にぴたりとはまると、キレのいい日本語になり、訳していても愉しいものです。

  • 先生がおすすめのミステリー作品、今注目している作家などありましたら教えてください。

    鈴木先生

     今年はなんといっても、『カササギ殺人事件』(アンソニー・ホロヴィッツ・作/山田蘭・訳/東京創元社)がおすすめです。翻訳もすばらしいので、未読のかたはぜひ。注目しているのは、ミステリーにかぎりませんが、韓国や中華圏の作家です。紹介数が少ないので、逆にまだ、すばらしい作品がいくらでも眠っているような気がします。

  • 先生が担当されるマスターコース「ミステリー」はどんな内容になるか教えてください。

    鈴木先生

    「講座紹介」にも書きましたが、警察小説、犯罪小説、ホラーと、三つの異なる物語をあつかいます。具体的には、6回でふたつの作品の冒頭部分と、ひとつの短篇を(中抜きですが)課題に取り上げます。分量は毎回、ペーパーバックにして3~4ページ。ほかのジャンルの翻訳は学んだことがあるけれど、いわゆる「ミステリー」は初めて、というかたにも受講していただける内容です。

  • これから翻訳を学ぼうと思っている方、もしくは学習中の方にむけて、メッセージをお願いいたします。

    鈴木先生

     広義の「ミステリー小説」を訳したいと思っているかたは、このジャンルの小説や映画に、とにかくたくさん接してください。言葉づかいや、キャラクターのみならず、さまざまなことが身につくはずです。そういうセンスを自分の中に培っておくことが、何よりも大切だと、私は思っています。

鈴木先生
プロフィール

出版翻訳家。『その雪と血を』『真夜中の太陽』『深夜プラス1』『ニューヨーク1954』『アルファベット・ハウス』(早川書房)、『宝島』『自堕落な凶器』(新潮文庫)、『機械男』(文藝春秋)、『ピザマンの事件簿』シリーズ(ヴィレッジブックス)など訳書多数。

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