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契約書を翻訳する際の注意点とは?外注する際のポイントも解説!
本記事では、契約書を翻訳する際の主な注意点と、外部に依頼する際に確認しておきたいポイントを整理しています。
契約書の翻訳が必要になったときに備え、ぜひ参考にしていただければと思います。
INDEX
契約書の翻訳とは?一般的な文書との違い

海外企業に業務を委託したり、業務提携を結んだりする場合、相手国の言語に翻訳された契約書が必要となります。契約書には、業務委託契約書、雇用契約書、秘密保持契約書などさまざまな種類があり、定められた形式に沿って作成、翻訳する必要があります。
契約書は、社内メールや議事録などの一般的なビジネス文書とは性質が異なり、法的な効力を持つ重要な文書です。当事者間の権利や義務を明確にし、誤解が生じないようにすることが求められます。認識のズレがあると、契約の無効や損害賠償といったトラブルに発展する可能性もあります。
そのため契約書の翻訳では特に正確さと明瞭さが重要になります。曖昧な表現は避け、意味が正しく伝わるよう注意を払う必要があります。
翻訳対象となるが必要な契約書の例

契約書には多くの種類があります。
ここでは翻訳対象になることの多い契約書の例を4つ紹介します。
- 業務委託契約書
- 雇用契約書
- 秘密保持契約書
- ライセンス契約書
業務委託契約書
業務委託契約書は、請負契約や委任契約、準委任契約を結び、業務の一部を他社に外注する際に必要となる契約書で、委託する業務の内容や報酬額、契約期間、支払いの条件などを定めます。
海外企業に業務を委託する場合、業務委託契約書の翻訳が必要です。アメリカなどの一部の国では契約書に記載がないことは実施事項として認められない「口頭証拠排除法則」があり、業務内容や支払いの条件など明確に記載する必要があります。
雇用契約書
雇用契約書は、企業と従業員の間で雇用契約を結ぶための契約書で、職務内容や労働時間、報酬額、解雇条件などを定めます。外国人スタッフを採用するにあたり雇用契約書の翻訳が必要となる場合があります。
雇用契約書を英文に翻訳する際は、国の違いによる雇用に関する考えの違いを理解する必要があります。アメリカで一般的なのは、At-Will雇用と呼ばれるものです。
At-Will雇用の場合、企業も従業員も自由に契約を解消できます。日本では正当な理由がなければ従業員の解雇が認められませんが、At-Will雇用では簡単に契約を解消できてしまうのです。
秘密保持契約書
秘密保持契約書は、自社の機密情報に関する取り扱い方法や共有する情報範囲方法について定めた契約書です。機密情報が漏洩したり不正利用されたりするのを防ぐために必要になります。
業務委託契約を結ぶ際に秘密保持契約を同時に結ぶケースが多く、相手が海外企業であれば翻訳が必要になります。また、企業間で共同研究を行う場合にも秘密保持契約が必要となる場合があります。
ライセンス契約書
ライセンス契約書は、知的財産権で保護されている特許や意匠、著作物などの使用条件を定め、第三者に実施・使用などを許諾するための契約書です。自社の著作物などの使用を許諾する代わりに、他社からライセンス料を受け取ることもあります。
たとえば、ある企業の技術を自社製品に組み込む場合に、ライセンス契約を結ぶことがあります。企業が海外の企業であれば翻訳も必要になります。
ライセンス契約書の翻訳を行う際は、相手国の知的財産権に関する法規や法律を理解する必要があります。著作物などの使用範囲や条件が正しく記述されていなければ誤解やトラブルに繋がる恐れがあるため、高度な翻訳スキルや知識が必要です。
契約書を翻訳する際の注意点

契約書を翻訳する際には次の3つに気をつける必要があります。
- 機械翻訳ツールや生成AIが翻訳した文書をそのまま使わない
- 英文契約書と和文契約書の違いを理解する
- 国際取引や法律などの専門知識が必要
契約書の翻訳は一般文書とは性質が異なるので注意が必要です。ひとつひとつの翻訳する際の注意点について詳しくみていきましょう。
機械翻訳ツールや生成AIが翻訳した文書をそのまま使わない
契約書に限った話ではありませんが、仕事で翻訳する際は翻訳ツールを利用して訳した文章をそのまま使ってはいけません。
機械翻訳も生成AIも、その精度は日々向上しており実務でも多く活用されています。しかしツールには思わぬ誤訳が発生するだけでなく、専門用語を正しく使い分けできない、背景を理解して翻訳することができないといった弱点もあります。
ツールを利用してはいけないというわけではありません。しかし必ず人間がチェックし、翻訳文として適切かどうか判断しなければならないという点は理解しておきましょう。
英文契約書と和文契約書の違いを理解する
英文契約書と和文契約書では形式やルールが異なるので注意が必要です。一般的には英文契約書の方が条項の数が多く、更に一つ一つの条項の内容も細かくなっています。
なぜかというと、先にも述べたとおり、一部の国には「口頭証拠排除法則」があるためです。口頭証拠排除法則は英米法における原則で、「契約書に記載されていない事項は、証拠として認められない」とするルールです。実施事項や条件などを細かく記載する必要があるため、文章も長くなります。
対して和文契約書は、文章が短くて簡潔な場合が多いです。日本では信頼関係があることを前提に契約する傾向が強いというのが、原因として挙げられます。
国際取引や法律などの専門知識が必要
契約書の翻訳を行うには、国際取引や法律に関する専門知識が不可欠です。専門知識が全くないと内容を理解するために多くの時間を費やし、納期に間に合わなくなる恐れがあります。また誤訳や訳語選択ミスといった翻訳品質の低下も招きやすくなります。
非常に専門性が高い内容であれば弁護士や行政書士といった専門家が翻訳したり、翻訳のチェックを行ったりする場合もあります。
契約書の翻訳を翻訳会社に外注する際のポイント

契約書の翻訳は、できれば翻訳会社に外注することをおすすめします。
翻訳会社であれば契約書の翻訳実績が豊富な翻訳者をアサインしてもらえます。また弁護士や行政書士といった専門家がリーガルチェックを行うことで高い品質を保証してくれるケースもあります。
翻訳会社に外注する際のポイントは次の4つです。
- 情報漏洩対策を確認する、守秘義務契約を交わす
- 翻訳料金を確認する
- 契約書の翻訳実績が多い会社を選ぶ
- 納期を確認する
ひとつひとつのポイントについて詳しく解説していきます。
情報漏洩対策を確認する、守秘義務契約を交わす
契約書や、そこに添付する参考資料には自社や取引先の機密情報が多く含まれており、それらの情報が外部に漏洩すれば大きな損害を受ける可能性があります。
大半の翻訳会社はクライアントの機密情報を扱うため、基本的な情報漏洩対策は講じています。例えば機械翻訳サービスを使用して少しでも費用を安く抑えたいのであれば、機械翻訳ツールに取り込まれた文章がどのように管理、保管されるのか確認すると良いでしょう。
守秘義務契約や秘密保持契約なども事前に交わすケースがほとんどですが、こちらも発注の際に確認することをおすすめします。
翻訳料金を確認する
翻訳を外注するうえで大切になるのが、やはり費用です。見積り金額には翻訳料金だけでなく翻訳後のチェックや、もし依頼していればレイアウト調整も含まれます。
翻訳が完了した後に原稿に修正が入ってしまった場合の追加料金の有無も、確認しておけば安心です。
費用を抑えたいなら複数社に見積もりを依頼しましょう。翻訳会社の相見積りサイトなどを活用し、各会社の翻訳料金やサービス内容を比較して決めましょう。
もちろん、費用は安ければ良いというわけではありません。特に契約書の翻訳に関しては品質が重要ですので、費用と品質のバランスが取れた翻訳会社を選ぶ必要があります。
契約書の翻訳実績が多い会社を選ぶ
契約書の翻訳実績が多い翻訳会社を選ぶことも大切です。実績が多ければノウハウが蓄積されているため、高い品質が期待できます。なかには契約書や法律文書を専門としている翻訳会社もあります。
ホームページを確認し、信頼できる翻訳会社を選びましょう。
納期を確認する
納期も、依頼先を選定するうえで重要な確認項目です。契約書は専門性が求められるうえに専門家によるチェックが必要なケースもあるため、どうしても一定の時間を要する傾向があります。
納期がタイトであれば特急料金で対応してくれる翻訳会社もありますので、こちらの要望にあわせて対応してくれる翻訳会社を見つけましょう。
問い合わせへの返答が早いか、納品後の追加修正に応じてくれそうかなど、柔軟性や実務のスピード感を事前に確認しておくことも大切です。
契約書の翻訳スキルを身につけるには?
契約書の翻訳スキルの習得は独学では難しいかもしれません。語学力・文章力が高いレベルで求められるうえに、法律知識も必要になるためです。
契約書の翻訳スキルを体系的に習得したい場合、以下の2つの手段がおすすめです。
- 翻訳学校に通う
- 通信講座を活用する
ひとつひとつの学習方法について詳しくみていきましょう。
翻訳学校に通う
契約書の翻訳スキルを身につけるには翻訳学校に通うのが近道です。
翻訳学校は翻訳者を目指すための学校で、初心者がいちから学べる講座もあります。最近は学校に通えない方のために、オンラインで参加できるクラスがたくさんあります。
契約書の翻訳が学べる講座では、契約書の構成や基本表現、一般条項の内容といった専門知識も学べます。プロの翻訳者から直接フィードバックが受けられるため、自分では気が付けなかった誤訳や適切でない日本語表現に気づくことができます。
通信講座を活用する
忙しくて授業に参加できない方は、通信講座を活用することをおすすめします。通信講座では送られてくる教材を読み、自分のペースで学習を進めます。生活スタイルにあわせ、細かい空き時間を利用しながら翻訳を学ぶことができます。
ただ、自分で学習を進めなくてはいけないぶん自己管理能力は必要です。自己管理能力があれば通信講座でも十分学習効果を得ることができます。
おすすめの通信講座はこちら:
ベータ応用講座「契約書」 | 通信講座ラインナップ | 翻訳専門校フェロー・アカデミー
まとめ
本記事では契約書の翻訳に関する基本知識と、実務上の留意点を解説しました。
契約書の翻訳は高度なスキルが必要なうえに国際取引や法律などの専門知識が必要です。専門知識が不足していると、誤訳や分かりにくい表現を生み出してしまう恐れがあります。
そのため、契約書を翻訳する必要がある場合は、翻訳会社に依頼することをおすすめします。翻訳会社に依頼する場合は、契約書の翻訳実績を確認することをおすすめします。
契約書の翻訳スキルを身につけたい場合は、翻訳学校や通信講座の活用が有効です。現役の翻訳者が指導している講座も多く、実務に即した翻訳スキルを効率よく学ぶことができます。
翻訳家を目指すならフェロー・アカデミーへ!
仕事に繋がる翻訳スキルを学ぶなら、翻訳学校がおすすめです。
翻訳学校であれば専門知識と翻訳の実務経験を持つ講師から指導を受けることができ、学習中の疑問点もすぐに解決できます。
また最適化されたカリキュラムのため無駄がなく、効率的に学ぶことが可能です。
「フェロー・アカデミー」ではライフスタイルやレベルに合わせて講座を選ぶことができ、必要な知識やスキルの習得、仕事獲得までサポートが受けられます。
学校パンフレット(電子ブック)をPDFで閲覧できますので、最速で翻訳家を目指す方はぜひお気軽に資料請求ください。コース別の説明会、プラン選びのための学習カウンセリングも実施しています。
この記事の監修

その後、翻訳者を志し退職、フェローアカデミーの「ベーシック3コース」を修了し、翻訳者として5年間活動した後、翻訳者ネットワーク「アメリア」立ち上げに参画、理事長/代表取締役に就任。