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本の翻訳を行うには?
ジャンルや必要なスキル、ポイントを解説!
本記事では、本の翻訳を行うにはどうしたら良いかを解説します。本の翻訳のジャンルや必要なスキル、ポイントについてまとめました。
この記事を読めば、本の翻訳の仕事に就くための第一歩を踏み出せます。小説やエッセイ、ビジネス書などの翻訳に興味がある方はぜひ参考にしてください。
本の翻訳(=出版翻訳)とは?
本の翻訳は「出版翻訳」と呼ばれるのが一般的です。
出版翻訳とは海外で出版された書籍や雑誌を翻訳する仕事を指します。小説やエッセイだけでなく、ビジネス書や専門書、絵本など、内容問わず出版物であれば出版翻訳に分類されます。
出版翻訳の特徴として、翻訳者の名前が著者名と並んで表記される点が挙げられます。本の背や表紙に名前が出ますので、翻訳家として有名になる人もいます。
出版翻訳は身近な存在でもあるため、憧れている方は多いのではないでしょうか。自分が海外で見つけてきた本を翻訳し、日本に届けたいと思う方もいるかもしれません。しかし、本の翻訳の仕事に携わるのは容易ではありません。
出版翻訳家はフリーランスとして活動している
出版翻訳家はほぼフリーランスとして活動しています。フリーランスとは会社に所属せず個人で事業を営み、企業や個人から業務委託で仕事を請け負う働き方を指します。
翻訳者の働き方は様々あります。翻訳会社に就職する、外資系企業や日系グローバル企業で業務の一部として翻訳を行う、海外ゲームのローカライズ会社や映像制作会社に就職する、など。ただ、出版翻訳に関しては出版社や編集プロダクションの社員が行うことはなく、フリーランスの翻訳家に外注されています。
フリーランスの翻訳家は出版社と業務委託契約を結んで仕事を行います。契約を結ぶには、出版社からスキル・実績を評価されなくてはいけません。
一度契約を結んだ出版社からは継続して翻訳が依頼される可能性があります。最初に出版社と繋がりを作ることがもっとも大変であると言えます。
本の翻訳のジャンル
本の翻訳のジャンルには大きく次の2つがあります。
- フィクション
- ノンフィクション
この2つは読者が求めることが異なるため、翻訳においても必要なスキルが異なります。各ジャンルの特徴について詳しく解説していきます。
フィクション
フィクションは小説など架空の創作物を指します。純文学、大衆文学、ライトノベル、児童文学、絵本など、ジャンルは多岐に渡ります。海外の小説を翻訳したものを翻訳文学と呼ぶこともあります。
翻訳文学の中でも児童文学は、年代問わず人気が高いです。「ハリーポッター」や「赤毛のアン」シリーズなどが有名で、映画化までされています。
児童文学に限らず、フィクションには海外作品ならではの魅力があり、日常では得られない独特な世界に触れられることから、日本にもファンが多くいます。
ノンフィクション
ノンフィクションは実際のできごとや事実を元にして作られた創作物を指します。ビジネス書や実用書、自己啓発本などはノンフィクションに該当します。
海外でも日本でもビジネス本や自己啓発本は毎年たくさんの数が出版されており、翻訳もののヒット事例も多いです。『LIFE SHIFT』や『フランス人は10着しか服を持たない』など、書店で目にした方も多いのではないでしょうか。
小説などの翻訳は表現力や人を感動させる力などが求められます。一方、ビジネス書などの翻訳は読みやすさと、その分野の知識が求められます。読者は「その分野の知識を効率よく得て、仕事や趣味で成果を出したい」と考えているためです。
本の翻訳に必要なスキル
続いて、出版翻訳のプロになるのに必要なスキルについて解説します。
出版翻訳の道に進みたいなら、次の4つのスキルを鍛えると良いでしょう。
① 語学スキル
② 文章力・表現力
③ 情報収集能力
④ 読解力
他の翻訳分野と大きな違いはありませんが、出版翻訳の特徴をふまえ、必要なスキルについて詳しく解説していきます。
① 語学スキル
出版翻訳を仕事にするなら、まずは辞書なしですらすら原書を読みこなせる語学力が欲しいところです。正しく読むための文法知識も必要で、語学力に関してはプロになった後も継続的に磨く必要があります。
出版翻訳は競争率が激しい分野でもあるため、一般的な英語好き、得意という方に負けないレベルの語学力があると良いでしょう。
②文章力・表現力
小説やエッセイを翻訳する場合、文章力・表現力が肝になります。
単に日本語に置き換えるのでなく、原書をそのまま読むのと同じように読者が感情移入したり作品の世界を体感したりできるような翻訳でなければなりません。ここが産業翻訳とは異なる点です。
また、ジャンルや読者層に表現をあわせるスキルも必要でしょう。同じミステリーでもハードボイルドとコージーミステリーでは、読んだ印象が違います。また子ども向けであってもその対象年齢によって選ぶ言葉が違います。
たくさんの言葉を知っていて、原文によって正しく使いわけできる、というのが大事なのです。
③情報収集能力
出版翻訳を行う場合、情報収集能力も求められます。1つの小説を翻訳するにも、たくさんの調べものが必要になります。
たとえば、作品の舞台となっている国の文化や風習が分からないと、正確な翻訳ができない可能性があります。大抵のことはインターネットで調べられますが、誤情報も多いため、複数の情報にあたって正しい情報を得ます。
知識があったほうが効率よく調べものができますので、翻訳する前に物語の背景となりそうな情報、例えば町の歴史、政治や暮らし、登場人物の職業といった前情報を入れてから訳すこともあります。
④読解力
出版翻訳を行う際には、原書を正しく読み込める読解力も必要です。
読解力がないとそもそも正しい翻訳ができません。当たり前のことと思われがちですが、小説などの場合はそう簡単なことでもないのです。
小説の場合、あえて矛盾した言い回しを用いたり、直接的な表現を避けたりすることもあります。伏線とその回収もあります。そのため作者の意図や物語の全体像を正しく汲み取らないと、思わぬところで誤訳に繋がってしまいます。
本の翻訳のポイント
続いて、本の翻訳のポイントについて解説します。ポイントは次の3つです。
- 読み手を意識して翻訳する
- 「作品」であることを意識して訳す
- 頭から終わりまでトーンを保つ
これらのポイントを意識しないと翻訳文の質を高めることができません。1つ1つ詳しく解説していきます。
読み手を意識して翻訳する
出版翻訳では読み手が誰かを意識して、文体や表現を選ぶ必要があります。
たとえば子ども向けの本の場合、対象年齢によって難しい言葉を避けたり、漢字をひらがなにしたりふりがなを振ったりします。恋愛小説であればそのロマンチックな世界に浸れるような表現が求められます。
また文化の違いによって、習慣やしぐさの意味が直接伝わらないケースもあります。
その場合は言葉を補うのか、日本の別の習慣やしぐさに置き換えるのか、判断が求められます。ただしアレンジを加えることで作品の雰囲気が損なわれることもあるため、慎重に判断しなければなりません。
原著者が使っている言葉には、その言葉を選んだ意味があるため、原文に寄り添うことが前提です。その上でイメージを壊さず、読み手に伝わるよう訳すのがポイントです。
「作品」を届ける意識で訳す
本は、フィクションであれノンフィクションであれ、「作品」です。よって翻訳家には、作者がこの本をとおして伝えたいことや感じてほしい世界を理解し、それを読者に届けるという意識が大切です。
ある出版翻訳家は「作品の匂いを届ける」という表現をしていました。特に小説のような創作ものでは、原文で味わえる空気や世界を、日本の読者にも同じように体感してもらう必要があります。「作品」を届けるというのは翻訳家の大きな使命といえるでしょう。
頭から終わりまでトーンを保つ
本を一冊訳すというのは大変な仕事です。一日で訳し終えることはまず不可能なので、発注から納品まで、1か月から半年といった長い期間をもらって訳すことが多いです。
翻訳期間が長ければ長いほど、翻訳家の体力、気力、他のコンディションの変化によって、翻訳のトーンが変わってしまうというリスクがあります。例えば、冒頭と後半で、音読した時のリズムが変化してしまうといったことです。
原著者が意図的に変化させている場合は別ですが、作品の品質に影響してしまうようなトーンのばらつきを抑えるのも、大切なポイントでしょう。
本の翻訳の仕事に就くには
本の翻訳の仕事に就くには、次の3つの方法があります。
- 出版社に企画書を持ち込む
- 翻訳コンテストに応募する
- 翻訳スクールを利用する
1つ1つの方法について詳しく解説していきます。
出版社に企画書を持ち込む
出版社に翻訳出版したい本の企画書を持ち込むことで、翻訳家としてデビューする手があります。企画書には本の概要やマーケット観点での考察などを記載します。企画書に加えて、履歴書や、分野問わず翻訳実績でご自身をアピールできればなお良いでしょう。
持ち込む際はあらかじめ出版社に許可を取る必要があります。出版社によっては持ち込みを許可していない場合もあるので注意が必要です。持ち込みで仕事を獲得するのは容易ではありません。とはいえ企画力があり、なぜ売れるのか説得力を持って説明できるなら可能性はあります。
なお翻訳者ネットワーク「アメリア」(要入会)では「出版持ち込みステーション」というサービスを通じて出版社に出版企画を持ち込みたい方をサポートしています。初心者は利用してみると良いでしょう。
翻訳コンテストに応募する
自治体や出版専門の企業、翻訳の専門誌などが翻訳コンテストを定期的に開催しています。コンテストは新人翻訳家を発掘するために行われることもあり、課題として出される本などを翻訳して提出する形式が多いです。
翻訳コンテストで受賞したり実力を評価されたりした場合、翻訳家としてデビューできる可能性があります。もちろん受賞するには他の応募者に負けないレベルの翻訳スキルが必要ですが、機会があれば挑戦してみると良いでしょう。
翻訳スクールを利用する
出版翻訳が学べるスクールでは、実力のある生徒を出版社に紹介するサポートを行っていたり、講師から下訳やリーディング(原書のレジュメを作成する仕事)を紹介してもらったりして、そこから翻訳家としてデビューにつながるケースがあります。
また上級レベルの講座ではすでに翻訳の仕事をしている方もいるため、クラスメイトを通じて出版社や編集者と縁が作れる可能性もあります。
いずれにしろ、本の翻訳の仕事情報は「求人」といった分かりやすい形で公開されることはほとんどなく、チャンスは非常に限られています。本気で仕事にしたい方は、少しでも可能性があるところには全てアプローチする気持ちで取り組むと良いでしょう。
本の翻訳に必要なスキルを学ぶには?
先ほど解説したとおり出版翻訳家になるには、様々なスキルが必要です。スキルは独学でも身につけることは可能ですが、効率が悪くなってしまったり、モチベーションを維持できなくなったりする場合も多いです。
独学が難しい方は次の2つの方法で出版翻訳家を目指すのがおすすめです。
- 翻訳学校に通う
- 通信講座を活用する
1つ1つの方法について詳しく解説していきます。
翻訳学校に通う
翻訳学校は翻訳のスキルを身につけ、翻訳の仕事に就きたい方のための学校で、出版翻訳のコースを用意しているスクールもあります。最近はオンラインの授業が増えているため、近くに学校がなくても学びやすくなっています。
翻訳学校では、翻訳家である先生から直接ノウハウを教えてもらえます。また、初心者が効率的にスキルを習得できるカリキュラムが用意されています。
また、翻訳文の添削を行ってもらえる場合もあり、自分では気づかないミスや分かりにくい点に気がつくことができます。
さらに、学校には一緒に翻訳家を目指す仲間がいます。そのため、独学よりも学習のモチベーションを保ちやすいと言えます。
通信講座を活用する
仕事や学業、子育てなどで決まった時間に授業に参加するのが難しい方は、通信講座の活用がおすすめです。
通信講座なら場所を選ばず、料金も通学より安いので、自分のペースで翻訳スキルを磨きやすいでしょう。
通信講座はテキストや動画教材などを活用して、自分で学習を進めていくため、自己管理ができないとスキルが身につきません。しかし、自分で学習スケジュ―ルがしっかりと組めれば、翻訳家として働く際のスケジュール管理スキルが身につきます。
自分のペースで翻訳スキルを学びたい方は、通信講座の利用も検討してみるとよいでしょう。
まとめ
本記事では、本の翻訳の仕事について解説しました。本の翻訳の仕事に就く方法や必要なスキル、スキルを身につける方法がお分かりいただけたかと思います。
小説やエッセイなど、本の翻訳に憧れる方は多いでしょう。海外の本を翻訳して自分の国の読者に届けられる仕事は魅力的です。
本の翻訳の仕事に就くには、語学力・読解力・表現力などを磨く必要があります。これらのスキルを身につけた後は、企画書を持ち込んだり、翻訳コンテストに応募したりして、出版社との繋がりを作りましょう。
スキルを身につけるために翻訳学校に通う、もしくは通信講座を活用するのもおすすめします。特に学校であれば、独学よりも効率よく知識や情報が得られますし、学習も継続しやすいです。
翻訳家を目指すならフェロー・アカデミーへ!
最速で翻訳を学ぶなら、翻訳学校がおすすめです。
翻訳学校であれば専門知識と業界経験を持った講師による指導を受けることができ、学習中の疑問点をすぐに解決できます。
また最適化されたカリキュラムのため無駄がなく、効率的に学ぶことが可能です。
「フェロー・アカデミー」ではライフスタイルやレベルに合わせて講座を選ぶことができ、必要な知識やスキルの習得、仕事獲得までサポートが受けられます。
学校パンフレット(電子ブック)をPDFで閲覧できますので、最速で翻訳家を目指す方はぜひお気軽に資料請求ください。コース別の説明会、プラン選びのための学習カウンセリングも実施しています。
この記事の監修
その後、翻訳者を志し退職、フェローアカデミーの「ベーシック3コース」を修了し、翻訳者として5年間活動した後、翻訳者ネットワーク「アメリア」立ち上げに参画、理事長/代表取締役に就任。