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翻訳者として働くメリットとは?
業務内容ややりがいについて解説

翻訳家の役目は、本や文書などの「文字情報」を、原語が分からない読み手に向けて別の言語で再現することです。
通訳者のように人前に出ることはあまりない翻訳家ですが、縁の下の力持ちとして大きなやりがいがあります。

今回は 翻訳家がやりがいを感じる瞬間と大変だと思うポイントをご紹介します。

 

翻訳家の仕事内容

まずは翻訳の分野と、翻訳フローについて確認しておきましょう。

翻訳の主な分野

翻訳には大きくわけて3つの分野があります。

出版翻訳
小説や絵本、雑誌など出版作品の翻訳です。原文のニュアンスや細かい人物の感情表現、情景描写が求められます。

実務翻訳(ビジネス翻訳、産業翻訳)
マニュアルや契約書、マーケティング文書などビジネスに欠かせない文書の翻訳です。原文を正しく理解するための専門知識が求められます。

映像翻訳
映画やドラマ、ドキュメンタリーなど、映像を伴う情報の翻訳です。字幕と吹替があり、ルールや制限を守りながら訳す必要があるため非常に高度なスキルが求められます。

また、翻訳原稿を納品するまでに下記のようなプロセスがあります。

  • 指示内容の確認
  • 原文の読み込み、リサーチ
  • 翻訳作業
  • 校正、修正
  • 翻訳会社やクライアント側とのやりとり
  • 進捗管理

近年、AIを活用した自動翻訳が発展していますが、まだまだ精度が低く細かなニュアンスまでは訳せません。
文脈や背景を汲むことも苦手とするため、自動翻訳の技術が進んだとしても校正や修正は翻訳家の重要な仕事になるでしょう。

翻訳家としてやりがいを感じるときは?

翻訳は優れた語学力を発揮でき、多くのやりがいが感じられる仕事でもあります。
好きな作品を翻訳してファンに届けることができたり、最新の研究結果を訳してビジネスに役立てることができた時は、人々の役に立っていると感じやすいでしょう。

ここからは翻訳家としてやりがいを感じるポイントをご紹介します。
ポイントは次の4つです。

  • 異なる言語間の橋渡し役になれたと感じた時
  • 人々の役に立っていると感じた時
  • 大型のプロジェクトが成功した時
  • 新たな知見が得られた時

ひとつひとつのやりがいポイントについて詳しく見ていきましょう。

異なる言語間の橋渡し役になれたと感じた時

翻訳家がもっともやりがいを感じる瞬間は、異なる言語間の橋渡し役になれたと感じたときでしょう。
特に海外の小説や映画といった作品を翻訳して作品の魅力を伝えられたとき、翻訳家としての能力が活かせたと感じるようです。
例えば『ハリー・ポッター』シリーズは世界中で73の言語によって翻訳され、日本でも大人気となりました。多くの人がこの作品の魅力に触れることができたのは翻訳家のおかげです。
自分が関わった作品を世の中に届けることができた時は、大きなやりがいを感じるでしょう。

人々の役に立っていると感じた時

翻訳家は仕事を通じて人の役に立っていると実感できるときがあります。
たとえば、医療論文を翻訳して新しい治療薬の開発に貢献したり、ニュース記事を翻訳して最新の世界情勢を発信したりと、翻訳家は情報伝達を支える大きな存在です。

世界中の人とコミュニケーションを取るには言語の壁は厚く、ビジネスシーンでも翻訳家は非常に重要な役割を担います。
海外支社から送られてきた文書を翻訳したり、技術書を社内マニュアルとして整備したりと企業のなかでも縁の下の力持ちとして活躍できるでしょう。

大型のプロジェクトが成功した時

難しい大型プロジェクトを成功させたときは、翻訳家としてのやりがいや成長が感じられるでしょう。
基本的に翻訳家は独りの作業が多いですが、大きなプロジェクトに参画するとチームメンバーと協力して翻訳作業をするケースがあります。

プロジェクトが大きくなればなるほど、携わるメンバーも増えるため、翻訳の精度や進行管理は大変です。
しかし、自分の翻訳がチームに貢献できたと感じれば、大きなやりがいを感じられます。

翻訳家が大型プロジェクトに携わるケースとしては、マニュアル翻訳や調査報告など、専門的でボリュームの大きい案件である事が多いです。

新たな知見が得られた時

翻訳家は得意な分野、専門分野を持って活動する方が多いため、その分野に関する知識、情報が蓄積されやすくなります。
得た知識は翻訳の質を高めることにもつながり、翻訳スキルの向上にもなります。

専門外の翻訳分野に携われば、異なる知見が得られるのも翻訳の仕事の醍醐味でしょう。
仕事をすればするほど新たな知識が増えていくのは、翻訳家としてのやりがいといえるでしょう。

翻訳家が大変だと思うポイント

翻訳家はやりがいのある仕事ですが、当然大変なこともあります。
ここからは翻訳家が大変だと思うポイントをご紹介します。
ポイントは次の3つです。

  • 専門知識が必要なこと
  • 日本語にない概念を翻訳すること
  • 原文の意図を読み取ること

ひとつひとつのポイントについて詳しく見ていきましょう。

専門知識が必要なこと

翻訳家として働くには、高い語学力と翻訳する分野の専門知識が必要です。
たとえば、医療分野の翻訳であれば、医学用語や論文を理解するスキルが必要ですし、法律分野であれば用語のほかに事例などを調べるスキルが求められるケースもあります。
特に特定の分野に特化せず、さまざまな分野の翻訳に携わっている場合は、受注する分野ごとに背景や専門用語を調べなければなりません。

また、翻訳する文章によっては文化や政治情勢も理解する必要があります。
海外の変化に対応するため、知識や情報を常にアップデートし続けなければならないのは翻訳家にとって大変な点といえるでしょう。

日本語にない概念を翻訳すること

翻訳する言語によっては、日本語にない概念が存在します。
日本ではあまり浸透していない概念を的確に表現するには、優れた語学力だけでなく、創造性や表現力も求められるでしょう。

原文の意図を崩さずに新たな概念を翻訳するのは非常に難しい作業であり、翻訳家としても経験やスキルが試されます。
翻訳家として培ってきた文脈の理解力、翻訳分野の知識など、あらゆる知識を総動員して訳すのは、翻訳家が大変だと感じる瞬間でしょう。

しかし、新しい発見ができるのは翻訳家としてやりがいを感じる瞬間でもあり、成長するきっかけでもあります。

原文の意図を読み取ること

翻訳家の仕事は原文の意図を正確に読み取って表現することであり、細かいニュアンスも含めて正しく理解しなければなりません。
同じ言葉でも文化が違えば意図が異なるケースがあり、読み取るのは簡単ではないでしょう。

特に小説や映画などの作品翻訳は、登場人物の気持ちを読み取るだけでなく、背景や作者の意図も推測しながらの翻訳が必要です。
意図を理解しきれずに翻訳すると作品の魅力が伝わらないため、翻訳する責任が重く大変だと感じてしまうのではないでしょうか。

翻訳家として働くメリット

翻訳の仕事は、最初のうちは特に大変だと感じることが多いかもしれません。
しかし実力が身についてくるとやりがいを感じられる瞬間も増えていきます。

また、やりがいとは別に翻訳家として働くメリットもあります。
大きなメリットは次の3つです。

  • 自分のペースで働ける
  • 在宅勤務できる
  • 専門知識が身につく

ひとつひとつのメリットについて詳しく解説します。

自分のペースで働ける

翻訳家として働くメリットの一つは、自分のペースで働けることです。
もちろん、納期を厳守することが大前提ですが、フリーランスであれば好きな時間、好きな場所で翻訳をすることができます。
翻訳家はフリーランスで活躍している人が多く、定年がないため何歳でもチャレンジできる職種です。
最初は難しいかもしれませんが、実力がつけば自分のペースで仕事を進めやすくなります。

プライベートの時間を大切にしたい、心身の健康のために自由に働きたいという方にとって、翻訳家の働き方は魅力的でしょう。

在宅勤務できる

翻訳家は、企業勤め、フリーランス問わず在宅勤務が可能な職業です。
企業によって出勤が必要な場合もありますが、在宅勤務であれば基本的に住む場所を問いません。
ただ、人によって自宅は気が散ることも多いので、たまには出勤したり、コワーキングスペースを利用したりするほうが、集中出来る可能性もあります。

専門知識が身につく

翻訳家はさまざまな分野の専門知識が身につきやすく、自身のキャリアへの自信やスキルアップにつながります。
専門知識は翻訳の質を高めるだけでなく、その分野のエキスパートとして重宝されやすくなります。

翻訳家は専門性の高い分野で活躍している方が多く、たとえば下記のような専門知識が身につきます。

  • 医療
  • 法律
  • 金融
  • IT
  • 化学
  • 文化

好奇心旺盛な方であれば、楽しみながら翻訳に関わり続けることができますので、ぜひチャレンジしてみてください。

翻訳家に求められるスキル

ここからは翻訳家になるにはどうしたら良いのかを解説します。1から目指す場合、翻訳家に求められるスキルを1つずつ習得していく必要があります。

翻訳家に特に求められるスキルは次の3つです。

  • 語学力
  • 日本語の文章力
  • リサーチ力

まずはこれらのスキル習得を目指しましょう。各スキルの詳細やスキルを身につける具体的な方法について見ていきます。

語学力

翻訳には原文の内容を正確に理解するための語学力が必要です。
スピーキングやヒアリングより、リーディングやライティングのスキルが重要です。

語学力を高める一般的な方法としては、TOEIC900点以上を目指す、英検準1級や1級の合格を目指す、英字新聞や海外サイトを読む、海外に留学する、といったことが挙げられます。

翻訳家にとって語学力はコアスキルと言えるでしょう。

日本語の文章力

翻訳家には文章力も求められます。英語から日本語に翻訳する場合、どれだけ英語力が高くても、日本語の文章力がないと、質の高い訳文を作成することはできないでしょう。

訳す方法として、直訳と意訳があります。
直訳とは原文の文法構造を崩さずに、1語ずつ置き換えていく方法のことです。
意訳とは原文の意図、文脈、文化的背景なども理解し、必要に応じて単語や文章構造にとらわれることなく自然な日本語になるように工夫することを指します。翻訳においてはこの「意を汲んで訳す」=意訳が必要となります。「意」が読み手に適切に伝わるような文章力が求められます。

文章力を高めるには、実際に翻訳文を作成するトレーニングが必要です。その際は、自分の文章を第三者に読んでもらうと効果的でしょう。
翻訳学校では、現役の翻訳家に翻訳文を添削してもらえます。自分では気がつかない思い込みや分かりにくい表現などを指摘してもらえるため、上達スピードを早められます。

リサーチ力

翻訳作業を行う際は、原文を深く理解するために必ずリサーチを行います。リサーチによって背景知識を抑えておかないと、専門用語を見落としたり、文章の目的や書き手の意図を汲み取れなかったりするため、確実に翻訳の質が下がります。

ビジネスの分野であれば、翻訳対象となる業界知識を持っていたほうが、リサーチがスムーズです。
エンタテイメント作品であっても、地名や商品名といった固有名詞、史実など、「知らないこと」がしょっちゅうでてきますので、都度リサーチします。

翻訳家は辞書や専門書、インターネットなど活用できるものはすべて活用します。
インターネットは効率よく、効果的に調べるための検索スキルが役立ちます。情報の信頼性を見極めることも重要で、個人が発信する情報ではなく企業や公的機関が発信する情報を確認するようにしましょう。

翻訳家のキャリアプラン

最後に翻訳家としてのキャリアプランや平均年収について確認しておきましょう。

翻訳家の主な働き方

翻訳家として働くには2つの選択肢があり、企業に就職するか、またはフリーランスとして活動するかです。

企業に就職する場合、勤務時間や勤務地といった勤務条件は会社との契約に準じる必要があります。
また、翻訳会社に就職するか、一般企業に就職するかで、求められる業務内容が異なる場合もあります。

フリーランスの場合、自分で好きな分野、ジャンルの翻訳案件が選べるものの、営業や経理や総務にあたる業務も全て自分で行います。勤務時間や受注量など自分で決めることができるのも、自己責任が大きい一方フリーランスのメリットとも言えます。

翻訳家の平均年収

厚生労働省のサイトを確認すると、翻訳家の平均年収は約700万円といわれています(※参考)。
ほかの職業よりも平均年収が高めですが、専門性や優れた語学力がなくては務まりません。
また、厚生労働省のデータはあくまでも会社員として働いている翻訳家の平均であり、フリーランスの年収も含むと大きく変動する可能性があります。

特に翻訳家は経験やスキルによって差が出やすく、年収1,000万円を超える翻訳家もいれば収入が不安定な方もいます。
しかし必要とされる情報が増え、新しいサービスや技術、作品が生まれ続けている以上、翻訳家が活躍できるシーンが増え続けるでしょう。

※参考:翻訳者 – 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))

翻訳の仕事に関するよくある質問

最後に、翻訳の仕事に関するよくある質問をまとめした。

Q.翻訳家の働き方は?

最も多い形態がフリーランスです。フリーランスの翻訳家は翻訳会社と業務委託契約を結び、案件ごとに受注します。
その他、法律事務所や特許事務所に在籍して翻訳に携わる方法や、一般企業に就職し、社内外向けの翻訳を担当する方法もあります。

Q.今後、翻訳家の仕事がなくなる可能性はありますか?

翻訳家の仕事が急になくなる可能性は低いと予想されます。

最近はAIの進化が著しく実用化が進んでいるため「AIによって翻訳家の仕事が奪われるのでは?」と心配する方もいるかもしれませんが、AI翻訳の精度は現状不十分です。

誤訳や訳抜けだけでなく、文脈や背景を無視したり、言葉の選択が正しくないこともあります。クライアントが望まない翻訳結果となる場合が多いため、そのまま納品するケースはほぼなく人間の目でのチェックと修正が必要です。
AIが生成した翻訳文を修正する必要がある以上、翻訳家の仕事はなくならないと言えます。

Q.翻訳家に向いている人の特徴は何ですか?

外国語、母国語問わず、言葉への高い関心と理解力があることです。
さらに好奇心が強い人の方が、翻訳家に向いていると言えます。翻訳家はリサーチに多くの時間を費やすため、好奇心が強く、分からないことを深く調べられる人の方が、質の高い翻訳文を作成できます。

一人で長時間集中作業を行う仕事なので、集中することや自己管理が得意な方も向いています。
また翻訳には必ずクライアントがいますので、納期厳守はもちろん、レスポンスの速さ、クライアントの要望を受け入れ迅速に対応できるスキルがあれば「仕事がしやすい」という高評価につながります。一般的なビジネス素養を持っている方のほうが向いているでしょう。

まとめ|自分の知識がやりがいにつながる翻訳家

翻訳家には他の職種にはない大変な部分もありますが、やりがいの多い仕事です。
言葉の壁を乗り越えてさまざまな分野の翻訳をするのは、苦労でもあり楽しくもあるでしょう。
人の役に立ちたい方、海外の最新事情に興味がある方にとって、翻訳家は非常にやりがいの感じられる仕事ではないでしょうか。

実力ある翻訳家を目指すには学び続ける意識も重要ですが、やりがいを感じながら成長することが重要です。
ぜひ楽しみながら自己研鑽を続け、翻訳家としてのスキルを磨いていきましょう。

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この記事の監修

フェローアカデミー理事長 室田陽子
フェローアカデミー理事長室田 陽子
学習院女子短期大学卒業後、株式会社サンリオに入社。4年間グリーティングカードの企画に携わる。
その後、翻訳者を志し退職、フェローアカデミーの「ベーシック3コース」を修了し、翻訳者として5年間活動した後、翻訳者ネットワーク「アメリア」立ち上げに参画、理事長/代表取締役に就任。

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