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『セインツ ―約束の果て―』

ケイシー・アフレックと『ドラゴン・タトゥーの女』のルーニー・マーラという二人の実力派俳優が織りなす、引き裂かれた恋人たちの切ないドラマ『セインツ ―約束の果て―』。
字幕翻訳を手がけた浅野倫子さんにお話をうかがいました。
『セインツ ―約束の果て―』
『セインツ ―約束の果て―』
【作品紹介】
犯罪を繰り返していたボブとルースのカップルは、ルースの妊娠を機に足を洗おうと決意するが、最後の銀行強盗で警官たちと銃撃戦になり、仲間のフレディが死亡。いっぽう保安官のパトリックもルースの銃撃で重傷を負うが、ボブが彼女の罪をかばって収監される。4年後、女手一つで娘を育てるルースのもとに、ボブが脱獄したとの知らせが入る。警察と、かつて裏切った組織の悪漢の両方に追われながら、ボブはルースのもとを目指す。

■監督:デヴィッド・ロウリー
■出演:ケイシー・アフレック、ルーニー・マーラ、ベン・フォスター

テキサスの自然と、登場人物の関係の移り変わりが見どころ
脚本がよいので、字幕が説明過多にならないよう気をつけました

70年代のテキサス州が舞台で、とにかくテキサスの自然をとらえた映像が美しくて、サンダンス映画祭で撮影賞に輝いたのもうなずけます。

メインの登場人物である脱獄犯のボブ、恋人のルース、そして彼女を見守る保安官のパトリックもそれぞれに魅力的。パトリックはルースに恋心を抱くようになり、ルースはボブの帰りを待ちながらもパトリックの想いに気づいて苦悩する。この3人の人間関係の移り変わりも見どころです。

 

ヒロインのルースに関しては、同じ女性としてセリフが作りやすかったですね。二人の男性の間で揺れる気持ちや、母として強くならなければと思いながらも過去のならず者としての人生を捨て去れない境遇などを意識して訳しました。それから男性キャラの一人称は、ボブは「俺」で通しましたが、パトリックがルースに向かって話すときは前半を「私」にし、途中から「俺」に変えることで、心の距離感の変化を出すようにしました。

 

特にボブの手紙の文面は、訳し方に気をつけた部分ですね。ルースに熱い胸の内を伝えるわけですが、手紙なので口語とは違う語り口にしないといけないですし、しかもその手紙には検閲が入ることもあるので、それを前提にどんなさじ加減で書くだろうと考えながら訳しました。

 

もともとの脚本は、余計なことを語り過ぎないところによさがあったので、字幕も説明過多にならないように気をつけました。作品のカラーによってはセリフに味付けを求められることもありますが、基本的に脚本のよい作品は味付けせず、そのまま脚本に沿って訳すよう心がけています。まず作品全体をとらえてからどういうトーンのセリフがふさわしいのか、という線を決めて、あとはその線がブレないようにセリフを作っていく、という感じですね。

震災の年、映画祭で上映された翻訳作品が最優秀賞に
被災地でのイベントも実現し、忘れられない思い出となりました

2011年の東日本大震災を機に、石巻市出身の自分は翻訳で地元に何ができるだろうと考え、その年の夏に東京で開催された子ども向けの映画祭「キンダー・フィルム・フェスティバル」のボランティアに関わることにしました。そのとき翻訳した『どうぶつ会議』が最優秀作品賞と観客賞を受賞したのは嬉しかったです。それを機に、キンダー・フィルムさんに石巻でも上映会ができないだろうかと相談をもちかけ、翌年2月には翻訳仲間ほか大勢の有志の力でアニメ上映会の開催が実現。声優の戸田恵子さんも企画に賛同くださり、現地でのライブ吹替が行われました。人々の復興への思いが結集し、被災地での有意義なイベントが開催されたのは忘れられない思い出です。震災が起きてしばらくは、お世話になっているクライアントの方々もいろいろと気を遣ってくださり、自分はよいクライアントに恵まれたな、この仕事をしてきてよかったな、と思えました。

自分の翻訳ペースを知っておくと、チャンスのときに不安にならない

私はフェロー・アカデミーでアンゼたかし先生のゼミを受講していたのですが、アンゼ先生にはゼミを修了してからも何かとお世話になりっぱなしです。これまで翻訳をやってきて何度か大きな壁に突き当たることがありましたが、そのたびにちょうどいいタイミングでアンゼ先生から仕事のことでお声かけいただき、それが立ち直るきっかけにもなっています。もう先生には足を向けて寝られません。そもそも忙しくて寝てないこともありますが(笑)。

 

私自身も、自分が仕事で手一杯のときは、ゼミ出身の仲間や受講中の方に翻訳をお手伝いいただいています。みなさんアンゼ先生から教わっていることがある程度共通しているので、お願いしやすいですね。私の場合、仕事を紹介しやすいように、それぞれの方の得意分野やスケジュールなどをできるだけ把握するようにしています。その経験から言うと、翻訳者の方はクライアントに得意分野、詳しいこと、空き状況などを知ってもらったほうが、仕事を頼まれやすいと思いますよ。

 

学習段階から、自分が1本の作品をどのくらいのペースで翻訳できるかを知っておくと、いざ仕事のチャンスが来たときに、できるかどうか不安を抱かずに引き受けられると思います。例えば45分もののドラマなら5日くらい、90分の映画なら10日くらいを目安にして、普段の生活の合間に訳し通せるかチャレンジするとよいでしょう。

 

仕事を始めてからは、同業者どうしの交流、いわば「横のつながり」も大事です。いろんな翻訳者さんと話をすると、業界についての貴重な情報を共有できるのはもちろん、どういうキャリア、レベルでどのくらいの報酬を得られるものなのか、というポジショニングの参考にもなります。 今は昔に比べると新人が参入するためのハードルは下がっていると思います。DVDになる前に短期間だけ劇場でかかる映画も多いので、早くから劇場公開作を手がけられるチャンスも増えているのではないでしょうか。

取材協力

浅野倫子さん

単科、映像翻訳コースを修了、さまざまな映画、海外ドラマなどの翻訳を手がける。『人生はマラソンだ!』『チェンナイ・エクスプレス 愛と勇気のヒーロー誕生』『旅人は夢を奏でる』『スヌーピーとかぼちゃ大王』(字幕)、『ラスト・シャンハイ』『神弓』『Life 真実へのパズル』『HUNTED ハンテッド』(吹替)『サンタクロースになった少年』(字幕・吹替)など翻訳作品多数。

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