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CIOMS翻訳を徹底解剖

WHO(世界保健機構)とユネスコにより設立された、CIOMS(Council for International Organizations of Medical Science:国際医学団体協議会)。
各国の医学関連団体や研究グループ、行政機関がメンバーとなり、国際的な医学・生物学関連の研究促進を目指しています。
医薬品の安全性情報は、CIOMSが定める書式で報告されるケースが多く、翻訳が必要とされています。このCIOMSフォームに関する翻訳について、ご紹介します。

CIOMSフォームの翻訳

国内外の製薬会社が日々取り組んでいる新薬開発。

医薬品の効果と安全性を確認するための臨床試験(治験)中、または製品化された後に、医薬品を摂取した人に“あらゆる好ましくない出来事”が起こった場合には、医師や薬剤師は報告を行うことになっています。

この“あらゆる好ましくない出来事”とは、身体に起こった症状以外(性格や嗜好が変化した、など)も含まれ、有害事象(AE:Adverse Event)と呼ばれます。

また、ある医薬品と有害事象との因果関係が全くないとは言い切れない、という場合、その医薬品を「被疑薬」、そしてその有害事象を「副作用」といいます

有害事象が海外で報告される際に使用される定型書式の代表的なものが、CIOMS(Council for International Organizations of Medical Science)の定めたCIOMSフォームです。

 

製薬会社は、自社の医薬品が海外で被疑薬とされていた場合、副作用の程度や添付文書の内容などから判断し、必要に応じて厚生労働省に速やかに報告を行います。この過程でCIOMSフォームの報告内容を和訳する業務が生じます。国内での報告内容を海外の会社に送る際には、英訳してCIOMSフォームに整える必要があります。つまりCIOMSフォームの翻訳は、製薬会社や治験業務を代行するCRO(Contract Research Organization:医薬品開発業務受託機関)と呼ばれる企業の内部で、英日・日英を問わず日常的に発生しているのです。報告のプロセス全体は短期間で進行するため、翻訳者にもスピーディーな対応が求められます。

 

CIOMSフォームには、薬剤名、投与期間、有害事象の発現日といった多くの項目があり、翻訳の際には書式について理解し、情報を正しく整理しなければなりません。また、副作用などの名称は、ICH(日米EU医薬品規制調和国際会議)が作成したMedDRAという国際的な医薬用語集に従います。

文系出身、翻訳会社勤務を経てフリーのメディカル翻訳者に!
新井華澄さんインタビュー

実は私はもともと大学は文系で、卒業後は印刷会社を経てコピーライターをしていました。その時期に、副業で調剤薬局に助手として勤めたことがあり、そこで薬への興味を持ち始めました。ただ、そのときはまだ医薬翻訳を仕事にするという選択肢は頭になくて、全く違う分野で自分なりのスキルをつけたいと思っていました。そこでまず文芸翻訳を志すことにしたんです。もともと文学作品と英語が好きでしたし、どこにいてもできる仕事という点も魅力でしたから。

 

好きで学び始めた文芸翻訳ですが、好きであるがゆえに翻訳上のルールにとらわれたくないと思う自分を発見し(笑)、これは私が仕事にするのは厳しいかな、と……。それで実務翻訳にも目を向けるようになり、とりあえずいろんなジャンルを試そうと講座を受講してみました。実務翻訳はいざ始めてみると、左脳的というか、ルールに従って訳すことが逆に心地よく、データ収集が嫌いじゃないこともあって、仕事としてはむしろ自分の性格に合っていると思えました。実務翻訳の中でも、医薬や特許は専門性が高いだけに需要があるらしい、ということで、メディカルの翻訳に興味を持つようになりました。

 

その後、勤めていた薬局を退職することになり、翻訳者ネットワーク「アメリア」で転職先を探していたところ、医薬専門の翻訳会社から翻訳チェッカーの求人が出ていたので、応募したところ採用されました。その翻訳会社から複数の大手製薬会社に出向して、副作用情報の入力や安全性の評価、文献の翻訳などを行うというのが業務内容でした。さらに当時は、ちょうどその翻訳会社で翻訳の需要が増えたこともあり、私は名乗りをあげて、土日には在宅で翻訳業務を請けるようになりました。

 

2年ほど勤務したところで、そろそろフリーになりたいと考えるようになり、退職する少し前から他社のトライアルに応募したり、翻訳者登録サイトで自分の経歴を公開したりしていました。そういったアプローチが実り、退職してフリーになった年の暮れには、2社からコンスタントにお仕事をいただけるようになっていました。

 

翻訳会社での経験は、その後の翻訳の仕事にとても役立ちました。当時できた人との縁も貴重な財産ですね。例えば在職中から製薬会社のほかの部門にいる方々と、有志で医薬翻訳の勉強会を行っていたんです。自分とは別の業務に関わっている方々と情報交換ができるのはとても有意義でした。また独立後には、会社時代の友人が翻訳会社のコーディネーターになって、その方がトライアルを勧めてくれたおかげで登録を果たすことができました。

 

フリーになってから翻訳したメディカル文書には、学会の抄録の要訳、前臨床(動物実験)や臨床、新薬開発、海外の医薬品関連雑誌など、さまざまですが、その中でも安全性情報、特にCIOMS関連のものが多いです。

 

独立して間もない頃はとにかく仕事を断れなくて、どんなに大変でも引き受けていたんですが、フリーランス3年目頃から「無理をしすぎないこと」が大事かなと思うようになりました。自分が常に一定の品質で訳せるペースを把握しておく、ということです。また、クライアントとのやりとりを円滑に行うことも大事ですね。メールだけで相手の顔が見えないまま仕事をすることも多いため、よい印象を保つことで、継続して仕事を頼みたいと思われる翻訳者でいられるよう心がけています。

 

今後は、翻訳に関していえば、英訳の仕事の割合を増やしていきたいです。今は和訳と英訳が8:2くらいで、英訳の依頼にはどうしても尻込みしてしまうんですが、需要は大いにあるので、自信を持って請けられるようになりたいですね。翻訳以外に関しては、旅行が趣味なので、いずれ1年間くらいどこかへ長旅に出たいなあ、と思っています。自分で文章を書くことも好きなので、翻訳と執筆の仕事を並行していければ理想的だな、と思います。

取材協力

新井華澄さん:

大学の人文学部英語学科を卒業。薬店に勤務しながらフェローの通学講座で実務翻訳・出版翻訳を学習。その後、医薬専門の翻訳会社から製薬会社に出向し、副作用報告関連業務や文献翻訳などに関わる。2006年にフリーの翻訳者として完全独立。医薬全般の翻訳を中心に手がける。

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