伊藤由美子さん
作家の村上春樹さんが翻訳も手がけていることから、翻訳の仕事に興味を持つ。2005年に「カレッジコース」を修了、映像日本語版制作会社でのオンサイト勤務を経て、映像翻訳者として独立。現在は、映画、ドラマ、ドキュメンタリー、インタビュー、企業映像など幅広いジャンルの字幕と吹替を手がける。
翻訳の世界に興味を持ったものの、実務、出版、映像のうちどの翻訳が自分に合っているのかがわかりませんでした。まずはすべてを学びたいと思い、「カレッジコース」に入学しました。 授業では3分野それぞれのプロに教わることができ、業界の雰囲気を感じ取ることができました。私を含め、つい格好よく、頭の良さそうな翻訳をしてしまう人が多いのですが、「読者にとって分かりやすい翻訳」はどの分野の翻訳においても求められます。1年間勉強し、先生方の翻訳を見て、それがとても大事なことだと感じました。実際に、翻訳の仕事を始めた今、当時の教えが活きていると感じます。
カレッジコース受講中の10月頃に、仕事へのアプローチを始めました。翻訳者ネットワーク「アメリア」の求人情報を見て、2社に応募し、映像日本語版制作会社に勤務することになりました。
入社時は、制作アシスタントとして備品管理など雑用がメインでしたが、3~4カ月後には、CS放送の映画、ドキュメンタリーなどの制作進行、字幕チェックを任されるようになりました。入社1年後には、担当クライアントを複数持ち、受注から翻訳手配、チェック、納品までの全工程を1人で担当し、やがて制作部のチーフとなりました。長編映画を1本、字幕翻訳したのもちょうどこの頃です。
翻訳制作の現場で働いたことで、さまざまな翻訳者の訳文に触れることができ、良い字幕、良い吹替とは何かを肌で感じることができたと思います。悪い翻訳だと作品を見ていてもあまり頭に入ってこず、慌ただしい気持ちになりますが、良い翻訳だとゆったりした気持ちで作品を見ることができます。やはり「分かりやすい」ことが重要であり、相手に伝わらないと意味がないと再確認しました。
制作会社の勤務を経て、現在はフリーランスの映像翻訳者として、字幕・吹替の両方で仕事をしています。 「日本語版制作の工程を把握しながら作業できる」「この作品に何が求められるのかが分かる」など、制作会社にいた経験がフリーになった今、仕事に活かせています。また制作会社時代に字幕翻訳ソフトで完璧なスポッティング(字幕を表示するタイミングを決めること)をとれるようになったことも1つの強みです。スポッティングがよくないと、クライアントがタイミングを全部修正することになりますし、字幕の内容を変えなければならないことも出てくるからです。
映像翻訳では、法律、ラブロマンス、ホラー、アクション、戦争、コメディなど様々なジャンルの仕事が入ってきます。その都度リサーチをして知識を補いながら、自分の経験を総動員しています。これからもいろんなことに挑戦し、いろんな人と交流して、翻訳の仕事に活かしていきたいと思います。
(このインタビューは、2013年7月当時の内容です)
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