英語と日本語の発想の違いを理解する
実務翻訳で必要なのは「内容を正しく論理的な言葉で説明する力」。
そのためには、英語と日本語の文章構造や論理的表現スタイルの違いを理解し、その言語にあわせて表現する必要があります。
ポイントとなるのは「動詞」。この講座では「動詞の働き」に着目しながら文章全体の意味を掴み、実務翻訳の基本と言われる「3C=明快(Clear)、正確(Correct)、簡潔(Concise)」で訳す手法を学びます。
この手法をマスターすればどんなジャンルにも対応でき、長い文章や複雑な文章も、自然に訳せるようになります。
「動詞の働き」とは
テキスト『BETA』では、実務翻訳で頻出する動詞で、自然に訳しにくい動詞を中心に集めています。
たとえば、cause,result in,lead to,mean……、
一見難しくなさそうですが、理解しておかなければならないのは「働き」です。
上記の動詞には、主語と目的語を「原因と結果」という≪因果関係≫で結ぶ働きがあります。
次の文を訳してみましょう
Poor service will cause customers to go elsewhere.
causeを辞書どおり「引き起こす」と置き換え、「悪いサービスは客が他に行ってしまうのをひき起こす」と訳すと、意味は通じますが少し不自然です。
このcauseは、上で述べたとおり主語と目的語を≪因果関係≫で結ぶ働きがありますので、「~によって……なる」のように、原因と結果が明確になるように訳す必要があります。
さらにこの英文は、“Poor service”を主語とした無生物主語の文章です。英語でよく見られる無生物主語は、日本語では主体を「人」に変換したほうが、自然な文章になる場合が多くあります。
下のような接続詞(If)を使った複文にすると、行為の主体は明らかです。
If you give poor service customers will go elsewhere.
ただしこのyouは一般の総称で、具体的な人を指しているわけではないため、訳出しません。
【訳例】サービスが悪いと顧客は別の店に行ってしまう。
このように動詞の「働き」から文章全体を捉えることで、辞書の訳語に引きずられることなく、英語、日本語それぞれの論理表現スタイルにあった訳文が導けるようになります。
全4章、12テーマで74の表現をマスター。プロにも愛されるテキスト
さらに、各テキストのテーマに沿って整理した「表現ノート」には、全部で74の表現を掲載。「翻訳のヒント」を参考にしながら表現のバリエーションを増やしましょう。この「表現ノート」は、実際の翻訳の仕事で辞書のように役立てることもできます。
第1章「関係」
「~の結果、~が生ずる」「~を使うことで、~が可能になる」「~するためには~が必要となる」といった複数の事物同士の「関係」を示す表現を学びます。論文や新聞雑誌の記事など、あらゆるところで目にするものです。
BETA 1「因果・相関」
→cause、result in、lead to、bring about、trigger……
BETA 2「可能・不可能」
→enable、permit、allow、facilitate、help、contribute to……
BETA 3「必要・不要」
→require、demand、need、involve、assume…
第2章「特徴」
モノや出来事が具体的にどのような「特徴」を持つかを説明する表現を学習します。「~では~について述べられている」「~は~の役割を果たす」「~には~が組み込まれている」など、事物の情報を伝える表現の幅を広げていきます。
BETA 4「性質・内容」
→constitute、present、consist of、illustrate、represent……
BETA 5「機能・役割」
→enable、provide、offer、serve、be capable of……
BETA 6「構成・構造」
→include、comprise、contain、carry、use、employ……
第3章「現象」
「何が起きているのか」「数量の変化」「モノの移動・流れ」など動的・静的な動きを伝える表現を学びます。科学論文や新聞・雑誌では頻出しますが、日本の学校英語ではほとんど習わないのが現状です。
BETA7「状態・状況」
→see、show、enjoy、suffer、continue、record……
BETA 8「変化・変動」
→become、increase、rise、appear、improve、deteriorate……
BETA 9「動作・進行」
→travel、move、flow、rotate、turn、progress……
第4章「作業」
人間がモノなどを作ったり、手に入れたり、活かしたり、管理したりする行為を示す表現を学習します。すべて人間が主体の行為ですが、英語では無生物主語や受動態が多用され、主語が必ずしも人間ではないのが特徴です。
BETA10「作成・入手」
→produce、build、prepare、form、create、win……
BETA 11「利用・実行」
→apply、spend、use、perform、exercise……
BETA 12「維持・変更」
→hold、make sure、change、maintain、avoid……
学習の進め方①:テキストを読む
BETA1で学習するのは、複数の事物同士の「関係」を示す表現のうちの「因果・相関」を示す表現。「因果(原因と結果)」動詞を使った英文を、直訳調でない自然な日本語で訳すテクニックを学びます。テキストの「基本例題」「練習問題」を通じて理解を深めましょう。
学習の進め方②:添削課題1を翻訳し、提出
添削課題は和訳でセンテンス問題3題、パラグラフ問題1題。テキストで学んだ発想を活かして英訳2題にも挑戦します。
学習の進め方③:添削結果と「解説・訳例」で復習
因果関係を正しくとらえ、わかりやすく、正しく、簡潔に訳せていたか、添削を元に確認します。
学習の進め方④:課題が終わったら次の課題へ
トレーナーからのフィードバックを活かして全12課題の提出を目指しましょう。